7章ー30:激雷の霊峰
雷の試練に挑むメンバーが決まった僕たちは、ティラエの案内の下、氷の試練の洞窟を進む。
メンバーは、前回と同じで4名。
僕、レムア、スラギア君、ウナトゥだ。
ニヴァーリが地面の氷柱を溶かしてくれたおかげで、水竜である彼らも怪我することなく這って進むことができている。
にしても驚いたな・・・。
まさか試練の主導権をスラギア君に一任するという条件が、僕と彼の双方で決まってたとは・・・。
示し合わせてないのに意見の合致が生まれたことを、レムアとウナトゥは仲直りの兆しと思い喜んだ。
が、先頭を歩くスラギア君と、最後尾に控える僕との間には、未だ会話がない。
これで本当に、関係改善に向かってるのだろうか・・・?
「ティラエ殿下」
「なんだ?」
「雷の試練を行なう源龍族について、教えてはもらえんだろうか?」
早速スラギア君、相手の情報について聞き出してきたか。
「お前がそれを聞くか。水竜の大将。てっきり上洛の頭であるリオルが知りたがると思っていたが?」
「・・・・・・次の試練は全て、彼に任せてあります。よっぽどのことがない限り、僕は口出ししませんので」
「・・・・・・そうか。しかし、まろは五龍門の試練の監督者。おいそれと味方の手の内を明かすとでも?」
やはりそう簡単には教えてくれないか・・・。
だってネタバレして対策されたら試練にならないからな。
「左様でございますか。ですが気にかかるのでございます。貴女、何故先程から緊張されているのでしょうか?」
「っ!?」
ティラエの表情が変わった。
「眉間にシワを寄せ、ため息の数も多い・・・。某が考え得るに殿下。雷の試練を行なう貴族の扱いに、さぞかし難儀をされておられるのでは?貴女でさえ、かの者の考えが読めぬ程・・・」
「・・・・・・よく見ているな、スラギア」
「戦、謀略、暗殺・・・。相手の表情を読むことは己の命を守る策を立てるのに不可欠ですからな」
あまり深い関係でもないのに彼女の機微の違いを見抜くなんて・・・。
子どもの頃から策略の中を生き抜いてきて、その過程で身に着けた洞察力は凄まじいな・・・。
「裁定者でも貴女でさえ、どのような一手を投じるか分からぬ相手なのですから?素性と能力に関してお教え頂いてもよろしいのでは?」
観念したティラエは、雷の試練を行なう龍廷貴族について話してくれた。
「名は雷龍公シュルガ・トニト。全身を銀の鱗で覆われた源龍族で、現存する6体の龍廷貴族の中では、まろの次に強い」
龍廷貴族の中で2番目に強い!?
「その気性も輪をかけて凶暴での。荒々しく、我が強く、自分の領域に入る者は誰だろうと全身から放つ雷を帯びた竜巻で焦がし吹き飛ばそうとする。その姿、まさしく暴れる嵐の権化。奴を鎮められる者は・・・龍皇陛下しかおらんだろう」
すごく強い上にめちゃくちゃ凶暴って、どう考えても今までの試験官の中で一番厄介じゃねぇか・・・。
「そうだ。奴の能力について特に気を付けねばならん物がある。それは・・・」
ティラエが言いかけた時、ドカンと激しい落雷の音が、洞窟の反対側より聞こえてきた。
「どうやら着いたようだ」
向こうの方にぽっかりと、ねずみ色に染まる洞窟の出口が見える。
僕たちは一歩ずつ慎重に、氷の洞窟の出口に歩く。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「こりゃ、また・・・エグイくらいの変わり様やな・・・」
ひんやりとした空気に包まれた僕たちが次に浴びたのは、横殴りの激しい雨だった。
洞窟を抜けた先にあったのは、ティラエの言う通り暴風雨が吹き荒れる山岳地帯で、何本もの稲妻を落とす真っ黒な雲に覆われたその場所は、『暴れる龍神の棲み処』と呼ぶのに相応しかった。
もう驚きはしないが、こんだけ環境ぐちゃぐちゃなのに、よく崩壊しないなサンブロドの京都方面は・・・。
「そうだティラエ様。トニト様の特に気を付けなければならない能力って、何でしょうか?」
レムアに聞かれ、ティラエはさっきまで言おうとしたことを改めて伝えた。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「すいません・・・。今、なんと仰いました?」
「聞いてなかったかリオル。トニトは龍廷貴族の中で唯一・・・闇属性を攻撃の手段として使える」




