第42話
僕らは特に何を話すわけでもなく、ゆったりと湯船につかっていた。
その間にも、樹は僕の手を握ったり、頭を撫でたりと忙しそうだ。
一体何が楽しいのか。
僕の気分は猫可愛がりされている猫のような気分だった。
「樹。それ楽しい?」
「んー? 楽しいよ? 光希がオレに全部許してくれてるって感じて」
「......そう」
僕はそれが気持ちが良くて、だんだんと眠気が襲ってくる。
......ダメだ。寝る。
「光希さーん! 寝ないでくださーい!! ってガチ寝?! 光希!! 起きて!!」
「んー......ムリぃ......眠い」
「あぁ! もう!! 怒らないでくださいね!!」
......そこからの記憶はない。
目が覚めたらベッドの上に寝ていた。
――しかも全裸で。下着も履いていない。
「ギャーー!!」
「あ、光希起きた? おはよう!」
樹は何でもないようにキッチンで朝食の支度をしている。
......まさか、そんなことがあるのか?
「い、一夜の過ち......」
「ちょいちょい! 違うから!! 光希湯船で寝ちゃってそれで全裸なの!! 身体に違和感とかないでしょう?!」
......たしかに、違和感はない。
まったく、紛らわしい。
無駄な心配しちゃったじゃないか。
......それにしてもいい匂いだな。
僕は服を着ると樹のいるキッチンへと向かった。
「お味噌汁?」
「そ。味噌あったし、冷蔵庫にあった野菜でちょちょいとね」
「......樹料理できたんだ」
意外なことを知ったぞ。
これなら毎回僕が作る必要ないな。
......にしても、僕が作るよりいい匂いがする。
ちょっと悔しい。
「あのさ、光希。大事な話があるんだけど、今日オフだよね?」
「......オフだけど」
まさか別れ話......?
『スクープ! HIKARIとジュナ、スピード破局?!』
......昨日の今日で......
嫌な想像が頭に浮かぶ。
僕はさぁっと顔を青ざめさせる。
すると、樹は僕の変化に気がついたのか、慌てて弁解してきた。
「もしかして、別れ話とか思ってる?! 違うからね?! そもそもどうしたらそんな発想になるの!!」
「......だって、お風呂で寝ちゃったし......」
「そんなことで別れとかないから!! なに?! そんなにオレ心狭くないよ?!」
よかった......。
スクープは免れた。
ということは、一体何の話だろう?
「さ、ご飯できた。食べよ」
僕はドキドキしながら樹の手作りご飯を食べる。
温かくて美味しい。
「それで、話、なんだけどさ」
「......ん」
「......一緒に暮らしませんか?」
「......え?」
思ってもみなかった話に僕は箸を止める。
......一緒に暮らす?
と、言うことは......
「同棲?」
「うん。どう、かな? って光希?!」
僕は名前を呼ばれるまで涙を流していることに気がつかなかった。
......こんな幸せなことってあっていいのかな?
僕は涙を拭うとめいっぱいの笑みを浮かべた。
――そして。
「よろしくお願いします!!」
僕は思わず樹に抱き着く。
そんな僕を樹は慌てながらも受け止めるのであった。




