第3話
「皆、ライブお疲れ様!とっても良かったわよ。特にHIKARI。前よりも歌声が響くようになってたわ。これからもその調子でね」
「私達の王子なんだから、日に日によくなるのは当たり前のことですよ社長!」
「そうそう!王子の歌唱力と可愛さあっての【めろでぃあ】ですからね♡」
メンバーのリーダーである【HANA】と癒し系担当の【MOMO】が今日も今日とて僕を褒める。
この【めろでぃあ】では、結成した当初から僕の事を【王子】と呼ぶ。
最初の頃は男である事に対して反発がなかったわけではない。
でも、皆、僕の実力を買ってくれて次第に打ち解けることが出来たのだ。
もちろん、僕は【女の子】として舞台に立つ。
「ハァ。それにしても私達の王子は今日も可愛いかったわぁ」
「......MOMO、毎回言ってて飽きないの?オレは......」
「王子!"オレ"じゃなくて"僕"でしょう?せっかく可愛いんだから!」
......このグループに所属してからと言うものの"僕"呼びを強要されているのである。
僕はもう慣れて、諦めの境地である。
そんなやり取りをしていると、舞台袖の入り口から三人の男が入って来た。
「今日も素敵なライブだったよ、姫達」
「......NOIRの皆さんまさか今日も関係者席で?」
「特に【ピンクの姫】の歌声はいつ聴いても素晴らしい......。な、ジュナ」
「あ、あぁ。そうだな」
......この男、【ジュナ】は、今でも忘れていない。
アイドル育成所で出会った僕の"ライバル"。
向こうは僕の事を覚えていなくても、僕は忘れない。
育成所で彼は、僕の先輩だった。
そんな彼は僕に言ったんだ。『お前はアイドルになれない』と。
僕はその言葉で自尊心をへし折られ、育成所を辞めた。
......だと言うのに、この男は。
「お前はHIKARI推しだもんな、ジュナ」
「ちょ、カイ!あんまりそんな事を言うな!!」
――そう。僕の事を忘れている上に僕が"推し"だと言う。
......非常に腹が立って仕方がない。
だが、僕はもう大人だ。
「ジュナさん、今日も来てくださってありがとうございます」
「い、いやぁ。今日もすごくいいライブだったよ。オレらも負けられないなぁ」
ハハハ、と頬を赤く染めながら笑うこの男に、僕は愛想笑いを贈る。
すると、彼は顔を耳まで真っ赤に染め固まったのであった。
ハッ。ざまあみろ。
「ハイハイ!同じ事務所同士喧嘩しないで仲良くすること!!いつも言っているでしょう?」
「「社長」」
「【めろでぃあ】も【NOIR】もウチの二枚看板なんだから、あまり競い合わないで......」
美咲ちゃんがそう言うと、HANAと【NOIR】のリーダー、カイが異議を唱える。
「「一番じゃなくちゃ意味がないんです!!」」
......見事にハモった。
それが許せないのか二人は睨み合った。
......これは今日も長くなりそうだ。
そう思いながら、僕は水を飲んだ。




