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美少女アイドルは100匹の猫かぶり!  作者: 朱音小夏


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第28話

 翌日、事務所に行くとドラマ撮影があるはずのジュナの姿があった。

 ジュナは僕の姿を見るや否や小走りで近寄って抱き着いてきたのである。


「ちょ!! 何してるんですか!!」

「えー? 光希の姿が見えたから♡」

「......誰かに見られたら......いや、事務所の人達なら"またジュナさんか。"で済むか」

「ちょっと光希。二人の時は名前で呼んでよ」


 昨日恋人になったばかりで、僕は距離感がいまだ掴めないでいた。

 ......オフの時とオンの時ってどう切り替えればいいんだ?


「......樹、ドラマ撮影は?」

「今日は午後から! だから光希に会いに事務所に来た!」

「そ、そうなんだ」


 僕は思わずホッとしてしまった。

 ――花恋ちゃんと樹が一緒にいないことでこんなに安心するなんて。

 いつから僕はこんなに嫌なヤツになってしまっただろうか。


「? 光希、どうかした?」

「......自己嫌悪に陥っていたとこ。きっと聞いたら嫌いになるかも」

「オレが? 光希を? ないない!! オレがどれだけ光希を想ってきたと思ってるのさ」


「だから言って?」そう言われてしまえば、黙っていることは出来ない。

 僕は馬鹿正直に思ったことを言ってしまった。

 すると――


「ハァー......」

「な、なに?!」

「......光希、可愛すぎ」


 ?? 可愛い?? これのどこが??

 物凄い我儘な気がするのだけれど......


「要するに、光希は"独占欲"を抱いてるってことでしょう?」


 ......独占欲?これが?


「あら? HIKARIにジュナ。二人きりなんて珍しいわね」


 ――美咲ちゃんだ。

 ここはどうする?どうしたらいい?

 僕がそう考えていると、「社長」と樹が美咲ちゃんを呼び止めた。


「オレ達、真剣に交際することにしました。」

「......私も週刊誌の情報は信じてなかったけれど、ちゃんと二人で話し合ったのね?」

「はい」

「......そう。いいこと?絶対に光希を泣かせないで。私からはこれだけよ」


 美咲ちゃんはそう言うと僕の頭を優しく撫でてから去って行った。


「おっと。オレももう行かないと」

「......撮影頑張って」

「!! ありがとう光希ぃ!!」


 ――この暑苦しさも愛なのだろうか?




 ***


 ダンスレッスンの休憩中、何気なしに僕はスマホでネットニュースを見た。

 ......また新しい記事が上がっている。

『ジュナ&花恋、交際継続か!?極秘デート目撃情報も!!』


「王子! その記事書いてるとこ信憑性のないところだから、心配しないで!!」

「え?」

「......実は私達、ジュナに忠告しに行ったの。そしたら『自分は本気で光希のことが好きだ』って言うんですもん。だから、ジュナを信じてあげましょう?」

「......うん」


 ――なんだ、樹のヤツ、僕に内緒で皆に告白してたなんて。

 そうしみじみ思っているとスマホが鳴り始めた。

 相手はもちろん樹だ。

 僕は邪魔にならないように廊下に移動して通話ボタンを押した。


「もしもし」

『もしもし、光希?! まさかもうネット記事読んだ?!』

「......うん」

『デマだから!!』

「......大丈夫。オレは樹を信じてる。......だから仕事が終ったら会いに来て」

『光希......ありがとう。絶対会いに行くから』


 ――今はこれでいい。これでいいんだ。 


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