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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第6章「過去のネクロマンサー」
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第121話「黒い石の研究」

記憶の景色が変わる。


死界の門が開くより、さらに前。


まだ魂導院と聖王教会が協力していた頃だった。


石造りの研究室。


中央の台座には――黒い石。


ヴァルド、アシュレイ。


そして十三人のネクロマンサーたち。


教会の研究者と境界監視者も集まっていた。


「これが北の裂け目から見つかった石か」


ヴァルドが覗き込む。


「死者の気配がする」


アシュレイは首を振る。


「似ているだけだ」


「死者とは違う」


境界監視者の一人が頷く。


「同意する」


「これは境界の内側にも外側にも属していない」


教会の研究者が記録を取る。


「ならば調査する価値がある」


「待て」


アシュレイが止める。


「調べること自体には反対しない。ただし直接触れるな」


「理由は?」


「こいつは――」


アシュレイが黒い石を睨む。


「俺たちを見ている気がする」


現在。


カイが眉をひそめた。


「最初から気づいてたのか」


「完全には分かってなかったんだろう」


レオが答える。


「危険だと感じていただけだ」


記憶が進む。


研究は慎重に始まった。


黒い石へ触れず、周囲の魔力や死者の反応だけを調べる。


だが数日後。


異変が起きた。


「また増えてる」


石の近くに置かれた器。


その中に小さな黒い欠片が生まれていた。


「本体から削れたのか?」


「違う」


境界監視者が答える。


「昨日まで傷はなかった」


教会の研究者が記録する。


「黒い石が……自ら欠片を作った?」


その言葉に、一人のネクロマンサーが興味を示した。


後に最初に石へ触れる男。


「この欠片なら危険性は低いかもしれない」


アシュレイが睨む。


「触るな」


「分かってる」


男は笑った。


だが、その視線は黒い欠片から離れなかった。


さらに数日。


奇妙な現象が続く。


黒い石の周囲では、死者の声が聞こえやすくなる。


遠くで亡くなった魂まで引き寄せられてくる。


そして――。


「聞こえた」


男が呟いた。


「何が?」


「声だ」


ヴァルドが振り返る。


「死者か?」


「……分からない」


男は黒い石を見る。


「でも俺の名前を呼んだ」


アシュレイの表情が変わった。


「研究を中止する」


「待てよ」


「名前を知らないはずの何かがお前を呼んだんだぞ」


教会側もざわめく。


しかし一部の研究者は反対した。


「だからこそ調査すべきでは?」


「危険だから止めるんだ」


意見が割れ始める。


レオは黙ってその光景を見ていた。


「ここからか……」


ガイアが頷く。


「黒い石そのものより厄介なのは、人によって見え方が違ったことだな」


危険な物。


未知を知る手掛かり。


死界研究の突破口。


人によって黒い石の意味が変わっていく。


そして夜。


誰もいない研究室。


最初の男が一人で入ってくる。


その後ろには――。


もう一人。


研究に賛同した二人目がいた。


「本当にやるのか?」


「ああ」


「アシュレイに知られたら止められるぞ」


「だから今やる」


最初の男が黒い欠片へ手を伸ばす。


二人目は止めなかった。


指先が触れた瞬間。


ドクン。


部屋が暗くなる。


『……ようやく』


男の身体が固まった。


「……誰だ?」


黒い石の表面に――。


目が開く。


『こちらを見たな』


二人目の男が後退する。


「離れろ!」


しかし最初の男は動かない。


『ならば――』


『こちらもお前を見る』


男の腕に黒い痕が走った。


そして同時に。


研究室の壁へ、三本の黒い鎖のような痕が浮かび上がる。


現在のレオが目を見開く。


「三本……」


死者の声が聞こえる。


『あの日からだ』


『黒い石の研究は――』


『我々が制御できるものではなくなった』


記憶の中。


黒い目がゆっくりと閉じる。


だが最後に。


もう一つの声が響いた。


『次は――』


『門を探せ』


――第121話・完――

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