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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第6章「過去のネクロマンサー」
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第117話「最初の犠牲」

再び、三百年前の記憶が広がる。


死界の門から黒い霧が溢れ、魂導院を覆っていた。


「門を閉じるぞ!」


ヴァルドの声が響く。


十三人のネクロマンサーが門の前へ集まる。


だが、背後には聖王教会。


「全員、武器を捨てろ!」


「今それどころじゃない!」


アシュレイが叫ぶ。


「門を見ろ!」


黒い霧から腕が伸びる。


教会の兵士一人を掴んだ。


「うわぁぁっ!」


「離せ!」


ネクロマンサーの一人が鎖を放つ。


兵士を掴んでいた腕を拘束し、引き離した。


助けられた兵士が呆然とする。


「なぜ……俺を」


「敵だろうが何だろうが、生きてる奴を見捨てるか!」


その言葉に、教会側の動きが止まる。


しかし――。


『……もっと……』


門の奥から声が響いた。


黒い霧が一気に膨れ上がる。


「来るぞ!」


無数の黒い腕が飛び出した。


ヴァルドとアシュレイが死者の力で押さえる。


他のネクロマンサーたちも続いた。


「門を閉じる方法は!?」


「境界監視者が準備している!」


その時。


白い光が走った。


過去の守護者が現れる。


さらに境界監視者たちが門を囲んだ。


「境界を固定する!」


白い光が門を包む。


門の開きが僅かに止まった。


ヴァルドが叫ぶ。


「今だ!」


十三人が一斉に力を流し込む。


死者たちの魂が集まり始める。


少しずつ。


門が閉じていく。


「いける……!」


だが――。


黒い石に触れ、門を開いた男の腕が突然黒く染まった。


「ぐっ……!」


「どうした!」


「離れろ!」


男の身体から黒い霧が噴き出す。


『……お前は……こちら側だ』


「違う!」


男は腕を押さえる。


「俺は……!」


黒い腕が胸を貫いた。


「――っ!」


ヴァルドの顔が変わる。


「おい!」


男が崩れ落ちる。


アシュレイが駆け寄った。


「しっかりしろ!」


「……悪かった」


「喋るな!」


男は門を見る。


「俺が……開けた」


「だから……」


血を吐きながら手を伸ばす。


「最後くらい……俺に閉じさせろ」


「待て!」


男の魂が身体から離れ始める。


レオが記憶の中で息を呑んだ。


「まさか……」


男は自分自身の魂を鎖へ変えた。


その鎖が門へ絡みつく。


「閉じろぉぉぉ!」


轟音。


門が大きく動く。


ヴァルドたちも力を重ねた。


そして――。


バァン!


門の半分が閉じた。


男の身体が倒れる。


動かない。


ヴァルドは拳を握った。


「……馬鹿野郎」


アシュレイも俯く。


十三人。


最初の一人が失われた。


しかし悲しむ時間はなかった。


門は――まだ半分開いている。


『……一人』


黒い目が門の奥に現れる。


『……こちらへ来た』


ヴァルドが顔を上げる。


「違う」


死者の鎖を構える。


「誰も渡さない」


残された十二人が並ぶ。


アシュレイも立ち上がった。


「終わらせるぞ」


だが、その背後。


聖王教会の者たちが何かを運び込んでいた。


巨大な白い器。


中には――。


生きている人間の魂から作られた光が揺れていた。


レオの表情が変わる。


「……これが」


以前聞いた話。


三百年前の封印。


死者だけではなく――。


生者の魂まで使われた。


ヴァルドが教会側を振り返る。


「お前たち……何をするつもりだ?」


教会の男が答えた。


「門を閉じる」


アシュレイが目を見開く。


「それは生者の魂だぞ!」


「他に方法がない」


空気が凍りつく。


そして過去の守護者も、白い器を見つめて動きを止めた。


――第117話・完――

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