7章ー32:見えざる三神器
おっ、落としてみろだぁ!?
好きなだけ竜巻と落雷を作れて、しかも闇属性を付与しての必殺パンチまで持ってるドラゴンをか?!
それはまぁ随分と、お優しい|合格ラインなことで!!
無理ゲーにもほどがある試練内容に、すごくはらわたが煮えくり返る。
「リオル様!!私達は・・・!!」
「そんなん・・・決まってんだろっ!!!」
スラギア君に加勢すべく、僕は闇属性をチャージしながら走り出す。
「動くなっ!!」
「っ!!!」
スラギア君!?
「わしが良いと言うまで攻撃するでない」
「何言ってんだ!!全員で協力しないと倒せねぇぞソイツ!!」
「動くなと言っておるっ!!!さもなくば此度の試練はナシだっ!!!」
「っ・・・!!」
何考えてんだよスラギア君・・・。
どう考えても全員で挑んだ方が勝算あんのに・・・。
「オイオイオイ!!試練の最中に仲間割れたぁ余裕だなぁ!!」
トニトの前に並んだ竜巻がスラギア君に襲い掛かる。
スラギア君は踵を返して地面を滑りながら竜巻から逃げる。
「追いましょう!!」
「了解っ!!」
僕とレムアは山の斜面を伝って、スラギア君と彼を追う竜巻を追跡した。
「どうしたどうしたぁ~!!早く逃げないと吸い込まれちまうぜぇ!?」
スラギア君に追いつきそうになると、竜巻の速度が緩まる。
アイツ・・・わざとギリギリのラインを攻めてやがる!!
とんだドS野郎だな!!
だけどスラギア君、このまま逃げ続けて、一体どうしよってんだ?
なんか策でもあんのか?
逃げ回っていたスラギア君は開けた窪地にやってきた。
そこは絶え間なく降りしきる雨のせいで、ちょっとしたダム湖みたいに水が溜まっていた。
増水した窪地にスラギア君が潜って、トニトは竜巻を消した。
「はぁ~ん?水の中で属性が回復するまでの時間稼ぎをしよってか?ならいいこと教えてやろうか。俺に殴られて抑えられた属性を治すには4日はかかるんだぜ?」
「・・・・・・“逃げも兵法の手”という言葉を知らぬとは。わしが闇雲に走ってここまで来たと?」
「そりゃどういうこと・・・がっ!?」
っ!!!
ウナトゥ!!
水たまりからウナトゥがジャンプして、滞空するトニトにぶつかってまた潜った。
「テメェの女か!?見ねぇと思ったらこんなところに・・・ギャッ!?」
今度はスラギア君が水面から顔だけ出して雷ブレスを!!
「っ!!テメェらぁ・・・!!やってくれやがったな!!!」
っ!
そうか!!
スラギア君、わざとこの水の張った窪地にトニトを誘導したのか!!
でも一体、いつここにこんな好立地を見つけ・・・っ!!
「はっ、ははっ!!全く・・・。油断も隙もねぇな」
「リオル様・・・」
「そうだレムア。スラギア君、洞窟を抜けてここに着いた時点で、水竜が有利に動けるこの窪地を見つけてやがったんだ。あそこはここら一帯を見渡せる高台にあったから見つけられたんだろう。ティラエ様から聞き出してた情報から、相手が力任せに挑んでくる手合いで、誘導に乗せられやすいと踏んで、わざと自分に意識を向けさせようとしたんだ。会った時に口上を述べて、僕らに「動くな」と命じたのもそのため・・・。向こうが自分と落とすというのを試練合格の条件にしたのも背中を押した。彼は今、ロクな反撃手段もないまま攻撃され続ける雁字搦め状態。水中は、水竜の戦場だしね」
事前情報、地の利、運。
この3つが揃えば、どんだけ強い相手にも、真っ向から挑むことができる。
言うなら目には見えない、戦いの三種の神器だ。
スラギア君はこれらを手に入れ、妻のウナトゥも夫の考えを読んで、息の合った連携を見せている。
これなら、僕が出る幕は・・・ないな。
「“ガルス流竜術・水面突き”!!」
「“カワミ流竜術・大雷咬み”!!」
ウナトゥが真上にジャンプして、その追い打ちにスラギア君が抑制された雷属性を全ブッパしての噛み付きをした瞬間、トニトの足先が水面に触れた。
よく見ると飛行もフラついてきた!
いける!!!
このままペースを維持し続ければ・・・
「調子に乗んなよゴルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
激昂したトニトの全身が光ったと思ったら、口から極太の雷のビームを吐いた。
次の瞬間、窪地全体がスパークして、蒸発した水とともにスラギア君とウナトゥの巨体が打ち上がって、地面にドシャ!!と落ちた。
すっ・・・
「スラギア君っ!!!ウナトゥ!!!」
僕とレムアは急いで駆け寄ったが、プスプスと煙を出すスラギア君とウナトゥは、ピクリとも動かなかった。
呼吸は浅く、心臓の鼓動も小さい・・・。
感電死しかけてる・・・。
このままじゃ二人とも・・・!!
「次はテメェの番だなぁ。地竜の大将さんよぉ~」
ハッと見上げると、ピシャ!!と光る稲妻を背に、トニトが僕を見下ろしていた。




