↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第7章「エルフの森」
PR
180/184

第180話「新たなる仲間」

「……私も、一緒に旅をさせてほしい」

リュシアの言葉に、レオたちは驚いた表情を浮かべた。

エルフェリア大森林の集落。

朝の柔らかな日差しが差し込む広場で、銀髪のエルフの少女は真剣な眼差しを向けていた。

「……本気なのか?」

カイが尋ねた。

リュシアは頷いた。

「うん。昨日、一晩考えたの」

「森を離れるってことだぞ?」

「分かってる」

彼女は迷わず答えた。

「でも、この森にいるだけじゃ、分からないことがたくさんあるって気づいたから」

ミナが微笑んだ。

「……リュシアさん」

ガイアは腕を組んだ。

「……外の世界は危険だ。今回のようなことが、何度も起こるかもしれない」

「それでも行きたい」

リュシアは答えた。

「黒い侵食の原因を知りたい。それに、みんなと一緒に戦えるくらい強くなりたい」

レオは静かに彼女を見つめた。

「……エルディンさんには?」

「もう話したよ」

「……何て?」

「止めないって。ただし、みんなの気持ちも聞きなさいって」

レオは少し考えた。

そして、仲間たちへ顔を向けた。

「……みんなはどう思う?」

カイが肩をすくめた。

「俺は賛成だぜ。弓の腕も確かだしな」

ミナも頷いた。

「私もです。リュシアさんが一緒なら心強いです」

ガイアは静かに口を開いた。

「……俺も異論はない。ただし、一つだけ確認したい」

リュシアが顔を上げた。

「……何?」

「お前は、俺たちについて来るだけのつもりか?」

彼女は少し驚いた。

「……え?」

「旅では、自分で判断しなければならない時がある。誰かに命令されたから戦うのではなく、自分の意思で選ばなければならない」

リュシアはガイアを見つめた。

そして、ゆっくりと頷いた。

「……分かってる」

「ならば、いい」

ガイアは小さく笑った。

レオは白き守護者へ顔を向けた。

彼女も静かに頷いている。

「……決まりだな」

レオはリュシアへ手を差し出した。

「これからよろしく、リュシア」

彼女は嬉しそうに微笑んだ。

「……うん! よろしくね、レオ!」

二人は固く握手を交わした。

リュシア・エルフェリス。

エルフ族の弓使いが、正式にレオたちの仲間となった。

その日の午後、レオたちはエルディンの屋敷を訪れていた。

「……話はまとまったようだな」

エルディンが穏やかに尋ねた。

レオは頷いた。

「はい。リュシアには、俺たちと一緒に来てもらいます」

「そうか」

エルディンは孫娘を見た。

「……リュシア」

「うん」

「森の外には、お前の知らぬものが数多くある」

リュシアは頷いた。

「……分かってる」

「美しいものもあれば、恐ろしいものもあるだろう」

エルディンは続けた。

「だが、何を見ても、自分の心を見失うな」

リュシアは真剣な表情で答えた。

「……うん」

エルディンは机の引き出しから、小さな木箱を取り出した。

「……これを持っていきなさい」

リュシアが首を傾げた。

「……何?」

木箱の中には、緑色の宝石が埋め込まれた首飾りが入っていた。

「……これって」

「お前の母が使っていたものだ」

リュシアは息を呑んだ。

「……お母さんの?」

「ああ。精霊の力を感じ取るための護符だ」

エルディンは首飾りを手に取った。

「特別な力を与えてくれるわけではない。だが、森の精霊たちとの繋がりを思い出させてくれるだろう」

リュシアは両手で首飾りを受け取った。

「……ありがとう」

その瞳には、涙が浮かんでいた。

「……大切にする」

エルディンは穏やかに微笑んだ。

「……ああ」

しばらくして、フェルンが屋敷へ入ってきた。

「長老。第三監視地点の報告が届きました」

エルディンが顔を上げる。

「……状況は?」

「結界の再構築が完了しました。黒い侵食の拡大も、現在は抑えられています」

レオが尋ねた。

「……魔物たちは?」

フェルンは答えた。

「東側の巡回路付近で確認されています。集落へ戻る動きはありません」

リュシアは胸を撫で下ろした。

「……よかった」

しかし、フェルンは続けた。

「ただし、侵食そのものが消えたわけではありません」

ガイアが頷いた。

「……四つ目の石板も、まだ不安定な状態だ」

エルディンは静かに目を閉じた。

「……分かっておる」

レオは尋ねた。

「……今後、どうするんですか?」

「評議会で、封鎖領域の監視を強化することが決まった」

エルディンは答えた。

「四つ目の石板には不用意に近づかず、周囲の魔力の流れを観測する」

フェルンが続けた。

「森の各所にある結界石も調整します。侵食が集落へ広がらないよう、魔力供給を管理する予定です」

ミナが頷いた。

「……少しずつでも、対策が進んでいるんですね」

「ああ」

エルディンは答えた。

「だが、根本的な解決には至っておらぬ」

レオは『魂導秘録』を取り出した。

「……俺たちも、旅の途中で調べてみます」

エルディンは顔を上げた。

「……何を?」

「境界のことです。ヴァルドが残した記録や、三つの意思について」

レオは続けた。

「四つ目の石板を直す方法が分かれば、必ず知らせます」

エルディンは静かに頷いた。

「……頼んだぞ」

翌朝、集落の入口には多くのエルフたちが集まっていた。

レオたちの出発を見送るためだった。

「……こんなに集まってくれるなんて」

ミナが驚いたように呟いた。

カイが笑った。

「俺たち、結構人気者になったんじゃねえか?」

「カイさん、そういうことじゃないと思います」

ミナが苦笑する。

ガイアは静かに周囲を見渡した。

「……無事に旅立てることを喜ぼう」

リュシアは集落の入口で立ち止まっていた。

幼い頃から見慣れた家々。

精霊たちが集まっていた大樹。

そして、森を守り続けてきた人々。

そのすべてが、彼女にとって大切なものだった。

「……リュシア」

背後から声が聞こえた。

振り向くと、フェルンが立っていた。

「……フェルン」

「忘れ物はないか?」

「うん。大丈夫」

「弓の手入れは?」

「昨日済ませたよ」

「矢の予備は?」

「ちゃんと持ってる」

フェルンは頷いた。

「……そうか」

リュシアは小さく笑った。

「……心配しすぎだよ」

「当然だ」

フェルンは真剣な表情で答えた。

「お前は、まだ森の外での戦いを知らない」

「……うん」

「だからこそ、無茶はするな」

リュシアは頷いた。

「……約束する」

フェルンは少しだけ表情を緩めた。

「……強くなって帰ってこい」

「……うん!」

その時、エルディンがゆっくりと近づいてきた。

「……準備はできたか?」

リュシアは祖父を見つめた。

「……おじいちゃん」

エルディンは頷いた。

「……行っておいで」

その言葉を聞いた瞬間、リュシアの瞳から涙がこぼれた。

「……絶対に帰ってくるから」

「ああ」

「もっと強くなって、森を守れるようになって」

エルディンは穏やかに微笑んだ。

「……楽しみにしておる」

リュシアは祖父へ抱きついた。

エルディンは静かに彼女の背中へ手を回した。

「……お前の帰る場所は、いつでもここにある」

しばらくして、リュシアは祖父から離れた。

そして、涙を拭いながら笑った。

「……行ってきます!」

レオたちは森の出口へ向かって歩き始めた。

リュシアは何度も振り返り、集落の人々へ手を振った。

やがて、木々の向こうに集落の姿が見えなくなった頃。

カイが口を開いた。

「……さて、次はどこへ行くんだ?」

レオは『魂導秘録』を開いた。

「……まずは、旅の途中で得た情報を整理したい」

ガイアが頷いた。

「……ヴァルドの術式についても、まだ分からないことが多い」

ミナが尋ねた。

「……どこか落ち着いて調べられる場所が必要ですね」

「そうだな」

レオは答えた。

「それに、俺たち自身も、もっと強くならないと」

カイが笑った。

「……修行ってことか?」

「……ああ」

レオは頷いた。

「今回の森での戦いで、分かったことがある」

ガイアが尋ねた。

「……何だ?」

「俺たちは、まだ自分たちの力を十分に使いこなせていない」

レオは続けた。

「黒い侵食を受けた魔物たちを助けることも、石板を修復することもできなかった」

ミナは静かに頷いた。

「……そうですね」

「だから、もっと強くなりたい」

レオは仲間たちを見渡した。

「誰かを倒すためだけじゃなくて、守るために」

ガイアは小さく笑った。

「……お前らしい答えだ」

白き守護者も静かに頷いた。

リュシアはレオの隣へ並んだ。

「……私も頑張る」

レオは微笑んだ。

「……一緒に強くなろう」

「……うん!」

こうして、レオたちは新たな仲間を迎えた。

レオ。

カイ。

ミナ。

ガイア。

白き守護者。

そして、リュシア。

六人となった一行は、エルフェリア大森林を後にした。

森に残された黒い侵食。

三百年前に交わされた約束。

そして、いまだ明らかになっていない境界の秘密。

それらを解き明かすためには、さらに多くの知識と力が必要だった。

レオは前方へ続く道を見つめた。

「……行こう、みんな」

仲間たちは頷いた。

新たな出会いと試練が、彼らを待っている。

そして、レオたちの旅は、次なる段階へ進もうとしていた。

――第180話・完――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。