7章ー45:翼の痣
「ほんっっっっっっっっとに・・・!!ごめんなさいっ!!!」
正気に戻った僕は正座して全員の前で謝った。
その中にはティラエと、僕が試練でボコボコにしてしまったネブラもいる。
「お前の気の短さには飽き飽きする。わしはお前に闇属性をできるだけ使わせぬようにしたのに・・・。それを無下にして闇属性で暴れ狂うとは何事か!!」
う・・・!
案の定スラギア君が一番怒ってる・・・。
僕の闇属性使用による反動をめぐって喧嘩になって、仲直りしたと思ったら乱用したんだから無理もないか・・・。
「スラギア様っ。どうかご勘弁してくれないでしょうか?このように、リオル様もかなり反省していらっしゃるので」
「ならん!レムア、お主は夫に甘すぎる!!こ奴のような無鉄砲な男は、尻に敷くくらいが丁度いいのじゃ!!」
「はぅぅ・・・」
レムアまで煽り食らって怒られた。
あ~・・・僕のバカ!
なんぜ前世のことで今更にブチ切れたりすんのかなぁ~・・・。
「その辺にしてやれスラギア。レムアは我を失った夫に立派な気概を見せたではないか。もっとも?妾はこ奴が口走ったいわれのない暴言は許しておらぬが・・・」
ギロっと睨んでくるティアスに僕はビビった。
「あっ、あれはぁ~・・・!!頭に血が上って口を滑らせただけで・・・!!二度とあんなこと言いませんので、どうかお許しをっ!!」
「当たり前じゃ!!次に妾と妾の家を侮辱するなこと言ったら半殺しにするからなっ!!」
うう~・・・!!
脳みそがキュッとなるぅ~!!
なんで「お前ら僕を利用してるだけだろ!!」なんて言ったんだ、あん時の僕!!!
「お~い。コイツにも謝ってほしいのだが~?」
ハッと顔を上げると、ティラエがボロボロになったネブラを介抱していた。
心の試練の試験官、霧龍公タンテ・ネブラ。
人の思い出したくないトラウマを思い出させる、最悪の試験官・・・。
うつになる原因を掘り起こされた身としては、本当は謝りたくはないが・・・。
角を折られ、下をちょん切られ、しかも『真・超帯闇形態』での純粋な闇属性による攻撃だったから、回復することもできない。
さすがにこっちがやり過ぎたから、謝らないと・・・。
「ネブラ様!!本当に申し訳ございませんでしたっ!!試練の場ではございましたが、大変なご無礼を・・・!!!」
「別に。謝らなくていいよ」
へ?
「いいのかネブラ?お前殺されるところだったのだぞ?それにこんな深手を負わされて・・・」
「龍皇様に治してもらうからいい。それで?この地竜、どうするの?合格でいいの?ティラエ」
「無論だ。リオルは妻により辛き記憶で失っていた我を取り戻したのだ。上洛者本人が行うべき最後の試練に代理を立てることは本来許されないが、お前が“龍宝”を使ったことで釣り合いが取れよう。禁を破ったこと、今回は不問とする」
「そう」
寛大・・・というより無関心と言った方が正しいか。
殺されそうになったのにそれを気にも留めないなんて・・・。
「お前はそういう奴だったな。それで?取り戻せたか?生きる心は?」
「一瞬掴めそうだった。だけどまた離れていった。やっぱり俺は、まだ死んだままなのかも。羨ましいよ。辛い過去と向き合えて」
何故だろう。
今ほんの少し、ネブラが前世の僕とダブって見えた。
もしかして彼も、僕と似た物を抱えて・・・。
「ティラエ様。改めて寛大なご判断、感謝申し上げまする」
レムアがティラエに感謝を伝えてることに気付き、僕も並んで頭を下げた。
「お手数おかけして申し訳ございませんでしたっ!!それと、特例で心の試練を合格扱いにしてくれて、本当にありがとうございますっ!!」
「礼を言うなら教えてはくれないか?お前達の秘密を」
「ひっ、秘密?」
「とぼけるなレムア。先程までのお前は大層苦しそうにしていたではないか。リオルの身になったかのように。お前達夫婦は、一体何を隠している?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
全ての試練を突破し、隠す必要がないと判断して、僕はレムアとの間に抱えた秘密を、ティラエに打ち明けた。
◇◇◇
「なるほど・・・。つまりお前達夫婦は、魂と魂とで繋がっていると?」
「はい。僕とレムアは、声に出さずとも、心の中で会話することができます。これも戦略の一種と考え、今まで秘匿してきた次第です」
「氷の試練でレムアが闇属性で強化された氷属性を使ったのは、レムアの中に、闇属性の芯とやらのおかげ・・・ということか」
「ご推察の通りです。しかし、心の読み合いはリオル様のお身体にご負担をかけてしまいます。だからスラギア様は、それを和らげるために、リオル様から闇属性を奪ったのです」
「その気遣いも台無しにされたがな」
「本当ごめんなさい・・・」
「火龍姫様に斬り飛ばされた胴から下を生やすにも苦労したじゃろう?」
「読心だけでなく、闇属性の行使の度に背中に激痛が走るとは・・・存外使い勝手が悪いな」
「・・・・・・いや、それがさ、痛くなかったんだよね・・・」
「なに!?今まで悶えるほどに痛がっておったであろうが!」
実は、暴走状態から復帰してから、闇属性発動の反動である背中の痛みを一切感じなくなったのである。
今から思い返すと、なんか怖くなってきた・・・。
まさか、また僕に何らかの変化が!?
「ねぇ!!背中どうなってる!?痣はどんくらいまで広がってる!?」
「痣?」
「背中が痛くなる度に肩辺りにできた痣がどんどん広がってるんですっ!!ちょっとみんな見てくんない!?」
僕が背中を見せると、みんなは何も言おうとしない。
「ちょっ、ちょっと・・・。なんでみんな黙ってんの?めっちゃ怖ぇんだけど・・・」
「こっ、これは・・・」
「どうなっておるのじゃ・・・」
え!?なになに!?
まさか背中全体が真っ黒になってるとか!?
「ねっ、ねぇアンドラ!!持ってるおくるみの中に鏡があるからさ!!それを竹にかけてくんない!?」
「しょっ、承知!!」
アンドラが荷物の中から鏡を出して、見えやすい角度にして竹に立てかけた。
「こっ、これ・・・」
痣は背中全体には広がってなかったけど、ぼんやりとなっていた形が、はっきりになっていた。
「翼に・・・なってる・・・?」
折り畳まれた腕と膜は、紛れもなく翼を彷彿とさせる造形に仕上がっていた。
「これは・・・。いや、まさかな」
「え・・・?」
ティラエが一瞬、この現象に心辺りのあるような素振りを見せたが、すぐに自分で否定した。
問いただそうと思ったが、やらかした自分がぐいぐい行くのも失礼だと思いとどまり、そのまま何も聞けずじまいになってしまった。




