7章ー47:龍廷の秘宝
なんとなく、分かってたことだ。
“龍皇が闇属性で、全部の属性を完璧に模倣できる”って、聞いた時から・・・。
だけどそんなテンプレ展開あるはずがないし、第一おこがましい。
僕が、龍皇の子孫だなんて・・・。
だから、そんなはずないって、心の中で必死に否定してた。
いつもの、自己肯定感の低さからくる自信の無さだ。
しかし、無駄な謙遜だったらしい。
龍皇ファブ・クロバは、最初から分かってたんだから・・・。
「リオルが、陛下の、末裔・・・?」
「殿が・・・そんな馬鹿な・・・!!」
仲間たちも、貴族たちも、両方驚いている。
「あん時コイツから感じたあの気迫・・・まさかとは思ったが・・・。へっ、陛下!!この者の正体を以前よりご存じだったなら、どうして我らにお伝えしなかったのです!?」
「教えてたらみんな手加減してただろ?特にトニト。お前は」
「ぐっ・・・!!」
トニトの図星を突いたネブラに、クロバは舞台から降りて黒い息を吹きかける。
すると、全身に負った傷が治り、切られた舌もすぐに生えてきた。
すごい・・・再生力のアウトプットもできんのか。
「傷の治癒、感謝いたします」
ネブラはクロバにお礼を言うと、貴族たちの列に入った。
「細かい話はひとまず置き、単刀直入に聞く。リオルよ。何故其方は朕を尋ねてきた?」
「っ!!」
空気がガラっと変わったのを感じ、僕は改めて跪いた。
「・・・・・・天下統一の、後ろ盾を得たく」
「そうか・・・」
予想通りの答えに、クロバは少しガッカリした様子・・・。
「ではもっと細かく。リオル、其方の思い描く、天下とはなんだ?」
「えっと・・・それは・・・」
ここは機嫌を損ねないように体裁を考えた答えか?
それとも、今まで言ってきたような直球ド真ん中の答えか?
どっちだ!?
「素直に申してみよ。どのような答えであっても、朕は気にしない」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「太平の世を、築くことです」
「太平・・・。それはどのような世だ?」
「・・・・・・普通に朝起きて、普通に仕事をして、普通にご飯が食べれて、普通に暇な時は寝たり、家族と遊んだり、恋をして結婚したり・・・。平凡で、退屈に感じてしまう時もあるけれど、生きる上で当たり前に得られる権利を当たり前に受け取れる・・・。そんな世を、作っていきたいです」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
これで良かったのかな?
言う通りに素直に答えたけど・・・。
さっきから黙って、何も言おうとしないけど・・・。
「青臭いな」
「え!?」
「だが・・・朕は嬉しい」
うっ、嬉しい?
「千年以上も離れているのに、子孫が同じ考えを持っているのは・・・」
「おっ、同じ?」
「ああ。退屈こそ平和。朕はそう思っている。当たり前に、平凡に過ぎ去る日々こそ、享受すべき太平・・・」
窓に映る龍京の穏やかな景色を、クロバはノスタルジーに浸りながら眺める。
とりあえず、向こうのお目がねにかなったってことで、いいのかな?
「久しぶりに心が熱くなった。特別に良い物を見せるとしよう」
良い物?
「陛下。では・・・!」
「ああ。ティラエ。あれを持ってきてくれ」
「承知いたしました」
ティラエは謁見の間を離れ、しばらくすると戻ってきた。
手に小さな木箱を持って・・・。
「龍皇陛下、これは?」
「龍廷が所有する秘宝だ。朕が後生大事に持っているだけなのだがな」
「えっ!?よろしいのですか!?そんな大事な物を・・・!!」
「我が末裔に免じて、特別にな」
ティラエが木箱をそっと置くと、御簾の向こうから渡鴉竜が出てきて、器用に足でフタを開けた。
「遠慮はいらん。近くに寄るがいい」
僕たちは恐る恐る、木箱の中身を見ようと近づいた。
すっ、すっごいドキドキする・・・!!
だって手の平サイズだよこの箱?
中に入ってんのも、かなり小さい物なんじゃ・・・。
壊したりしたら絶対ブチ殺され・・・。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「これは・・・何とも奇妙な梱包じゃな。氷と雷に包まれておる」
「しっかし、このとても小さくて桃色の箱は何じゃ?何とも奇怪な形をしておるな」
「もっと派手なモンだと思ってたがぁ~・・・めちゃくちゃちっせぇじゃねぇか!!」
「これ人族が使うんじゃないの?」
「お手に取ればすぐに壊れてしまいますな」
「表面はガラス細工でしょうか?こんな加工技術は見たことがございません」
「それにこの薄さ・・・もしや鏡の類いでは?」
「見たことのない造形・・・。探求心がくすぐられますね♪リオル様!リオル様?」
「・・・・・・ホ」
「え?」
「スマホじゃんこれっ!!!」
間違いない!!!
液晶画面、ホームボタン、カメラ、スピーカー・・・。
スマホ・・・それもiPhone!!!
なんで・・・なんでこの世界にiPhoneが!?
だけど、見たことのない型式だ。
明らかに僕が生きてた時代の最新モデルの17を超えてる!!
「リオル!!これが何か知っているのか!?」
「わたくし達だって千年間、これが何なのか知らなかったのに!!」
「おいテメェ!!これをどこで見た!?」
龍廷貴族たちも食らいついて聞いてくる。
そっ、そんなグイグイ来られても・・・!!
僕だってビックリしてんだから!!!
「其方・・・なぜ、これの名前を・・・」
クロバが目を大きく見開いて聞いてくる。
僕はそんなクロバに対し、逆にこんな質問をした。
日本語で。
『龍皇様・・・!!あなた・・・日本に行ったことが・・・!!!』
・・・・・・・。
・・・・・・・。
『遠い昔に、な』
日本語で、返してきた・・・。
「どうだ?合っているか?」
「えっ、ええ!」
「そうか。千年経っても錆びついてはいなかったか」
安心した顔をした後、改めてクロバは僕に質問する。
「リオル。どこでこれの名前を知った?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「前世で・・・」
「なに?」
「信じられないかもしれませんが・・・僕・・・日本からこっちの世界に生まれ変わったんですっ!!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
『異世界転生・・・』
っ・・・!!!
「ご存じ・・・なのですか?」
「似た物語・・・『じゃんる』というのか?それらは大方、希未に教えてもらった」
「希未?」
クロバは人差し指を、氷と雷の包みに入れ、すごく慎重にホームボタンを押した。
映っていたのは、日本家屋をバックに、中型犬サイズの少しイヤそうな顔をした子どものクロバと、それを抱える、眼鏡をかけた大学生くらいの年の、そばかすとショートカットが特徴の、満面の笑みの女の子。
この子、僕がオニガナシュの戦いで『真・超帯闇形態』を初めて使う時に、夢で見たあの女の子だ。
ってことはあれは・・・子どもの頃の、クロバの記憶・・・。
「それがこのスマホ、“iPhone21”の持ち主・・・平 希未。明るく、聡明で、恐れ知らずな、我が盟友だ」
盟友?
「そうか。其方・・・元はあの世界の生まれだったか。ならば、あのような志を持つのも然り・・・か」
どこか物悲しい顔を浮かべ、クロバは木箱に集まる僕たちの前に座った。
「昔話をしよう。どうして朕が、退屈こそ平和という考えに至ったか、その経緯・・・。愉快で明るい、そして悲しい過去を・・・」




