7章ー34:天と天の闘い
あ~あ・・・。
結局僕も、スラギア君の手の平で踊らされてたってワケか・・・。
レムアも人が悪いぜ。
まさか読心にマスキングを付けれるほど彼の企みを秘密にできるたぁ、末恐ろしいにも程があるわい!
「うっ・・・!!ゴホッ!!ゴホッ!!」
激しく咳き込んでウナトゥが目を覚ました。
「ウナトゥ!大事ないか?」
「おっ、お前様・・・。これは・・・」
綺麗さっぱり治った身体にウナトゥは困惑している。
どうやら奥さんにも、スラギア君の謀は秘密だったようだ。
「レムアを介してリオルの闇属性をわしと其方に流した。急速な血の流れに心臓が驚いているのだろう」
電気ショックで意識が戻った時に咳き込んじゃうのと同じ原理か。
純度100パーの闇属性エネルギーを氷のツルでレムア経緯で流すって、僕自身がAEDになったみたいだな・・・。
スラギア君と並んで笑顔で頷くレムアに、ウナトゥは呆れた笑みを浮かべる。
「あなた様は、誠に腹芸がお得意で・・・」
「久方ぶりに其方を出し抜けて満足じゃ」
「もうっ・・。次は、負けませんからね?」
まるで心理ゲームを楽しむカップルだな。
こういう夫婦のカタチってのも、見てて尊い物がある・・・。
「私達もやってみますか?」
ひょっこり顔を出してレムアが聞いてきた。
「止めとくわ。勝てそうにないって、これでよく分かったもん」
「あらあら・・・」
束の間のほのぼのタイムを終え、僕たちは嵐の空を飛ぶトニトを見上げた。
「勝負再開・・・ってことでいいんだよなぁ?」
「ああ。そこで問いたい。この試練を乗り越えるには、お主を地に落せば良いのだな?」
「おう。今更なんだよ?」
「で、あれば・・・その逆は許されるのか?」
「あ?逆ってなんだよ?」
スラギア君が「フッ・・・」と笑ったその時、有り得ないことが起きた。
なんと僕たちの身体が・・・浮遊した。
「わしらが空に浮かぶのは、試練の規定に反しておらんのだな?」
「てっ、テメェら・・・!!なんだよそれ!?」
そりゃ僕が聞きたいよ!!
なんで空中浮遊なんかが出来てんだよ!?
「試しにやってみたらこれとは・・・。闇属性とは恐れ入ったわ。自前の雷を活かせて磁石の真似事ができるとは・・・」
磁石・・・そうか磁場!!
闇属性の属性強化を使って、自分の雷属性を高めて僕たちの周りに強力な磁場を作ってるのか!!!
でもこれ・・・中々にシンドイ!!
まるで水の中にいるみたいや・・・!!
僕たちがあたふたしてると、スラギア君が空中を泳ぐみたいに前に並ぶ。
「わしがこの挑戦を仕切ることは続けさせてもらう。そこでリオルよ」
「なっ、なに・・・!?」
「・・・・・・動きになれたら女衆を率いてわしに続け。巻き返すぞ」
「・・・・・・おう!!」
僕からの返事を受け取り、スラギア君は同じ高度にいるトニトを対峙する。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
先手を打ったのはスラギア君。
闇属性を付与した真っ黒な雷ブレスを二発連続で吐く。
トニトは雷と風のバリアを張って身を守ろうとしたが・・・。
「がっ・・・!?」
一発目は防げたが、そのせいでバリアに穴が開いてしまい二発目が顔面に直撃した。
「やはりリオルの闇属性の方が源龍族の物より濃いようだ。嵐の鎧を破るだけでなく・・・」
顔に受けた傷を治癒しようとするトニトだったが、うずくだけでなかなか治ろうとしない。
「再生能力を阻害するらしい」
「面白れぇ・・・!!先に叩き落としてやるよっ!!!」
再生が完全に止まって代わりに腕に闇属性が・・・!!
リソースを攻撃に回したか!!
右手に込めた闇属性でスラギア君を殴りかかるトニト。
だがスラギア君は、イルカみたいに空中を泳いで回避する。
その動き・・・本当に水の中にいるみたいな、洗練されたフォルムだった。
「空の上で水竜に遅れを取るたぁ・・・!!冗談にもふざけ過ぎだろぉ!!!」
「遅れを取るのも当然!!なぜなら・・・!!」
身を翻したスラギア君は、黒雷を付与してのタックルを浴びせた。
「地に足付かぬ空は、水の中と同じぞ」
闇属性を豊富に含んだ雷は、トニトの嵐のバリアを見事にぶっ壊した。
「カワミ流竜術・・・!!」
距離を取ったスラギア君は、身体を絞らせて帯電してる黒い雷をバチバチ鳴らす。
「”水裂石火【渦潮】”!!」
スラギア君の回転突進は、トニトの銀の翼を正確に射貫いてヒビを入れた。
「くぅ・・・!!!くっ!ははははははははははははははははははははは!!!やってくれんじゃねぇかあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
スラギア君からの手痛い一撃が逆にトニトの闘争心の火に油を注ぎ、さっきの窪地を蒸発させた雷ビームとともに、頭上に大量の電気を帯びた竜巻を落とした。
膨大な属性エネルギーで一気に仕留めるつもりか!?
これじゃいくら闇属性を多く含むスラギア君の雷属性でも防ぎ切れるか・・・!!
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「耐えやがったか!」
攻撃を止めたトニトの前には、前と上からの攻撃でボロボロになりながらも浮かんでいるスラギア君がいた。
「やはり闇属性のおかげで傷治ってきてんな?だが十分な隙だぜ!!悪知恵しか詰まってねぇその脳みそ、ブチまけてやんよ!!!」
トニトが傷の再生で動けないスラギア君の間合いに一気に迫ってきて、頭に黒い拳を振り下ろそうとした。
「・・・・・・っ!?」
トニトの一撃は、黒い水の鎧を纏ったウナトゥが間に入って防がれた。
「ちっ!この女今更になって・・・!!」
「背中ががら明きでございまするよ?雷龍公様」
「っ!!!」
振り返ったトニトの翼に、僕とレムアはそれぞれ黒い雷を帯びた爪と、黒い氷でできた刃で斬りかかった。
斬撃を受け上に逃げたトニトをよく見ると、両翼の縁に爪痕と刀傷ができて、そこから流れた血が水と混じって薄くなって滴る。
「やっと慣れたわスラギア君。水中戦の訓練にもなるねコレ」
傷を再生し終えたスラギア君に僕は手を差し述べる。
「もうひと頑張りだ!最後は僕たちで〆ようぜ?親友!!」
「・・・・・・そうじゃな。親友!」
スラギア君は僕が差し伸べた手を、ガシっと力強く握った。




