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美少女アイドルは100匹の猫かぶり!  作者: 朱音小夏


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第29話

 ***


 その日の夜。

 僕は落ち着かない気持ちを料理をしながら誤魔化していた。

 ――これから樹がこの部屋に来る。

 そう考えるとドキドキして、鼓動がうるさい。


「よし。こんなものか」


 あまり凝ったものを作るのもなんだったので、ここはオムライスとオニオンスープで勝負。

 出来上がったものをテーブルへと運んでいるとインターフォンが鳴った。

 ――来た。

 僕はドアをガチャリと開けた。すると――


「ただいま光希ぃい!!」

「うわ!! ちょ、危ない!!」

「光希ぃ! 会いたかったよー!!」

「......昼間あったばっかりだろ」


 ......本当は僕も会いたかった。

 だがそれを口にするのにはまだ抵抗があった。


「ん? なんかいい匂いがする......」

「......ご、ご飯、作ってある」

「へ?! 光希の手作り?!」

「う、うん」


 僕が肯定すると、樹は顔をパァっと輝かせた。

 ......嬉しそうにしてくれて僕も思わずニヤけてしまいそうになる。


「さ、冷めちゃうから早く食べよ」

「......光希」

「? んン」


 振り向きざまに樹がキスをしてきた。

 ――今までにはなかった長めのキス。


「よし! 満足!!」

「~~!! いきなりすぎる!!」

「え? 嫌だった......?」

「い、嫌とかじゃなくて!!」


 不意打ちにされると心臓に悪いのだからよしてほしい。

 でもそんなキスもたまになら......と思ってしまう自分がいる。

 ......なんだか最近樹のペースに乗せられていないか?

 僕は少しだけ不満に思ってしまった。

 僕は思わず、樹の足にけりを入れる。


「痛っ! 痛いって光希さん!!」

「うるさい!! お前が悪いんだ!!」

「えぇ......」


 僕は顔に熱が集まっていくのを自覚した。

 その顔を見られたくなくて、痛がる樹を置いてリビングへと向かった。

 その後ろを大人しく樹がついてくる。


「うわぁ!! オムライス!! 美味そう!!」

「そ、そう?」

「食べよ食べよ!! いただきまーす!!」

「......どう?」


 言ってはなんだが料理の腕には自信がある方だ。

 しかし、好きな人......"恋人"に手料理を振舞うなんて初めての経験すぎて緊張する。


「これもう店出せるレベルじゃん!! オニオンスープも美味い!!」

「......良かった。口に合わなかったらどうしようかと」

「? 光希の手料理ならなんだって食べるよ?」


 ほら。こうやって僕のことを甘やかす。

 ......ところで、ご飯を食べた後って一体どうするつもりなんだ?


「樹、今日は泊ってくの?」

「へ?! み、光希さん?! それはまだ早いと思って我慢していたんですが......」

「?我慢?なんで我慢する必要があるんだよ」

「もー、ヤダこの子!! 鈍感にもほどがあるでしょ!!」


 泊るなんて友達同士でもするんだから、恋人なら当たり前なんじゃないのか?

 そんな事を考えていると、樹は真剣な顔をして見つめてきた。


「な、なんだよ......」

「光希、恋人同士が夜を一緒に過ごすってのは特別なんだよ?」

「特別?」

「そう。例えば......SEXしたりとか、ね」

「は、ハァ?!」


 そんな、断じて僕はそんなつもりで言ってはいない!!


「......やっぱりそこまで考えてなかったか」

「う......」

「いいんだよ。オレらはオレらのペースで進んで行こう?」


 こういう時までオレに甘い。

 だがそんなところも、好きだ。

 樹の言う通り僕達のペースで進んで行けばいいんだ。

 ――この時はそんな甘い事を考えていたが、まさかあんなことになるとは思ってもみなかった。


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