第14話「異常個体」
「ガイア!」
吹き飛ばされたガイアが、木に身体を打ちつける。
「大丈夫か!?」
『問題ない……まだ戦える』
巨大な魔物がゆっくりとこちらへ向かってくる。
レオは息を呑んだ。
「さっきの魔狼とは……全然違う」
魔物が地面を蹴った。
「来る!」
ガイアが前へ出る。
魔物の爪を受け止めるが――
「ぐっ……!」
力で押し切られ、ガイアが後ろへ滑る。
「ガイア!」
レオは右手を掲げた。
「俺の力を使って!」
黒い魔力がガイアへ流れ込む。
ガイアの身体が黒く輝いた。
『行くぞ!』
ガイアが魔物の懐へ入り込む。
拳を叩き込む。
ドンッ!
しかし、魔物はわずかに身体を揺らしただけだった。
「効いてない……?」
魔物が腕を振る。
ガイアが避ける。
その瞬間、レオの足元へ魔物の爪が迫った。
「うわっ!」
間一髪で横へ転がる。
「危なかった……」
魔物は再びレオへ狙いを定める。
「俺を狙ってる?」
『レオ!』
ガイアが飛び込む。
魔物の攻撃を受け止めるが、今度はガイアの身体が地面へ押しつけられた。
『……このままでは、まずい』
「ガイア!」
レオは必死に考える。
自分の力。
死者との契約。
そして、さっき初めて使った黒い鎖。
「……もう一度!」
レオが右手を伸ばす。
黒い魔力が地面を走る。
魔物の足に絡みついた。
「動きを止める!」
魔物が暴れる。
鎖が徐々に引きちぎられていく。
「くっ……!」
力が足りない。
それでもレオは手を離さない。
「ガイア!」
『任せろ!』
ガイアが立ち上がる。
魔物の動きが止まった一瞬――
ガイアが全力で踏み込んだ。
「うおおおっ!」
拳が魔物の胸へ叩き込まれる。
巨大な身体が吹き飛び、地面を何度も転がった。
「……倒した?」
レオが恐る恐る近づく。
魔物は動かない。
『終わったようだ』
「……よかった」
レオはその場に座り込んだ。
初めて自分の力を使って、最後まで戦った。
怖かった。
何度も逃げたくなった。
それでも――
「俺、少しは戦えるようになったかな」
『ああ』
ガイアが答える。
『だが、まだ始まったばかりだ』
「うん」
レオは倒れた魔物を見る。
「それに……こいつは普通じゃなかった」
魔物の身体には、黒い模様が残っている。
『何者かによって、魔力を与えられた可能性がある』
「誰かが魔物を強くした?」
『その可能性はある』
レオは表情を曇らせる。
今回の依頼は、ただの魔物討伐ではなかった。
森で起きている異変。
そして、その背後にいるかもしれない何者か。
「……調べてみよう」
レオは立ち上がった。
――第14話・完――




