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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第6章「過去のネクロマンサー」
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第115話「死者を守る戦い」

黒い人影が死者たちへ腕を伸ばす。


『……記録を……消す』


「させるか!」


レオが《死者の鎖》を放った。


鎖が黒い腕へ巻きつく。


だが――。


ジュッ……。


「また吸収してる!」


ミナが叫ぶ。


黒い人影は鎖から力を奪い、身体を大きくしていく。


ガイアが警告する。


「レオ、普通に力をぶつけるな!」


「分かってる!」


レオは鎖を切り離した。


その横をカイが駆け抜ける。


「だったら俺が!」


「《裂空斬》!」


斬撃が黒い人影の肩を切り裂いた。


しかし、傷口から黒い霧が溢れ、すぐに塞がっていく。


「面倒な奴だな……!」


黒い人影の胸にある目が開いた。


『……死者は……記録を持つ』


『……記録は……残してはならない』


「どうしてそこまで三百年前のことを隠したいんだ?」


レオが問いかける。


返事はない。


黒い腕が一気に伸びる。


狙いは――。


十三人の過去を見せてくれた死者。


「危ない!」


ミナが炎を放つ。


「《フレイム・ランス》!」


炎の槍が腕の軌道を逸らす。


その間に守護者が死者たちの前へ立った。


白い光が壁となる。


ドンッ!


黒い腕が激突した。


守護者の身体が僅かに下がる。


「守護者!」


レオが駆け寄る。


守護者は首を横に振った。


まだ戦える。


ガイアが黒い人影を見つめる。


「妙だ」


「何が?」


「あいつは俺たちを倒そうとしていない」


レオも気づく。


黒い人影は何度攻撃されても、死者だけを狙っている。


「……目的は本当に記録だけか」


『……消す』


再び黒い人影が動いた。


今度は身体そのものが霧へ変わる。


「散った!?」


黒い霧が守護者の防壁を回り込む。


「まずい!」


レオは死者たちへ叫ぶ。


「俺に力を貸してくれ!」


死者たちが頷く。


『もちろんだ』


『我々の過去を……消させるな』


魂の光がレオへ集まる。


「《死者の鎖・魂連結》!」


今度の鎖は黒い霧に吸収されない。


一本。


二本。


さらに増える。


無数の鎖が霧を囲んだ。


「閉じろ!」


鎖が一気に収縮する。


黒い霧が再び人の姿へ戻された。


『……なぜ……』


「借りてるだけだからだ」


レオが鎖を握る。


「死者自身が、お前に消されたくないって言ってる!」


守護者が白い光を放つ。


黒い人影の動きが止まった。


「カイ!」


「待ってました!」


カイが踏み込む。


「《裂空斬・弐》!」


斬撃が胸の黒い目へ直撃した。


バキッ!


『……!』


目に亀裂が入る。


「ミナ!」


「任せて!」


杖の先に炎が集まる。


「《フレイム・ランス》!」


炎が亀裂へ突き刺さった。


ドォン!


黒い人影が吹き飛ぶ。


胸の目がさらに砕けた。


だが――。


『……まだ……』


人影は消えない。


壁へ黒い霧を伸ばす。


残された記録を巻き込もうとする。


「まだ記録を消すつもりか!」


レオが鎖を伸ばした。


その瞬間。


死者の男がレオの前へ出る。


『レオ』


「何だ?」


『我々を守ることだけを考えるな』


レオが目を見開く。


『記録を受け取れ』


「受け取る?」


男が胸に手を当てる。


『消される前に』


『我々の記憶を、お前へ渡す』


周囲の死者たちも光り始める。


レオの周囲を無数の光が包んだ。


「待て!」


『安心しろ』


死者の男は笑う。


『消えるわけではない』


『ただ、我々が知っている過去をお前にも見せる』


レオはゆっくりと手を伸ばした。


「……分かった」


魂の光がレオの手へ触れる。


その瞬間――。


大量の光景が流れ込んできた。


十三人のネクロマンサー。


黒い石。


聖王教会。


境界監視者。


そして――。


巨大な死界の門。


その前に立つヴァルドとアシュレイ。


さらに、黒い紋章を持つ三人。


レオの目が見開かれる。


「……これは」


その中の一人が、巨大な門へ手を伸ばしていた。


そして声が聞こえる。


『開け』


『死者と生者を隔てるものなど――』


『必要ない』


レオは拳を握った。


「……三百年前の門が開く瞬間」


黒い人影が激しく暴れ始める。


『……見るな!』


レオは顔を上げた。


「遅い」


死者の鎖が強く輝く。


「もう受け取った」


黒い人影の胸の目に、さらに亀裂が走った。


――第115話・完――

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