7章ー31:銀の嵐
源龍族って治癒能力と属性強化でしか闇属性を使わないはずだろ?
それを攻撃の手段として使ってくるなんて・・・。
「ティラエ殿下。トニト殿下は如何様に闇属性を攻撃に使ってくるのでしょう?」
「殴ってくるのよ。闇属性を込めた拳で、相手を打撃を叩き込む!それがトニトのやり方だ」
シャドウボクシングでティラエは、トニトの闇属性の使い方を教えてくれた。
僕の“剛手打ち【闇籠め】”と同じってワケか・・・。
殴打でダメージを与えつつ、敵の属性を不活性化する・・・。
氷属性持ちのレムアと雷属性持ちのスラギア君じゃ分が悪いかも。
ここは属性持ちじゃないウナトゥか、それとも同じく闇属性持ちの僕か・・・。
「ティラエ様!率直に聞きますが、僕とトニト様の闇属性、どちらが上でしょう・・・」
「わしが先陣を切って挑む。ウナトゥは波を起こし、動きを封じよ」
な!?
ここに来て真逆の指示出し!?
「ちょっ、ちょっと待ってスラギア君っ!!同じく闇属性持ちの僕が一番槍の方がいいでしょ!?」
「此度の試練の指揮はわしが握っておる。それが協力の条件じゃ。忘れたか?」
反論する僕をギロリと睨むスラギア君。
確かにそうだけど・・・。
それだとないじゃんか・・・。
勝ち目・・・。
「次、わしに楯突くようなら、協力はナシじゃ。口の利き方に気をつけよ」
「・・・・・・ちっ!」
まだ始まってもないのに早速険悪ムード。
これで突破できなかったら、ガチでキレるわ・・・。
「喧嘩に水を差して悪いが・・・来たぞ」
「え・・・うわっ!?」
目の前を翼を広げた大きな生物が斜め上に横切ったと思ったら、雷がバリバリ混じった竜巻がこっちに飛んできた。
「散れっ!!」
「えっ!?えっ!?」
「リオル様っ!!」
レムアに手を引かれて、僕たちは一緒に洞窟の前の斜面を転がり落ちた。
「ご無事ですか!?」
「なっ、なんとか・・・」
「おい獅子女ァ!!俺の縄張りに亜竜族を連れてくるなんざぁ~いい度胸してやがるなぁ!?」
粗暴な声がして上を向くと、ヘビみたいに隙間がない銀の鱗に覆われ、頭に渦状に捻じれた角が五本生えた、すごく目つきの悪いドラゴンが、滞空しながらティラエと対峙していた。
あれが雷龍公シュルガ・トニト・・・。
「みなまで言わんでも分かることだろう?それとも一から説明した方がいいか?」
「うるっせぇ!!!」
罵声を飛ばしたトニトは、ティラエに向かって雷まじりの風のブレスを吐いた。
それをティラエは、滞空しながら青い炎のバリアで防いだ。
「行儀のなってない奴め。今一度立場の違いを叩き込もうか?」
獲物を狙うトラみたいな殺意マシマシの眼光を前に、トニトはそっぽを向いて「ああっ!!」とうんざりした声を出した。
監督役に手ェ出すなんて相当な荒くれモンだぞ、あの貴族。
ここまで来ると貴族かすら怪しいがな。
「それで!?俺ァ誰と戦えばいいんだぁ?」
「わしじゃ!!」
反対側の樹々が多い方に逃げたスラギア君が、ウナトゥと一緒にトニトを見上げた。
「水竜だぁ?アタマは地竜って聞いたぜ?」
「この雷の試練にはわしが挑む!!我が名は・・・」
「水トカゲの名前なんざ興味ねぇよ!!」
トニトが雄叫びを上げると、彼から生じた三本の稲妻が真っ直ぐスラギア君に襲い掛かってくる。
「“カワミ流竜術・鳴光篭”」
スラギア君は雷の篭を発生させ、トニトが放った雷撃を相殺する。
「テメェ、雷使いかよ?だったら力比べしようぜ!!」
トニトの周りにティルオやティラエと同じように、風と雷のバリアが・・・!!
「ウナトゥ!!」
「はいっ!!」
小規模な嵐のバリアを纏って突っ込んでくるトニトから、スラギア君はウナトゥを逃がした。
「女を逃がして真正面から受けるたぁ~根性あるトカゲだなぁ!!」
「・・・・・・誰が正面から受けると?」
トニトの滞空突進を受けるギリギリのトコで、スラギア君は地面を滑って背後に回り込んだ。
「”カワミ流竜術・居合尾いなし”!!」
スラギア君オリジナルのカウンター技っ!!
背後に回り込んでの遠心力を活かして、スラギア君はトニトに尻尾を叩きつけようとしたが・・・。
「なっ・・・!!」
スラギア君の尻尾攻撃はトニトの雷と風のバリアに簡単に弾かれた。
「甘ぇよバァ~カ!!」
トニトの右フックをまともに食らったスラギア君は樹々を倒しながら100m近く吹っ飛ばされた。
10m以上はある水竜を、まるで石を投げるみたいに・・・!!
「スラギア君っ!!」
「スラギア様っ!!」
「お前様っ!!」
全員がスラギア君の身を案じていた。
スラギア君は顔の甲殻を砕かれながらも、どうにか立ち上がった。
ホッとしたのも束の間、僕たちは彼の異変に気付く。
最初の技で角と背びれに蓄えた電気が、弱くなった蛍光灯みたいに『パチ・・・パチ・・・』と点滅している。
「なっ・・・!?ふんっ・・・!!」
力を込めて電力を上げようとするスラギア君だったが、角と背びれは点滅しっぱなしで、しかも消えてる間隔も長くなってる。
これって・・・まさか・・・!!!
「どうよ!?俺の闇属性の拳は!?」
トニトの右手が黒い雷で覆われている。
やっぱり!!!
さっきの攻撃で、スラギア君の雷属性が抑制されちまってる!!!
「これは俺が龍皇陛下に直々に教えて戴き、数百年にも及ぶ修行で身に着けた力。だがこれでも、まだまだ陛下の足元に及ばない・・・。下賤な亜竜族がかの偉大な御方に謁見しようなどとおこがましいっ!!!」
薫陶を賜ってる身として是が非でも通すワケにはいかないってか。
チンピラみてぇな性格だが、龍皇への忠誠心は人一倍か・・・。
「と、言いてぇところだが、俺のトコまで行けたのはこの千年でテメェらが初めてだ。どうにも乗らねぇが、試練を出してやるよ」
トニトが言った途端、雷雲から数本のバチバチ稲妻が走る竜巻が伸びてきて、彼の前に並んだ。
「俺を地べたに叩き落としてみやがれっ!!それがテメェらに出す試練の内容だっ!!!」




