7章ー35:雷の試練・審判ノ刻
スラギア君の手を取って、僕たちは、二人一緒に並んでトニトと対峙した。
「それでスラギア君?どうするよ?」
「奴の両翼はお前とレムアのおかげでヒビが入っておる。闇属性で付けた傷じゃ。早々に治りそうにない。どちらか一方を、更に深く斬り込めば・・・」
「トニトは落ちて、試練を突破できる・・・!!」
「そうじゃ」
「しかしどうやって近づくおつもりで?トニト様も、敗色が濃くなっていることを悟っているはず。これ以上にない妨害をしてくるかと・・・」
「わたくし達が道を開きましょう、レムア。盾となり、お二人を雷龍公様の間合いまで守るのです!」
「・・・・・・承知いたしました!!」
レムアとウナトゥが前に出て、僕とスラギア君は出撃の用意に入る。
「リオル、お前のその『宝刃』・・・。それに闇属性を帯びさせることはできるか?」
「できないことはないけど・・・」
「・・・・・・最後の命じゃ。わしが届かなかった場合は、それで奴の翼を斬れ」
スラギア君はどうやら、雷の試練最後まで、僕に闇属性を極力使わせたくないみたいだ。
「あっ、あのさスラギア君。僕、剣術はちょっと苦手で・・・。噛んだり引っ掻いたりは得意だけど・・・」
「はぁ・・・。お前はもっと武具の扱いを心得た方がいいようじゃな。良いかリオル。わしらは竜ではあるが、地を跋扈する獣ではないのだぞ」
「じゃあ何なのさ?」
「そんなの決まっておろう?」
スラギア君は角と背びれにバチバチ黒い雷を帯電させる。
「亜竜族はな・・・武士じゃ」
スラギア君は上方に滞空しているトニトに突進していった。
「勝ちを急ぎやがったか!?バカが!!」
トニトがスラギア君に向かって雷混じり竜巻ブレスを吐くと、レムアがそれを右手に纏った黒い氷刃で弾いた。
「なっ・・・!?」
「わしの勝ちじゃな!!」
一気に同高度まで上がったスラギア君が、闇属性混じりの雷属性を帯びた尾でトニトの翼を斬ろうとしたが、トニトの出した竜巻で防がれた。
「仕損じやがって!!何が勝ちだよ!?」
「其方に言ったわけではない」
「っ!?がっ・・・!!」
スラギア君に集中してる間に僕はトニトの右翼を百竜丸で斬った。
「ちっ・・・!!浅い!!」
闇属性を帯びさせるのに集中し過ぎた!!
だから慣れないことは苦手なんだよ!!
「忘れてたぜ!!テメェのことをよぉ!!」
「ごはぁ・・・!!!」
トニトの闇属性を付与したローブローがどてっ腹に直撃した。
「ゴホッ!!オェ・・・!!っ!?」
苦しむ合間もなくトニトは、今度は顔を狙って闇属性パンチを出そうとする。
しかし間に入ったウナトゥの黒い水の鎧でガードされた。
「またテメェか!!すっこんでろデブ女!!」
「友達の嫁さんデブって言ったんなっ!!!」
ウナトゥを飛び越え、僕はトニトの顔面めがけてドロップキックした。
「リオル様・・・」
「気にしないでね!!ウナトゥ全っ然・・・!!太ってないから!!」
「わたくし、恰幅の良いことは気にしてませんよ。むしろ誇りに思っております」
「何故ならその豊満な身体にわしは惚れたのじゃからな」
「っ・・・///」
レムアと一緒にやってきたスラギア君の口説き文句にウナトゥは頬をポッと赤らめた。
「それよりお前、どさくさ紛れに呼び捨てにしたであろう?わしの嫁を」
「あっ・・・。そっ、そりゃ~・・・もう付き合い長いから・・・ね?」
「別に気にしておらん。ただ今更過ぎると思うてな」
そっちか!
「お前って年を食っても治らんな。その人見知り癖」
「謙虚って言ってほしいね!!」
「レムアはリオル様の領主にも関わらず目線を低くするの、良い心掛けだと思いますっ!!」
レムア、それあんまフォローになってないよ?
場が少し和んだところで、僕たちは距離を大きく取ったトニトを見る。
「テメェらがただのトカゲでないことは、よ~く分かったぜ。面白れぇモンも見れたし、そろそろ・・・終いにしようやぁ!!!」
トニトが咆哮を上げると、上空の雷雲から全方位に稲妻が落ちる。
「私達が道を開きますっ!!!」
「先に買って下さいねっ!!お前様!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ありがと!!!」
「見ておれ!!!」
レムアとウナトゥが、刃と鎧で落雷を弾く後ろで、僕とスラギア君は空を駆ける。
どちらが先に、トニトに届くか、競争するために。
さすがのオールレンジ落雷を全て捌くのは難しく、僕たち4人ともある程度被弾してしまった。
だけどそれでも踏ん張って、トニトの間合いまで届くことができた。
「ぐっ・・・!!」
「ああっ・・・!!」
レムアの氷刃が砕け、ウナトゥの鎧が剥がれて、二人は磁場で緩和された重力の下、ゆっくりと落ちていく。
「リオル様っ!!」
「お前様っ!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「勝って!!!」
「勝って下さいまし!!!」
お互いの妻に檄を飛ばされた僕とスラギア君は、トニトの間合いに飛び込んだ。
そして・・・二人同時に翼を斬った。
「がっ・・・!?おっ、俺が・・・!!亜竜族に、負け・・・!!」
愕然としながらトニトは落ちていき、頭から地面に激突した。
その直後、霊峰を覆っていた嵐が止み、積乱雲の隙間から光が指す。
「引き分けか・・・」
「僕もビックリしてる。まさか同時に飛び込むなんて」
「女房に尻を蹴られたせいかのぉ?」
「好きな女の子に「勝って」って言われたら、気合い入っちゃうもんね?」
「違いない」
笑い合ってる僕たちのところに、ティラエが飛んできた。
「五龍門の試練・雷の試練・・・突破!!残るは心の試練・・・ただ一つ!!」
「・・・・・・そうか。これで、上洛に王手を・・・おおっと!?」
スラギア君を覆っていた磁場が薄くなっていき、僕たちは最後の気力を振り絞って足場になっている崖に降り立った。
「はっ!ウナトゥとレムアは!?」
「大丈夫。ほらあそこ」
下を見ると、直前で戦線離脱したレムアとウナトゥが、麓でこっちに手を振っている。
それを見たスラギア君は、安堵の表情をして横になった。
「・・・・・・リオル」
「な~に?」
「先のことは・・・すまなかった。お前に傷ついてほしくなく、酷い物言いを・・・」
「・・・・・・僕の方こそ、ごめん。スラギア君の気持ちを分かってあげらなくて、暴言吐いて・・・」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「わしら・・・これからも、親友で、いような」
「うん。生まれて初めてできた男友達、無くしたくないしね」
それを聞いたスラギア君は、とっても嬉しそうに微笑んだ。
それから僕の方に、スッと手を伸ばしてきた。
「久しぶりに疲れた。肩、貸してくれぬか?」
「・・・・・・世話が焼けるねぇ~」
僕はスラギア君に肩を貸して、晴れ間広がる霊峰の崖を、仲良く降りていったのだった。




