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7章ー25:四面恋歌

 ニヴァーリからのご指名を受けたティアスとギガレクス。


「わっ、妾らも・・・か?」


「他に誰がいましょう?さぁ見せて下さい!!あなた方の愛も!!」


「しっ、しかし・・・。妾とギガレクス(これ)は、内縁関係。夫婦(めおと)の契りも立てとらんのだぞ・・・」


「しかし熱き愛ほとばしる戦いはしたのでしょう?」


 上目遣いで聞いてくるニヴァーリ。


「あるぜあるぜ!!二人で力を合わせて手応えのある敵の武将を倒したぜ!!!」


「ちょっ・・・!!///」


 オニガナシュの戦いでゼクライと戦った時の話を持ちだしたギガレクスにティアスは慌てた。


「やはりあるじゃないですか。ああ・・・///夫婦の愛も良きですが、未だ恋仲どうしのままの男女の、熟れた苺の如き甘酸っぱい関係もまた・・・///」


「うっ・・・!うぬぬ・・・」


 若干引き気味なティアスの肩にポンと手を置いた。


「観念しましょうティアス様。ニヴァーリ様は、あなた以上の、恋愛脳です」


「しっ、しかし・・・こ奴とは、オニガナシュの地でしか共闘したことがない。息を合わせられるかどうか・・・」


「お背中は私達がお守りします。姫様はギガレクスの手綱を握っていればそれで」


「そっ、そうか・・・?」


 心配そうなティアスの横で、ギガレクスは遊ぶのを待っているハスキーみたいに尻尾を振る。


「オレ様が先陣を切るっ!!ティアスは後ろで、オレ様のカッコイイところを見てったらいいのっ!!」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「ヘマをしたら尾でその鳥頭をカチ割るからなっ!!」


「へへっ!!こりゃ~身が引き締まるぜ!!」


 二人が乗り気になって、ニヴァーリはニタァと笑った。


「決まりですね。では・・・来なさい」


「・・・・・・ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 ギガレクスは嬉しそうに咆哮を上げながらニヴァーリに突っ込んでいった。


「“レクス流竜術・跳び爪”!!」


 爪を剥き出しにして飛び掛かるギガレクス。


 ニヴァーリはそれを、尾のレイピアで正面から突こうとする。


 と、その時、ニヴァーリの足元からティアスが這い出てきて、源龍族(ドラゴン)の巨体を持ち上げる。


「がはっ・・・!!」


 ティアスの角でホールドされたニヴァーリはギガレクスに盛大にはね飛ばされた。


「たわけ!!本当に無策で突っ込むバカがおるかっ!!」


「いや~悪ぃ!!つい気持ちブチ上がっちまって!」


「“家督を継ぐ者冷静さも大事”と父上に教わっただろう!?」


「お二人さんイチャコラはその辺で!!」


 ぶっ飛ばされたニヴァーリが滞空しながら地面に向かってブリザードを吐き、こっちに向かって大量の氷柱が生えてくる。


「カァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ・・・!!!“爆咆”!!!」


 ギガレクスの代名詞の技が炸裂し、こっちに向かって生えてきた氷柱が超音波で全部粉々になっていく。


「すごい声量ですね!!」


「えへへ!!ありがとよ!!」


 ギガレクスがニヴァーリにお礼を言った瞬間、また気付かぬ内に地面に潜っていたティアスが、滞空するニヴァーリ目がけて飛び出した。


「堕ちろっ!!!」


 ティアスの飛び出し攻撃が命中して、ニヴァーリが氷柱がビッシリ生える地面に墜落した。


「良い猛襲ですが、あまりそそりませんね」


「そうか!?ならば、これはどうじゃ!?」


 ティアスはハンマー状の尻尾を大きく上げて、地面に向かって叩きつけた。


「“ミーノ流竜術・大岩打ち”!!」


 巨大な氷塊が降ってくるのを、ニヴァーリは涼しい顔をして眺めている。


 再び滞空して逃げれるからだ。


「ギガレクス!!ブチ飛ばせ!!!」


「あいよティアス!!!ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・!!!“強爆咆”!!!!」


 ギガレクスが氷塊に向かって一際大きな“爆咆”を飛ばすと、細かい氷弾になってニヴァーリに降り注ぐ。


「くっ・・・!!うっ・・・!!」


 大量に降ってくる(ひょう)が、ニヴァーリの身体を打ち付ける。


 だけどそれは・・・目くらましも兼ねていた。


「“ミーノ流竜術・(たけ)突き”!!!」


 氷弾を物ともしないティアスの突進にニヴァーリは轢かれ、氷の壁に固定された。


「咄嗟の合技・・・。これが初めてですか?」


「だったらなんじゃ!?」


「粗暴に扱ってるように見えて男を信頼し、彼もあなたの息にしっかり合わせる・・・。これがあなた達の、愛の形・・・なのですね♡♡♡」


 恍惚な表情を浮かべつつ、ニヴァーリはティアスの頭を掴んで、固定してる角を外した。


 そして、ゼロ距離からブリザードを吐こうとする。


「姫様っ!!!」


 レムアがティアスを突き飛ばし、ギリギリ回避できた。


「僕たちを忘れられては困りますなぁ!!!」


 百竜丸で斬りかかった僕の一太刀を、ニヴァーリは尾で止めた。


 レムアがその隙を突いて、横からニヴァーリにモーニングスターを振り下ろす。


「あははっ!!」


 ニヴァーリは笑って僕をレムアの方へ投げる。


「ぐっ!!」

「がっ!!」


「兄貴!!姉御!!オラァ!!!」


 ギガレクスの強裂な引っ掻き攻撃がニヴァーリの顔にクリーンヒットして、三列の深い爪痕が残る。


「がはっ・・・!!!」


 ニヴァーリの尾の氷のレイピアが、ギガレクスの胴体を貫く。


「ぐっ・・・!!グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 痛みを堪えたギガレクスの“爆咆”によって、ニヴァーリの氷の鎧がバラバラになって剥がれる。


 ニヴァーリはそれに耐えて、ギガレクスを尾で刺したまま投げ飛ばした。


「妾の男に何をするっ!!!」


 激昂して向かってきたティアスを右前脚で殴って、ギガレクスが倒れてる壁に叩きつけるニヴァーリ。


「はぁ・・・!!はぁ・・・!!」


「ふぅ・・・!!ふぅ・・・!!」


「ぐっ・・・!!いってぇ・・・!!」


「うぐぅ・・・!!くそっ・・・!!」


 4VS1でこっちが有利なのに、ニヴァーリは僕たちの体力を着実に削いでいた。


 それでも倒れようとはせず、僕とレムア、ティアスとギガレクスは気力を振り絞ってニヴァーリに一斉に向かっていった。


 溜めモーションに入ったニヴァーリが足元にブリザードを吐いたと思ったら、彼女を取り囲むように太くて大きな氷の柱が幾つも出現し、僕たちはそれに吹き飛ばされた。


「っ・・・!!!はあああああああああああああああああああああああ・・・!!!妻を守り!夫を守り!友を守り!夫婦の契りを立てた者のために決死の一手を打ち!恋仲を信じて初戦で合技を決める!わたくしの・・・!!わたくしの求めていた新たな恋の刺激がここに・・・♡♡♡もっと激しく・・・!!もっと昂らせろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 ニヴァーリが歓喜の声を上げた途端、彼女の角が光って、剥がされた氷の鎧は修復し、無風帯となった四方八方にボコボコと氷塊が出てきて、薄暗くなるほどに空気が青く染まった。


 尊さに我を忘れかけてる・・・。


 氷の試練も、あと少しで終わるか。


 だけど・・・。


「ううっ・・・!!ぐっ・・・!!」


「ぶふっ・・・!!があ・・・」


 ティアスは高体温を保つのに精一杯で伸びたまま。


 ギガレクスも腹を刺されたせいか、吐血して立てない。


 僕も読心と闇属性を使いすぎたせいで、背中に激痛が走って、動けない・・・。


 あとちょっと・・・あとちょっとなのに・・・!!


「はああ!!はぁ・・・!!はぁ・・・!!」


 氷の瓦礫を蹴ってどかし、レムアが息が絶え絶えになりながら立ち上がった。


「れっ、レムア・・・!!」


「リオル様。もうよい・・・もうよいのです。この氷の試練・・・口火を切ったのは私です。私が彼女とケリを着け、この試練を終わらせます!」

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