第37話
「恋人じゃないって言ったのにぃ、ホントのことが知られたらどうなるかしらね?【天宮 光希】」
花恋は壁に貼り付けられた一枚の写真を手に取った。
――そこに映っていたのは光希と樹がMV撮影の際、キスをしていたところ。
「ただの友達がキスなんかするわけないのにねぇ......。待っててね、私の王子様。絶対に花恋が助けてあげるからねぇ♡」
そう言うと、花恋は一本の電話をかけた。
***
会見配信が終った後、僕達はめろでぃあとNOIRのメンバーから祝福の言葉をかけられた。
「いやぁ、良かったな! 二人とも!!」
「やっぱりファンは裏切らないってことよね!!」
配信が終ったのにもかかわらずコメントが止むことはなかった。
デュエットデビューの祝福のコメントがとめどなく流れている。
「貴方達、まだいたの? 早く帰りなさい?」
「だって社長! おめでたいじゃないですか!! そうだ!! ピザでも取りましょうよ!!」
「バッカ! ここは寿司だろう!!」
......皆はしゃぎまくっている。
こんなにお祭り騒ぎになるなんて。
「あ!! 見て見て!! SNSのトレンド入りしたわ!!」
「......ちょっと待って!! コメント欄がおかしい!!」
「......"LOVERSの真相"?URLが載ってる」
URLをクリックしてサイトへ飛ぶと、そこは情報スクープサイトだった。
――そこに載っていたのは。
「"LOVERSの二人は本物の恋人?! キスシーンのスクープ!!"?!」
「これいつのよ!!」
「MV撮影の時のだ......」
「......まずい。コメント欄が荒れてきてる」
『え?!キスしてんじゃん』
『本当に恋人だったの?!』
『さっきの会見嘘だったの?! ショック―......』
『でも今多様性よ? それがアイドルだったってだけだよ!!』
『噓ついた時点で終わりでしょ』
『でも......』
僕はそれからコメントを見るのが怖くなった。
すると、樹のスマホがメッセージの受信を告げた。
それを見た樹の顔が険しくなった。
「......樹? どうしたの?」
「......いや。光希には関係ない」
「またそうやって誤魔化すの? オレ達恋人なんだろ?!」
「それが!! 今叩かれてるんじゃないか!!」
樹が僕に大声で反論してきた。
......それが怖くて僕は黙り込んだ。
「ちょっと。王子に当たるのってどうなの?! 王子はアンタを心配して......」
「これはオレ達の問題だ。」
「――いいえ。もう事務所の問題よ」
「......社長」
美咲ちゃんは僕の顔を覗き込み、「大丈夫」と呟いた。
「ジュナ。貴方、私との約束忘れたわけじゃないでしょうね?」
「......それは」
「今届いたメッセージを見せなさい。これは命令よ」
美咲ちゃんがそう言うと、樹は渋々スマホを差し出してきた。
そこには「分かってますよね?ジュナさん♡」とだけ書かれていた。




