7章ー26:氷の試練・審判ノ刻
“自分が終わらせる”って、そんな無茶な・・・!!
レムアだって、立って両手の武器を維持するのに精一杯やんか!!
(・・・・・・リオル様)
ニヴァーリを真っ直ぐ見据えながら、レムアは僕に思念を送る。
(私・・・実は、ウソついていました)
嘘?
嘘って?
(リオル様が、どうして私と心を通わすことができたか、その経緯をお話になった時に、私・・・気にしてはいないよう振舞っておりましたが、実は一つだけ、歯がゆく思っていたのです)
歯がゆく?
(どうして私は、闇属性が使えないんだろう・・・って)
え?
(だって、リオル様の仰る通り、私の中に闇属性の芯とやらがあるなら、私にだって使えるはずじゃないですか?私もリオル様と同じように、どんな傷も癒え、どんな毒も受け付けない身体になれたら、もっともっと・・・お役に立つことができるのに・・・)
レムア・・・お前・・・。
(全ての属性を扱えるようになれるというような、贅沢は申しません。ですが、龍廷貴族の方々のように、己の属性を、限界を超えて引き出せれば、今まで目にしたことのない業物を生み出すことが叶いましょう。私はそれを・・・証明したいのです)
・・・・・・・。
・・・・・・・。
“本心は決して悟られるな”か・・・。
お前がそこまで悩んでることを、僕はひとかけらも、読むことができなった。
心を通じ合わせることができるのに・・・。
(だって、心配させたくないではありませんか。あなた様が思い悩んでいると、私まで心苦しくなります。ゆえに必死に、押し殺しましたっ!)
けっ!
やってくれんじゃねぇか・・・。
・・・・・・心臓に意識を集中させろ。
魂の奥底にある力の芯を、はっきり思い浮かべて、それから溢れてる属性の波動を、身体全体に流すことを想像するんだ。
こんなことしか助言できないけど、大丈夫?
「・・・・・・ありがとうございます。それで十分です」
心で念じた僕のアドバイスに、口頭で返事をすると、レムアは両腕の武器をパージさせた。
「得物を手放すとは・・・どういうおつもりで?」
「ニヴァーリ様。私の中には・・・闇属性の芯とも呼べるものが存在します。それにより、リオル様と私の間には魂の繋がりがあります。これは私が・・・リオル様のお命を救った際に頂いた賜り物。ならば私は、その真価を発芽させなければなりません」
「つまりあなたも、夫と同じく、闇属性が使えると?」
「いえ。ですがあなたへの最後の一手として、この力を使わなければなりません。それを、愛の奇跡・・・というのではありませんか?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「ええ。ええ!!ええ!!そうですわ!!伴侶との魂の繋がりによって、本来使えないはずの属性が使える・・・。これを愛と・・・!!奇跡と言わず何と言えましょう!!」
恍惚に満ちた表情をしながら、ニヴァーリは尻尾の氷のレイピアを構える。
「最終局面です。見せてごらんなさい。あなたの愛の奇跡を」
レムアも両腕をクロスさせた、独特の居合の構えをする。
僕、ティアス、ギガレクスは、対峙する二人を固唾を飲んで見守る。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
両者、沈黙の末、同時に踏み込み、ニヴァーリのレイピアの刺突がレムアの喉元を突いた。
しかしレムアは止まろうとせず、両腕に帯びた氷刃をニヴァーリの角に叩き込み、その衝撃は周囲の凍え切った空気を吹き飛ばした。
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「れっ、レムア・・・!!!」
ニヴァーリに突かれた喉の傷が、ゆっくり塞がっていく。
そして、両腕に生成された氷刃は、紺色に輝き、黒い冷気を放っていた。
「“トダン流竜術・薙ぎ双閃【闇吹雪】”」
技名を言い終わり、レムアの闇属性の氷刃は、役目を終えて砕け散り、黒いダイヤモンドダストとなって霧散した。
「これが・・・武竜の愛♡♡♡その結実による・・・奇跡♡♡♡」
角への直接攻撃が効いたのか、ニヴァーリの氷の鎧と尻尾の氷のレイピアが崩れ落ち、彼女はその場にへたり込んだ。
その時の表情を表すなら・・・尊死としか言い様がない。
「ニヴァーリめ。完全に骨抜きにされおって」
「はぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・♡♡♡」
なんつ~声出しながら胸押さえてんねん。
聞いてるこっちまで恥ずかしいわ・・・。
「しょうがない女め。でもこれで、亜竜族の恋の物語を書く気になるだろう」
吹雪が止んで、ちらちらと粉雪が降る洞窟で、ティラエは翼を広げて飛んだ。
「リオル、レムア、ギガレクス、ティアス!!蕩けてしまったこ奴に代わり、五龍門の試練が裁定者、火龍姫ニイズ・ティラエが、貴様らの氷の試練突破を宣言する!!」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
まだ立てない僕に向かって、レムアはニコッ!と誇らしい笑顔を見せた。
こうして氷の試練は、レムアの闇属性の力の発芽を以って、僕たちの合格に終わったのだった。




