7章ー33:八重垣の策
「雷の試練は、わしが主導するものとする」
話はレムアがスラギアに雷の試練への協力を打診する時まで遡る。
「そっ、それがスラギア様が、リオル様にご協力して頂く条件・・・で、ございますか?」
「ああ。奴がそれを呑んでくれれば、わしが手を貸すのもやぶさかではない」
「あっ、ありがとうございます!!」
条件付きではあるがスラギアからの支援を取り付けられて、レムアは喜び、彼に対し深く頭を下げた。
「では、その旨、リオル様にお伝えして参ります!」
「待て」
その場を急いで離れようとするレムアをスラギアは呼び止めた。
「わしが協力するにあたり、お主にも頼みがあるのじゃ。レムア」
「わっ、私に・・・で、ございますか?」
「うむ。そして今から話すことは、決してリオルに悟られぬようにな」
レムアは難しい顔を浮かべた。
リオルとレムアは、魂と魂で繋がっている。
互いの思考が読み合える者どうしにとって、悟られないようにというのは、あまりに無理難題すぎた。
「思考を読まれることを案じておるのだろう?付け焼き刃ではあるが、わしから本心を悟られない術とやらを伝授してやろう」
「それは、どのような・・・」
「八重垣を、思い浮かべるのじゃ。心の中にの」
心に幾重にも重ねた垣根を張るイメージを浮かべること。
そうすれば、己の真意を隠すことができると、スラギアはレムアに伝授した。
「何を、なさろうとしているのですか・・・?」
神妙な顔で聞いてくるレムアに、スラギアは悟ったような表情を見せる。
「わしも、お主を同じ覚悟を持とうと、思ってのぅ・・・」
その後スラギアは、レムアに秘密の作戦を伝えた。
それはレムアの意表を大きく突く物であった。
「スラギア様!本気なのですか・・・!?」
「この策が上手くいけば、わしとリオル・・・双方に利がもたらされるであろう。良いか?決してあ奴に、気取られぬでないぞ?奴の不意を突くことが、この策の要であるからな」
レムアは驚きを隠せず、そのままスラギアから本心を覆い隠す術を、限られた時間の中で教わったのだった。
◇◇◇
荒々しい雷鳴を暴風の中、僕はトニトと対峙する。
スラギア君とウナトゥはもう戦えない。
二人を助けるためにも、一刻も早くコイツとケリを着けねぇと!!!
そのためには・・・!!!
「レムアは下がってて。コイツは僕が片づける」
「リオル様・・・」
「ハッ!!抜かしやがるじゃねぇか!!テメェ一頭で俺を倒せると?地べたを走り回るしか能がねぇトカゲに、龍廷貴族の中であの獅子女を除いたら一番に強ぇこの俺に勝てると!?」
「確かにアンタは、これまで相手してきた源龍族の中で一番手強い・・・。だからこっちも、ここまで出してなかった切り札を出させてもらいますよっ!!!」
グッと目を閉じ集中して、僕は自分の闇属性エネルギーを身体の中心で練り上げる。
タイムアタックで勝負を着けるためには・・・『真・超帯闇形態』を発動するしかない!!!
どんな反動が来るか分かったモンじゃないが、ここで脱落者を出すワケにはいかない!!!
「っ!!!テメェ・・・!!なんだその闇属性の量!!この圧倒的力の波動・・・まるで・・・!!!」
ぐっ・・・!!!
背中が・・・!!!
筋肉がブチブチ裂けてるみたいだ・・・!!!
だけど・・・こんなの気にしてられっか!!!
仲間を死なせるくらいなら・・・!!!
僕なんかどうなったっていいわぁ!!!
「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
激痛を取っ払うために僕は腹の底から叫んだ。
「・・・・・・この時を待ってました!!」
身体の奥で闇属性が爆発する感覚がしたその瞬間、レムアが僕に氷のツルを巻き付けてきた。
「あっ・・・!?」
なんだ?
背中の痛みが引いて、練りに練った闇属性エネルギーが、抜けていく?
パッとレムアの方を見ると、右手から伸ばした氷のツルを僕に巻き付けて、左手から伸ばした同じモノをスラギア君とウナトゥに繋げている。
レムアを伝って、僕の純度100%の闇属性が、倒れてる二人に流れ込んでいる。
「レムア!!これは!?」
「スラギア様の策です!!万が一自分達の命が危うくなれば、リオル様は混じり気なしの闇属性を発動するだろう!!その時を狙って、リオル様が私からデヴォルの闇属性を吸収したことを応用し、私を媒介にリオル様から力を奪えと!!そうすればリオル様の侵食を緩和でき、自分たちの命も助かると!!」
つまりこれは、スラギア君からレムア個人に言い渡された作戦。
だけど僕とレムアとの間にはパスが繋がっている。
隠し通せるはずが・・・。
「心に垣根を作る術をスラギア様から学びました!!こんなことは、これっきりにしたいでございます!!」
・・・・・・八重垣、か。
誰にも知られたくない本当の本心は、何が何でも絶対に隠し通す。
群雄割拠の戦国で成り上がるための鉄則。
どうやらスラギア君の策に引っかかったのは、僕も同じみたいだ・・・。
スラギア君とウナトゥの焦げた身体が癒えていき、スラギア君は角の背びれに真っ黒な雷をバチバチ鳴らしながら起き上がる。
「スラギア君・・・」
「・・・・・・言ったであろう?お前に無茶はさせぬと。わしもレムアと同じく、お前の至る先まで付いてゆく覚悟を持つことにしよう」
してやったりな笑みを浮かべながら、僕の親友は決意を露わにした。




