第5話
レッスンが開始された。
HANAとカイは相も変わらずバチバチにやりあっている。
「NOIRのお二人はこのダンスについてこられるかしら?」
「甘く見ないでもらいたいな。所詮は女性アイドルの振り付けだろう?簡単だよ」
「......言ったわね?それならその実力見せてもらおうかしら」
......もうこの二人はある意味息ぴったりなのではないだろうか?
そんなグループレッスンを横目に、僕とジュナはデュエット曲の振り入れをしていた。
「はい、ここで二人、向かい合って手を取り合って!」
(また"手"?!)
僕は恐る恐るジュナの手を取る。
「......やっぱり」
「......何がですか?」
「いや、何でもない」
そう言いながらジュナは手をジッと見つめている。
僕はなんだか嫌な予感がした。
しかし、それも気のせいだと思い込んでレッスンに集中することにした。
......だが、僕は致命的なミスを犯してしまった。
昔、育成所でジュナに教わったステップを無意識に使ってしまったのである。
「......そのステップ」
「え?」
「昔後輩に教えたのに似てる......」
......やはり覚えていたか。
「......そうなんですか?」
「うん。独特な癖があるからよく覚えてる」
「......偶然じゃないですか?」
僕は、もうどう誤魔化せばいいか分からないでいると、休憩の指示が出された。
ジュナと並んで水を飲みながらHANAとカイの攻防を眺めていると、ジュナから質問が飛んできた。
「HIKARIって昔育成所にいた事ある?」
「......どうして?」
「君のダンスを見てると、昔の後輩を思い出して」
僕は思わず押し黙っていると、ジュナが思い出に浸るかのように呟いた。
「......そいつ、どうしてるかなぁ」
「......きっと、どこかで元気にしてますよ」
どうやら僕がその"後輩"である事にはまだ気づいていないようだ。
それに安堵していると、休憩は終わりを告げる。
振り付けももうこれでラストスパートだ。
「そこで、ジュナ。HIKARIを抱き寄せて!」
「え?!」
「......ジュナさん。振り付けですよ?」
「あ、あぁ。ごめん!!」
なんだか、ジュナの動きがぎこちなくなっている気がする。
......いくらレッスンでもプロなのだからしっかりしてほしいところである。
僕はジュナに近づくと、胸ぐらを掴んで顔を引き寄せる。
「ひ、HIKARI?!」
「僕達はプロですよ?しっかりしてください」
「!!」
ジュナは、ハッとすると「ごめん」と小さく呟いた。
......それからのジュナは凄かった。
この僕が引き込まれるくらいに。
「......やれば出来るじゃないですか」
「HIKARIのお陰だよ?」
「僕は発破をかけただけですよ」
ジュナにお礼を言われて、自然と嫌な気はしなかった。
......けれど。
「相変わらず、顔は真っ赤ですけどね」
「......それは言わないで」




