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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第6章「過去のネクロマンサー」
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114/181

第114話「消される記録」

黒い霧が地下室へ広がる。


『……記録を……見るな……』


「そう言われると、余計に見たくなるな」


レオが《死者の鎖》を放った。


鎖が黒い霧を貫く。


しかし――。


霧は壁へ逃げるように広がり、十三本の印を覆い始めた。


「レオ! 印が!」


ミナが叫ぶ。


黒い霧に触れた印が、一つずつ消えていく。


「記録を消してるのか!」


カイが剣を抜く。


「《裂空斬》!」


斬撃が霧を切り裂く。


その間に守護者が壁へ手を当てた。


白い光が広がり、残った印を包む。


ガイアが声を上げる。


「守護者が記録を守っている! 今のうちだ!」


レオは死者の男を見る。


「続きを見せてくれ!」


『……分かった』


死者が手を伸ばす。


景色が変わった。


三百年前。


聖王教会の一室。


ネクロマンサーの一人が、教会の者たちと向かい合っていた。


「黒い石への接触実験が行われました」


「誰が?」


「仲間です」


教会の者たちの表情が険しくなる。


「ヴァルドは知っているのか?」


「今は知っています」


「だが、止められなかった」


教会の男が立ち上がる。


「ならば魂導院を調査する」


ネクロマンサーが目を見開く。


「待ってください」


「私は仲間を捕らえてほしくて伝えたわけではない」


「被害を防ぐためです」


「判断するのは教会だ」


男は言葉を失った。


場面が変わる。


魂導院。


武装した教会の者たちが押し寄せていた。


「黒い石を引き渡せ!」


アシュレイが前へ出る。


「渡す。それでいい」


だがヴァルドは教会側を見る。


「その代わり、ここにいる全員を犯罪者として扱うな」


「既に境界を開こうとした者がいる」


「全員ではない!」


十三人の関係だけではない。


ネクロマンサーと教会の関係まで崩れ始めていた。


そして――。


黒い石に触れた男が、遠くからその様子を見ていた。


腕には黒い紋章。


「……俺のせいだ」


その背後から声が聞こえる。


『……違う』


男が振り返る。


誰もいない。


『……お前は間違っていない』


『……もっと知ればいい』


男の表情が揺れる。


『……こちらへ』


記憶が突然乱れた。


バチン!


レオたちは地下室へ戻される。


「くっ……!」


壁を守っていた白い光が崩れ始めていた。


黒い霧がさらに増えている。


ミナが叫ぶ。


「もう半分くらい消えてる!」


「させるか!」


レオが守護者の横へ立つ。


「《死者の鎖・境界連結》!」


鎖と白い光が重なる。


黒い霧が押し返された。


すると――。


壁の奥から文字が浮かび上がった。


『記録を消した者を信じるな』


続いて、もう一文。


『教会でもない』


レオの目が細くなる。


「……教会じゃない?」


さらに文字が現れる。


『魂導院でもない』


カイが眉をひそめた。


「じゃあ誰だよ」


最後の文字が浮かび上がる。


『境界の向こうから来た力が、記録を喰らっている』


その瞬間。


黒い霧が一つの塊となった。


人の形へ変わっていく。


顔はない。


ただ胸の中央に、黒い目だけが開いている。


『……知らなくていい』


レオは鎖を構えた。


「だったら力ずくでも見る」


守護者が隣に並ぶ。


カイとミナも武器を構えた。


ガイアの声が響く。


「来るぞ!」


黒い人影が腕を伸ばした。


狙っているのはレオたちではない。


三百年前の記録を持つ――死者たちだった。


――第114話・完――

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