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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第6章「過去のネクロマンサー」
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第116話「門を開いた者」

魂たちから受け取った記憶。


レオの視界に、三百年前の光景が広がる。


巨大な死界の門。


その前に十三人のネクロマンサーが集まっていた。


「……ここが、始まりか」


ヴァルドが叫ぶ。


「石から離れろ!」


しかし、黒い石に最初に触れた男は動かなかった。


腕には黒い紋章が広がっている。


「聞こえるんだ」


「何がだ!」


「死者たちの声だ!」


男は門を見上げた。


「死者は向こう側に閉じ込められている!」


アシュレイが首を振る。


「違う!」


「死者は閉じ込められているんじゃない!」


「なら、なぜ境界がある!」


男が黒い石を掲げた。


「生者と死者を分ける必要なんてない!」


ヴァルドが駆け出す。


「やめろ!」


その瞬間――。


『……開け』


黒い石から声が響く。


男の表情が止まった。


『……お前なら……できる』


「……俺なら」


アシュレイが叫ぶ。


「聞くな!」


しかし遅かった。


男が黒い石を門へ押し当てる。


ドクン!


門が脈打った。


バキッ!


中央に亀裂が走る。


「……開いた」


男が笑う。


だが次の瞬間。


亀裂から大量の黒い霧が噴き出した。


「何だ……これ」


『……ありがとう』


男の笑みが消える。


黒い目が門の奥で開いた。


『……これで……繋がる』


「違う……」


男が後退する。


「俺はこんなものを……!」


ヴァルドが男を掴んで引き離した。


「全員、門から離れろ!」


黒い腕が飛び出す。


アシュレイが死者の力を集める。


「閉じるぞ!」


十三人が一斉に動いた。


だが――。


三人目の裏切り者が、その光景を見つめていた。


教会へ情報を渡していた男。


「……止めなければ」


彼は走り出した。


向かった先は門ではない。


聖王教会だった。


記憶が飛ぶ。


教会の兵士たちが魂導院へ押し寄せてくる。


「ネクロマンサーを拘束しろ!」


ヴァルドが振り返った。


「何だと!?」


「死界の門を開いた罪だ!」


「今はそんなことをしている場合じゃない!」


「門を閉じなければ全員死ぬぞ!」


だが混乱は止まらない。


ネクロマンサー。


聖王教会。


境界監視者。


三つの勢力が入り乱れる。


その間にも、門は広がっていく。


ミナが記憶を見ながら呟いた。


「最悪のタイミング……」


カイも顔をしかめる。


「教会は全員が門を開いたと思ってるのか」


ガイアが答える。


「情報が正確に伝わらなかったんだろう」


レオは門を開いた男を見る。


男は膝をついていた。


「俺が……」


「俺が開けた……」


その前にアシュレイが立つ。


「後悔するのは後だ」


男が顔を上げる。


「アシュレイ……」


「自分で開けたなら、自分で閉じろ」


ヴァルドも隣へ立った。


「生き残ってから責任を取れ」


男は震えながら立ち上がる。


「……分かった」


三人が門へ向かう。


その時――。


黒い目がレオの方を見た。


「……え?」


これは過去の記憶。


自分の存在など見えるはずがない。


だが。


確かに黒い目は――レオを見ていた。


『……見つけた』


レオの身体が固まる。


『……未来の鍵』


「お前……!」


記憶の世界が崩れ始めた。


「レオ!」


カイの声。


視界が一気に戻る。


魂導院の地下。


レオは膝をついた。


「はぁ……はぁ……」


ミナが駆け寄る。


「大丈夫?」


「ああ……」


レオは顔を上げる。


目の前では、黒い人影が崩れ始めていた。


死者たちから記憶を奪えなくなったことで、存在を保てなくなっている。


『……鍵……』


レオは立ち上がった。


「三百年前から俺を見てたのか?」


『……いずれ……分かる』


黒い目に亀裂が入る。


バキッ!


『……お前が……なぜ選ばれたのか……』


黒い人影が消滅した。


静寂が戻る。


カイが剣を下ろす。


「終わったか」


「ここはな」


レオは死者たちを見る。


まだ知るべきことがある。


三百年前。


開いてしまった死界の門。


混乱する聖王教会。


そして門を閉じようとした十三人のネクロマンサー。


レオは拳を握った。


「続きを見せてくれ」


死者の男が頷く。


『次に見るものは――』


表情が険しくなる。


『我々が最も多くの仲間を失った日だ』


――第116話・完――

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