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死界のネクロマンサー  作者: のんびり小僧
第5章「冥夜の旅団」
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第103話「閉じられなかった扉」

静寂が戻った黒い森。


先ほどまで暴れていた木々も、根も、黒い霧も止まっている。


だが――


レオたちは、誰一人として気を抜いていなかった。


目の前には、閉じた黒い扉。


その中央に一本の亀裂が残っている。


カイが剣先で扉を指した。


「……あれ、本当に閉じたのか?」


「分からない」


ミナが扉へ近づく。


「でも、さっきより黒い力は弱くなってる」


ガイアが答える。


『弱くなっただけだ』


「やっぱり?」


『完全には消えてない』


レオは扉を見つめる。


「……向こう側に何かがいる」


守護者も扉から目を離さない。


『……』


レオが振り返る。


「守護者も、そう思うのか?」


守護者は静かに頷いた。


カイがため息をつく。


「じゃあ、またあれと戦うことになるのか」


「たぶん」


「たぶんって……」


ミナが苦笑する。


「でも、私たちが見つけた情報を考えると、この扉を放置するわけにはいかないよ」


レオも頷いた。


「そうだな」


レオは扉に刻まれた紋章を見る。


三つの円。


一本の線。


その中央だけが黒く染まっている。


「この紋章……地下遺跡にもあった」


ガイアが続ける。


『境界監視者の紋章だ』


「でも、何で黒くなってるんだ?」


カイが尋ねる。


レオは答えられなかった。


その時。


守護者が突然、扉から離れた。


『……』


「どうした?」


守護者は森の奥を指差す。


「何かあるのか?」


頷く。


四人と一体は、守護者の示した方向へ進んだ。


しばらく歩くと――


地面に、小さな石板が落ちていた。


ミナが拾い上げる。


「これ……文字がある」


レオが覗き込む。


そこには古い文字が刻まれていた。


『門は一つではない』


「……門は一つじゃない?」


カイが眉をひそめる。


さらに下へ視線を移す。


『境界に生じた裂け目は、門となる』


レオの表情が変わる。


「つまり……」


ガイアが低く答えた。


『あの黒い扉だけが、境界を越える場所じゃない』


「森の中にも、別の裂け目があるってこと?」


ミナの問いに、レオは頷く。


「可能性が高い」


石板の裏側には、さらに文字があった。


『裂け目を閉じるには、境界を守る者だけでは足りない』


レオが息を止める。


その下には――


『魂を導く者の力を必要とする』


カイがレオを見る。


「それ、お前のことじゃないか?」


「たぶんな」


さらに続きがある。


『二つの力が重なった時、門は眠る』


守護者が石板へ手を伸ばした。


白い光が触れる。


すると、石板の表面に新たな文字が浮かび上がった。


『ただし――』


レオが読む。


『門を閉じるには、門の場所へ赴かなければならない』


「……どういうことだ?」


ミナが首を傾げる。


ガイアが答える。


『遠くから封印することはできないってことだ』


「つまり、あの扉の向こうへ行く必要がある?」


「違う」


レオが首を横に振った。


「門の場所へ行く必要はある。でも、門の向こうへ行くとは書いてない」


カイが頷く。


「なるほど」


その時だった。


森の奥から――


ドン。


小さな地響き。


全員が振り向く。


ドン。


今度は明らかに近い。


ミナが杖を構える。


「何かいる」


レオも鎖を展開する。


「気をつけろ」


木々の間から、黒い霧が流れてくる。


その奥に――


一人の人影。


黒い外套。


顔は見えない。


カイが剣を向ける。


「お前……」


人影は立ち止まった。


「その扉を閉じたか」


低い男の声。


レオが答える。


「お前は何者だ」


「答える必要はない」


「なら、そっちから来た理由を聞く」


男はしばらく黙っていた。


そして――


「閉じてはいけなかった」


レオの目が細くなる。


「何?」


「その扉は、境界の裂け目ではない」


「じゃあ何だ?」


男が顔を上げる。


「向こう側から来るものを、一時的に止めていただけだ」


空気が凍る。


カイが剣を握り直した。


「じゃあ、あの扉を閉めても意味がないってことか?」


男は答えない。


代わりにレオを見る。


「お前が鍵なら、いずれ向こう側へ呼ばれる」


「断る」


「そう簡単にはいかない」


男が黒い石を取り出した。


レオの胸の紋章が反応する。


「……!」


守護者が前へ出る。


男は石を握り潰した。


パキィン!


黒い霧が一気に広がる。


「待て!」


レオが鎖を放つ。


しかし――


男の姿は霧の中へ消えていた。


残された地面には、一枚の紙。


レオが拾う。


そこには――


『門を閉じるなら、北へ行け』


その下に場所を示す簡単な地図が描かれていた。


カイが覗き込む。


「北……?」


ミナが地図を見る。


「この先に、何かあるみたい」


ガイアが低く呟く。


『罠かもしれない』


レオは紙を握る。


「それでも行く」


「決めるの早いな」


カイが笑う。


「だって、あの扉を放っておけないだろ」


ミナも頷く。


「私も行く」


カイが剣を肩に担ぐ。


「俺もだ」


ガイアが笑う。


『当然だろ』


守護者もレオの隣へ立つ。


レオは三人と一体を見た。


「行こう」


北へ。


黒い扉の謎を解くために。


そして――


境界の裂け目を完全に閉じるために。


だが誰も気づいていなかった。


先ほど黒い霧の中へ消えた男が、森のさらに奥から彼らを見ていることに。


男の手には――


黒く染まった境界監視者の紋章。


そして、その中央には小さな亀裂が入っていた。


――第103話・完――

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