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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第6章「過去のネクロマンサー」
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第122話「禁じられた実験」

夜の魂導院。


誰もいないはずの地下研究室に、二つの足音が響いていた。


黒い石に最初に触れた男。


そして、その研究に賛同した二人目。


二人の前には、小さな黒い欠片が置かれている。


「本当に続けるのか?」


「ああ」


「アシュレイは研究中止を求めてる」


「だから誰にも知られない場所でやる」


二人目の男が顔をしかめる。


「俺は研究には賛成した。だが、門を開くことまで賛成した覚えはないぞ」


「門なんて開けない」


最初の男は黒い欠片を見つめた。


「声の正体を確かめるだけだ」


「……本当にそれだけか?」


沈黙。


やがて男が答える。


「死者がどこへ行くのか知りたい」


「俺たちは死者の声を聞ける。力を借りることもできる」


「なのに――死の先を何も知らない」


黒い欠片へ手をかざす。


「もし死界そのものを理解できたら、救える魂はもっと増える」


二人目は何も言えなかった。


目的そのものは間違っていない。


だからこそ、止めきれなかった。


「始めるぞ」


二人が死者の力を流し込む。


黒い欠片が脈打つ。


ドクン。


床に描かれた術式へ黒い線が広がった。


「反応した……」


「出力を上げるなよ」


「ああ」


ドクン。


再び脈打つ。


その瞬間。


『……北』


二人が固まった。


「聞こえたか?」


「……ああ」


『……北へ』


最初の男が身を乗り出す。


「どこに何がある?」


黒い欠片の表面に、小さな目が開いた。


『……門』


「門……?」


二人目の表情が変わる。


「実験を止めろ」


「待て。もう少しだ」


「違う。こいつは俺たちの質問に答えてるんじゃない」


男が一歩後退する。


「俺たちをどこかへ誘導してる」


その瞬間。


黒い線が床を走った。


「何だ!?」


壁に亀裂が入る。


ほんの数センチ。


だが、その向こうから――。


無数の声が聞こえた。


『寒い……』


『帰りたい……』


『誰か……』


死者たちの声。


最初の男の目が見開かれる。


「聞こえる……!」


「閉じろ!」


「待ってくれ!」


「もう十分だ!」


二人目が術式を解除しようとする。


だが。


別の声が混じった。


『……まだだ』


黒い目が大きく開く。


『もっと近づけ』


最初の男の腕に黒い痕が広がる。


「ぐっ……!」


「おい!」


二人目が男の腕を掴む。


その瞬間――。


彼の腕にも黒い線が走った。


「――っ!」


二人は慌てて術式から離れる。


亀裂が閉じた。


静寂。


「……今のは」


二人目は自分の腕を見る。


黒い痕は消えている。


しかし最初の男には残っていた。


「誰にも言うな」


「何?」


「まだ何も分かってない」


「だから言うんだ!」


二人目が怒鳴る。


「これは俺たちだけで扱えるものじゃない!」


最初の男が睨み返す。


「なら研究を全部捨てるのか?」


「そうじゃない!」


「俺たちは近づいてるんだ!」


男は震える手を握る。


「死界の真実に」


二人の間に、初めて明確な亀裂が生まれた。


現在――。


記憶を見ていたミナが呟く。


「二人目も、最初から全部賛成してたわけじゃなかったんだ……」


ガイアが腕を組む。


「だが止めることもできなかった」


レオは黒い石を見つめ続ける。


「一番怖いのはそこじゃない」


「え?」


「黒い目は最初から門の場所を知ってた」


レオの表情が険しくなる。


「こいつらが門を見つけたんじゃない」


「向こう側の何かが――」


「門まで誘導したんだ」


死者の男が静かに頷いた。


『その通りだ』


そして続ける。


『だが当時の我々は、まだ気づいていなかった』


『あの声が――』


『死者の声ではないことに』


レオたちの前で、次の記憶が開き始めた。


そこには――。


黒い石を調べるアシュレイの姿があった。


――第122話・完――

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