7章ー36:最後の試練のメンバー
雷の試練を終えた霊峰。
五龍門の試練の裁定者・ティラエが、僕たちに試練を突破されたトニトを諫めている。
「なぁ。もう認めたらどうだ?」
「誰が認めるかよっ!!この俺が亜竜族に負けたなんざ、末代までの恥さらしだぜ!!」
「翼折られて頭からゴチ~ン!!って落っこちたくせに・・・」
「なんだとぉ!!」
中々認めないからウンザリした僕から漏れた独り言を、トニトの地獄耳は聞き逃さなかった。
イチャモン付けてきたトニトを、ティラエが前から抑える。
「そもそも何だよテメェ!?地竜の分際で源龍族よりも多い闇属性の力・・・!!あんな半端ねぇ属性力・・・陛下でしか見たことねぇよ!!ひょっとしてテメェ、皇族の流れなんじゃねぇか!?」
「・・・・・・そうかもしれない」
全員が僕に注目した。
「リオル様。もしかして・・・」
「さすがはレムア。僕の奥さんだ。勘がいいね。うん。僕が今回の上洛を決めたのには、もう一つ理由がある。龍皇様が、僕の先祖か確かめるためだ。源龍族でもない僕が、源龍族より闇属性が使えるなんて、おかしいでしょ?」
「それは、そうですが・・・」
「世迷言を。確かに我ら亜竜族は、源龍族を始祖とする種族。しかしなぜ、皇族の血筋の者が、東の小国の長なんぞに収まっている?考えすぎではないのか?」
「そうだねスラギア君。僕お高く留まってんのかもしんない。でも、だからこそ、龍皇様に直接会って、確かめたいんだ。そのお方が本当に、僕のご先祖様かどうか・・・」
闇属性を初めて使った時に見た夢。
あの夢に出てきた源龍族が龍皇だと分かれば証明できる。
あれがただの夢ではなく、僕の先祖・・・オリワ領を興した地竜の記憶なのだと。
「だから僕は龍京に行って、龍皇様に会わなくちゃいけない。それに、ぼんやりとだけど感じるんだ」
「何をじゃ?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「向こうも、僕を待ってる。だったら待たせるわけにはいかないでしょ?」
しんみりした空気の中、トニトは舌打ちして席に戻った。
「いいのか?勝負は着いてないのだろう?」
「勘違いすんな。陛下の血筋のモンを殺しちまうのは気が引けるってだけだ。そうじゃないと分かったら、改めて勝負してやんよ!」
とりあえず、丸く収まったってことで、いいのかな?
とにかく今は、最後の“心の試練”に行くメンバーを決めないと。
「スラギア君。最後の試練なんだけど、誰を連れていくべきだと思う」
「え?そっ、そうじゃな・・・。これまでの試練は火、水・・・と属性に沿った内容であった。だが心という属性はない故に、中身が分からん。難儀である・・・」
「人選については気にせんでいいぞ。最後の試練は、上洛の代表ただ一頭のみで行うからな」
・・・・・・え?
「え~っと~すいませんティラエ様?今なんて言いました?」
「最後の心の試練はリオル・・・お前だけが挑むのだ」
え・・・え!?
僕一人!?
僕一人でバフがかかった竜四頭でトントンのバケモンと戦えと!?
「案ずるな。最後の試練はここまでの四つとは違い、力ではなく魂で挑む。その者が上洛を果たせるに相応しい、心の強さの持ち主かを、確かめる」
「それって、試練を行なう貴族と戦う必要はない・・・ってことですか?」
「そうだ」
「そっ、そっかそっか。へぇ~・・・」
なんか車の免許取った時のこと思い出したわ。
仮免で実技、本免許はペーパーテストだったから。
ぶっちゃけ仮免で公道走った時の方が緊張したし。
バチボコにやり合うことがないんだったら、多分今までで一番簡単なんじゃ・・・。
「先の四つに比べて一番簡単・・・などと思ってはいまいな?」
思ってることをズバリ言い当てられてドキっとした。
僕の緊張を見透かし、ティラエは神妙な顔でこう言った。
「肉体の強さが、精神の強さに繋がると思うのは浅はかだ。むしろ強い力の持ち主の心こそ、弱く、脆いものだ。ここまで試練を乗り越えたお前に免じて、一つだけ助言を授けてやろう」
ティラエは僕の顎をクイっと持ち上げ、耳元で囁く。
「過去に溺れるべからず。この言葉を、決して忘れるでないぞ」




