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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第6章「過去のネクロマンサー」
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第120話「教会の拘束命令」

「逃げろ」


三人目のネクロマンサーの言葉に、ヴァルドの目が鋭くなる。


「……どういうことだ」


「教会は魂導院を封鎖する」


男は唇を噛んだ。


「ここにいるネクロマンサー全員を拘束するつもりだ」


アシュレイが一歩前へ出る。


「お前が教えたからか?」


「……そうだ」


空気が重くなる。


「俺は黒い石の実験だけを伝えた」


「仲間を売るつもりなんてなかった」


「だが教会は、ネクロマンサーそのものが危険だと判断した」


ヴァルドが男の胸ぐらを掴む。


「お前……!」


「ヴァルド!」


アシュレイが止める。


男は抵抗しなかった。


「殴りたいなら殴れ」


「……」


「俺が間違えた」


「被害を止めたかっただけなのに……結果はこれだ」


その時。


「全員、その場から動くな!」


教会の兵士たちが魂導院へ雪崩れ込む。


武器が一斉に向けられた。


「黒い石を引き渡せ」


ヴァルドは石を握ったまま動かない。


「これは渡せない」


「命令に従え」


「さっき生者の魂を使おうとした連中に渡せると思うか?」


教会側がざわつく。


指揮官が険しい顔になる。


「門を閉じるための措置だ」


アシュレイが睨み返す。


「犠牲にされる側にも同じことを言えるのか?」


「……」


「俺たちは死者を道具にしない。生者も同じだ」


背後では、半分閉じた死界の門が震え続けている。


ゴゴゴゴ……。


守護者が門の前から離れない。


今ここで戦えば、封印が崩れる。


三人目の男が教会側へ歩き出した。


「待て」


ヴァルドが呼び止める。


「何をする」


「俺が説明する」


「今さら聞くと思うか?」


「それでもやる」


男は教会の兵士たちの前に立った。


「門を開いたのは十三人全員じゃない」


「黒い石を使ったのは一部だけだ」


「魂導院全体を罪に問うのは間違っている!」


指揮官が答える。


「その証明ができるのか」


「俺が証人だ」


「お前もネクロマンサーだろう」


男は言葉を失った。


指揮官が手を上げる。


「拘束しろ」


兵士たちが動き出す。


カイが記憶を見ながら顔をしかめた。


「話し合う気なしかよ」


ガイアが静かに答える。


「恐怖が勝っている」


ミナも門を見る。


「目の前でこんなものを見たら……教会側が怖がるのも分かる。でも……」


レオは何も言わなかった。


どちらか一方だけが原因ではない。


黒い石に手を出した者。


それを止められなかった者。


情報を受け取って魂導院全体を危険視した教会。


そして、その全てを利用する境界の向こうの存在。


少しずつ歯車が狂っていった。


記憶の中――。


「待て!」


ヴァルドが叫ぶ。


教会の兵士たちの足が止まる。


ヴァルドは黒い石を地面へ置いた。


「俺は残る」


「ヴァルド?」


アシュレイが振り返る。


「門を閉じる奴が必要だ」


ヴァルドは教会の指揮官を見る。


「俺を拘束したいなら好きにしろ」


「だが先に門を閉じさせろ」


指揮官は黙る。


「ここで俺たちと戦えば、門は完全に開く」


「そうなれば教会も魂導院も関係ない」


長い沈黙。


やがて指揮官が剣を下げた。


「……封印を優先する」


兵士たちも武器を下ろしていく。


「ただし」


指揮官はヴァルドを見る。


「門が閉じた後、全員を取り調べる」


「構わない」


「ヴァルド!」


アシュレイが声を上げる。


「今は門だ」


ヴァルドは振り返らない。


「生き残らなきゃ、その先もない」


守護者の白い光が再び強くなる。


残されたネクロマンサーたちが門の前へ集まる。


そして――。


三人目の男もヴァルドの隣へ立った。


「俺もやる」


ヴァルドが横目で見る。


「……逃げないのか」


「もう逃げない」


男は死者の鎖を出現させる。


「俺が教会を呼んだ」


「なら最後まで責任を取る」


ヴァルドはしばらく黙っていた。


「……なら手伝え」


「ああ」


二人の鎖が重なる。


その瞬間。


黒い石に――。


小さな亀裂が走った。


ピシッ。


誰も気づいていない。


その亀裂の奥で。


黒い目が開いた。


『……もっと争え』


レオだけが、その声を聞いていた。


「……こいつ」


黒い目がこちらを向く。


『……生者と死者』


『……教会と魂導院』


『……分かれればいい』


レオの表情が変わる。


「最初から……」


この存在は門を開くだけではない。


人間同士の対立まで利用していた。


そして三百年前の悲劇は――。


まだ終わっていなかった。


――第120話・完――

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