7章ー42:裁定者の力
「・・・・・・わしに裁きを下すだと?片腹痛いわ」
己に向けて牙を剥くティラエを前に、リオルはニヤリと笑った。
「貴様はわしが誰だか分かっておらんようだな?わしは・・・天下竜リオル。サンブロドの乱世を終わらせ、支配する地竜。貴様らのような無駄に年月を食い潰すだけの貴族が歯向かえる存在ではないわ。そこなボロ布の如き貴族を置いていけば、その不敬、見逃してやらんでもな・・・」
「長い。もっとまとめろ」
リオルが話している間に、ティラエは彼の横を通り過ぎた。
その直後、リオルの首から鮮血が噴く。
「っ!?」
予期せぬことにリオルは戸惑ったが、首の傷はすぐに塞がった。
「態度が大きくなって再生速度も上がったか」
ティラエは特に驚く様子を見せず、踵を返してリオルに爪で襲い掛かった。
リオルはその一撃を百竜丸で防ぎ、両者は刀と爪の剣戟に突入した。
「目で、追えぬだと・・・!?」
ティラエの爪の斬撃はネブラの舌よりも速く、重かった。
幾度目かのぶつかり合いの末、ティラエはリオルの左腕を飛ばした。
「がっ・・・!?」
切り落とされても闇属性の力ですぐに再生する。
リオルはそう思って余裕していたが・・・。
「なぜだ!?どうして・・・!!」
リオルの左腕は再生しなかった。
断面を見ると、青い炎が肉を焼き、再生を阻害していた。
「ティルオと同じ炎だと思うなよ」
両手に炎を纏いながらティラエは言った。
「ちっ・・・!!」
リオルは自分で左腕を食い千切って無理やり再生させた。
「“真ヒノモト流竜術・起ノ域・平闇”!!」
リオルは再び周囲に闇属性の渦を発生させ、ティラエの火属性を無力化しようとした。
するとティラエは、全身から青い炎の粉を出して纏う。
それは、リオルの純粋な闇属性でも無効化できないほどに、凄まじかった。
「なっ、なぜ・・・」
困惑するリオルだったが、彼のすぐそばまでティラエは迫ってきた。
「試練を行なうどの龍よりも強くなければ、裁定者など務まらんだろう?」
ティラエはリオルの首に噛み付いて倒し、青い炎を纏った両手で、数十発の打撃を浴びせる。
その一撃一撃が、リオルの胴を焼き、臓器を潰す。
「がはぁ・・・!!!」
血反吐を吐くリオルだったが、力を振り絞り源龍族の力の源である角を百竜丸で斬り折ろうとした。
しかし百竜丸は、ティラエの角に僅かなヒビを入れただけだった。
「やったな?お返しだ」
I字型のティラエの角が光ったと思ったら、彼女は大きく頭を振り、青炎の斬撃を角から放ち、リオルを吹き飛ばした。
「ぐあっ・・・!!おのれぇ・・・!!!」
リオルは根性を振り絞り、百竜丸を構えてティラエに向かっていった。
ティラエは頭の角を振り上げながら、円を描いて回転した。
それにより、リオルの腰から下は斬り飛ばされた。
「がはっ・・・!!ふぐっ・・・!!」
ほぼ上半身しか残っていないリオルは竹を薙ぎ倒しながら地面を転がる。
「ふうっ~・・・!!ふうっ~・・・!!」
切断部分を焼かれながらも、リオルは歯を食いしばって腰と両足を生やそうとする。
「まろはお前のことを買っていたのだがな。どうしてそうなった?」
這いつくばって動けないリオルに、ティラエは落胆しながら語りかける。
「わしはお前達の思い通りになんぞなるものかっ!!!」
「なに?」
「“買っていた”だと!?笑わせるなっ!!お前達はわしをただ利用したいだけであろうっ!!己が私腹を肥やすためにっ!!誰だってそうだっ!!皆自分のことしか頭にないっ!!命、富、地位、家族。己の大切な物を守るためとあらば他者に対し幾らでも残酷になれるっ!!耳障りの良い戯言なんぞ、もう聞きたくないっ!!誰も・・・!!誰もわしを・・・愛してくれてなどいないっ!!!」
「もう止めて下さいっ!!!」
ティラエが振り向くと、レムアが苦しそうに胸を押さえて、ティアスに介抱されていた。
「もう・・・お止めにしましょう?リオル様・・・。怒りと孤独に、これ以上・・・呑まれないで下さい・・・」




