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GRAND   作者: Cite
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3/4

第二話あくまハンド

腕て大事だよね


暗闇だった。

何も見えない。

何も聞こえない。

ただ痛みだけが残っていた。

腕を失った痛み。

胸を踏み潰された痛み。

そして死の恐怖。

KET。

あの赤い瞳を思い出すだけで息が苦しくなる。

「おーい」

場違いな声が聞こえた。

「起きろー」

「せっかく助けたんだから」

俺はゆっくり目を開いた。

古びた天井。

ひび割れた壁。

知らない部屋。

廃ビルだった。

「おはよう」

パーカー姿の男が缶コーヒーを片手に笑っていた。

「……誰ですか」

「命の恩人」

「胡散臭い」

「初対面でひどいなぁ」

男は肩を竦めた。

「秋山蓮斗」

「三十六歳」

「自称GRAND研究者」

「自称?」

「便利な言葉なんだよ」

絶対違う。

その時だった。

左腕に違和感を覚える。

俺は視線を向けた。

そして固まった。

腕がある。

吹き飛んだはずの左腕が。

指も動く。

感覚もある。

握れる。

開ける。

「……なんで」

蓮斗が笑う。

「腕欲しかった?」

「欲しかったに決まってるだろ」

「よかった」

蓮斗は近くの机から何かを持ってくる。

黒い腕だった。

赤い回路のような線が走る異様な腕。

「これが君の腕」

「いや、腕あるけど」

俺は左腕を見せる。

蓮斗は首を振った。

「それ義手」


「僕が持ってるこれは正確には君にはめた義手の元の姿すごいでしょこれはめると普通の腕の姿になるの」


「は?」


「悪魔式義手て言うんだ。君のは僕の作った2本のうち1本をあげたんだよ優しくない?」


沈黙。


意味が分からない。


その時。

「慎治」

聞き慣れた声。

部屋の隅には千がいた。

首には包帯が巻かれている。

顔色は悪いが無事だった。

「千!大丈夫か」

「それ私の台詞だから」

少しだけ笑う。

その顔を見てようやく安心した。

「さて」

蓮斗が手を叩く。

「説明タイムだ」

嫌な予感しかしない。

「慎治」

「GRANDは知ってる?」

「ニュースで見るくらいなら」

蓮斗は頷いた。

そしてどこからかホワイトボードを持ってきた。

「まずGRANDとは何か」

ホワイトボードに文字を書く。

『精神性疾患』

「病気?」

「半分正解」

「半分?」

「病気だけど病気じゃない」

「帰るぞ」

「まだ始まったばかりよ」

千が呆れたように言う。

蓮斗は続ける。

「GRANDは精神が極限状態に陥った時に発症する」

「強いストレス」

「トラウマ」

「執着」

「絶望」

「そういう感情が引き金になる」

ホワイトボードに矢印を書く。

精神異常

GRAND発症

人外器官発現

「人外器官?」

「GRAND最大の特徴だ」

蓮斗は言う。

「発症者は人間には存在しない器官を獲得する」

「目」

「骨」

「脳」

「血液」

「心臓」

「人によって違う」

「そしてその器官が能力を生み出す」

俺はKETを思い出す。

あれも。

GRAND。

人外器官。

「だから普通の人間では対抗できない」

「超能力者みたいなものですか?」

「違う」

即答だった。

「能力じゃない」

「病気だ」

その言葉だけは重かった。

「本人が望んで手に入れた力じゃない」

「壊れた結果だ」

部屋が静かになる。

蓮斗は新しく文字を書く。

A

B

C

D

E

「アスラ特殊記念病院」

「GRAND患者を収容する日本最大の施設だ」

「発症進行度で区画が分かれている」

「Aが軽度」

「Eが最重度」

「Eになると?」

蓮斗は少しだけ黙った。

そして言った。

「人間じゃなくなる」

俺は眉をひそめる。

「人間じゃなくなる?」

「意思を失う者」

「肉の塊になる者」

「能力だけが暴走する者」

「色々いる」

「生きているのが不思議な存在もいる」

嫌な話だった。

「じゃあ全員病院にいるんですか」

「いるわけない」

蓮斗は笑った。

「逃げる奴もいる」

「捕まらない奴もいる」

「そもそも見つからない奴もいる」

「そういう連中を野良GRANDって呼ぶ」

野良GRAND。

嫌な響きだった。

「KETも野良だ」

心臓が少しだけ跳ねる。

あの名前は聞きたくなかった。

「KETは世界でも最も有名なGRANDの一人」

「理由は?」

「生きてるから」

意味が分からない。

「危険なGRANDは普通討伐される」

「でもKETは違う」

「何度も討伐部隊が出動した」

「何度も死んだと思われた」

「でも生きている」

俺は黙る。

あれを相手にしていたのか。

改めて震えが走った。

「そして」

蓮斗は俺の左腕を見る。

「悪魔式」

「それが僕の作った対GRAND技術だ」

「人外器官に対抗するための技術」

「GRANDを解析して作られた」

「君の義手もその一つ」

俺は左腕を見る。

見た目は普通。

感覚もある。

だが普通じゃない。

もう俺の体はあの以前のものではない。

そして会話が終わったあと

俺はずっと引っかかっていたことを思い出した。

「そういえば」

蓮斗は缶コーヒーを飲んでいた。

「なんだい助手候補」

「候補じゃない」

即座に否定する。

「KETのことです」

その名前を出した瞬間。

千の表情も少し硬くなる。

あの化物。

一生忘れられる気がしない。

「なんであいつがこの町にいたんですか」

部屋が静かになる。

蓮斗は少しだけ考える。

いや。

考えているふりだった。

そんな気がした。

「さぁ」

「さぁじゃないだろ」

「分からないものは分からない」

絶対嘘だ。

この男は何か知っている。

俺はそう確信していた。

「でも」

蓮斗は窓の外を見る。

夕日が差し込んでいた。

「多分」

「何か探してる」

「何を?」

「分からない」

「適当か」

「推測だよ」

「推測になってない」

千も呆れている。

蓮斗は笑った。

だが。

目だけは笑っていなかった。

「KETほどのGRANDが意味もなく動くとは思えない」

「理由がある」

「人かもしれない」

「物かもしれない」

「場所かもしれない」

そこで言葉を切る。

慎治は眉をひそめた。

「あるいは?」

蓮斗は少しだけ黙る。

本当に一瞬だけ。

そして。

「独り言」

「絶対違う」

「だろうね」

蓮斗は笑った。

しかし。

その直後。

窓の外を見ながら小さく呟く。

「まだ見つけてないんだ」

「え?」

「独り言」

聞き返しても答えない。

慎治は違和感を覚える。

KET。

この町。

蓮斗。

何かが繋がっている。

だが今の自分には分からない。

そして蓮斗は話を切り替えるように言った。

「まぁいいや」

「慎治」

「助手にならない?」

「嫌です」

即答だった。

「慎治」

蓮斗が笑う。

「じゃあ義手返して」

「最低ですね」

千が頭を抱える。

蓮斗は楽しそうに笑った。

だけど。

その目だけは笑っていなかった。

まるで俺の中に何かを見ているようだった。

俺はまだ知らない。

神隠し事件。

そしてGRANDという病がどれほど異常なものなのかを。

高評価お願いします本当に

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