第36話
「え......?」
僕の思考は完全に停止した。
ユニット?樹と?
「は、はあああ?!」
「光希、会見中よ。落ち着きなさい」
「これが落ち着いていられると思う?!」
「あら、言ったじゃない。"イイ事思い付いた"って」
美咲ちゃんはそう言い切ると、配信用カメラを真っ直ぐ見つめる。
「これまで、彼はめろでぃあで【HIKARI】という女性を演じてきました。けれど、もうそ仮面を脱いでもいいと私は思うのです」
「......美咲ちゃん?」
「彼は性別を偽ってでも、アイドルになるという夢を叶えました。それは許されないことかと思いますが、私はこんなに強い子なんだと、誇っています。」
「......」
「だから、彼から【HIKARI】を奪うつもりはありません。――その変わり、【天宮 光希】としても表舞台に立ってほしいのです。」
美咲ちゃんの言葉に僕は涙が出そうになった。
こんなに僕のことを考えてくれていたなんて......
「ジュナ。......いえ、【樹】。貴方もこちらへ」
「......はい」
美咲ちゃんは樹を呼び寄せると、僕の横に立たせた。
「彼ら二人の新ユニットについては後日正式に発表します。......ですがユニット名だけ、発表させていただきます。――二人のユニット名は【LOVERS】です。彼らの今後の活躍にご期待ください。......それではこれにて会見は終了させていただきたいと思います。本日は貴重なお時間、ありがとうございました」
***
会見時、コメント欄では。
『待って、男の子なHIKARI可愛い!!』
『そりゃ恋人と間違われるわな』
『パパラッチざまあwww』
新ユニット結成発表時。
『まさかの新ユニット?! これは推すしかないっしょ!!』
『情報量過多だよ!!』
『でも一回めろでぃあとNOIRの合同ライブで二人歌ってたよね?!』
『......卒業ってことではないみたいだし、推し活が増える!!』
『男の子なHIKARIとジュナのユニットとか美味しすぎる......』
ユニット名発表時。
『ちょっとwww』
『友人関係とは』
『社長わざとだろ』
『LOVERS=恋人達っていみよね?』
『恋人じゃないって言ったそばからwww』
『ファンを試しにかかっているwww』
『公式さん、説明プリーズ』
『二人の距離感が好き』
コメント欄は温かな言葉で溢れていた。
***
「越された!! 完全に越された!!」
暗い部屋の中、一人爪を噛み締めながらパソコンを見つめている少女。
――花恋である。
公式でこんな会見をされては例の同性愛の記事を出したところで誰も信じない。
むしろ「やっぱりか」と言われて終わるに違いない。
「クソッ! クソッ!!」
いつものぶりっ子はどこへやら。
花恋は次の手を考えるがいい案は思いつかない。
「~~!! もういや!! 絶対!絶対ジュナさんを手に入れえるんだもん!!」
――そんな彼女の部屋の壁一面には、ジュナの隠し撮りが敷き詰められていた。




