第6話
皆が帰り支度をしている中、ジュナだけがレッスン室に残っていた。
......僕は無視をしても良かったはずなのに、思わず声をかけてしまった。
「ジュナさん。帰らないんですか?」
「HIKARI」
下を向いていたジュナは僕の姿を視界にとらえると笑顔を向けてきた。
「今日はありがとう」
「何がですか?」
「今日君と合わせてみて改めて実感した。......やっぱりHIKARIは凄いね」
そんなの、当たり前だ。僕はもう誰にも負けたくなくて努力してきたんだ。
そこら辺の"お遊び"と一緒にしてもらっては困る。
「歌もダンスも。オレももっと頑張らないとね」
「......だったら次は僕を驚かせてください」
僕は思わず微笑んでしまった。
すると、ジュナは一瞬言葉につまったようだった。
「......やっぱり」
「?」
「その笑い方......どこかで見た事がある気がする」
僕は思わず固まってしまうが、なんとか声を絞り出して、
「......気のせいですよ」
そう返すのが精一杯だった。
***
「あまり眠れずに早く来てしまった......」
ジュナは昨日のHIKARIが忘れられず、胸がドキドキしてよく眠れなかった。
そのため、いつもより早めに事務所へとやって来た。
「そう言えば、HIKARIもこの事務所の育成所にいたなら履歴書くらい残ってるよな......」
ジュナは好奇心に負けて資料室へと入って行った。
そこで何故だか目についた一冊のファイル。
そこには【退所済み生徒】の文字が。
それをパラパラと見ていると、一人の生徒の履歴書に目が行った。
「【天宮 光希】......この顔......」
その顔は幼く、メイクもしてなく、髪型も違う。
「......まさか、な」
一度否定はしてみたものの、これまでの違和感が全部繋がってくる。
女性にしては大きな手。
独特なステップ。
抜群の歌唱力。
アイドル育成所。
そして、あの笑い方。
「......もしかして、HIKARIはあの【光希】なのか?」
その問いかけに応える者は誰もいない。
しかし、一度抱いた疑問は胸に突き刺さる。
そこへ――
「誰かそこにいるの?」
「!社長!!」
「あら?ジュナじゃない。どうしてこんなところに......」
美咲はジュナの手に持たれたファイルに目をやると、何かを察した。
美咲は敢えて何も言わずにいると、ジュナが美咲にい問いかけた。
「社長、この【天宮 光希】は【HIKARI】ですか?」
「......何故そう思うの?それにそれを知ってどうするつもり?」
「......どうするつもりって」
ジュナは考えた。
それを知って自分がどうしたいのかを。
「......オレはHIKARIのファンです。尊敬してます」
「......それで?」
「それと同時に光希には謝らなくちゃいけないことがあります」
「......」
美咲は何も言わない。
ジュナはそれが答えだと思い、自分の気持ちを美咲に伝えた。
「オレはHIKARIのファンだけど......それ以上に光希に対して後悔があります。それに......」
「?それに?」
「......この感情は"恋"と言っていいかもしれません」
ジュナの告白に美咲は驚いてしまい、思わず隠すのを忘れて声を荒げた。
「貴方自分が何を言ってるのか分かってる?!貴方もHIKARIもアイドルよ?!それに......」
「それに?」
「......いえ、何でもないわ。とにかく、考え直しなさい」
そう言って美咲はジュナを置いて資料室を後にした。
ジュナはこれまでのやり取りでHIKARI=光希だと確信した。
「......これから絶対落として見せる待ってて、光希」




