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7章ー18:水は万物に成りけり

「くっ!これは・・・!!」


「さすがに・・・無理・・・!!」


 周囲に現れた水のトゲ弾を前に、ミツタネさんとカダチはビビりまくる。


 そんな二人にお構いなしに、ダインの水の砲弾は目標を定めて一斉に降り注いだ。


「ちょちょちょちょちょ・・・!!!」


「ちぃ・・・!!」


 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド・・・!!!と集中砲火してくる水のトゲ砲弾から必死に逃げるミツタネさんとカダチ。


 それを見た僕は気付いた。


 ダイン・・・!!


 でたらめに撃ってるように見せかけて、二人をゴールから確実に遠ざけてやがる!!!


 大胆さと繊細さのバランスが絶妙だ。


 だが・・・二人に目が行って隙が大ありだぜっ!?


「“ヒノモト流竜術・渦跳・・・っ?!」


 攻撃しようとした途端、何もないところから雨粒が出てきて僕に降り注いだ。


 いや雨粒なんて生易しいモンじゃねぇ。


 降ってきたトコに銃の弾痕みたいな穴が、大量に空いてる。


 避けんのがあとちょっと遅れてたら、身体中に風穴が開いてた・・・。


「言ったであろう。この庭は奴の武器庫。しかもダインの、属性を操る腕前は龍廷貴族で屈指。うかつに攻撃せん方が良い」


 ご忠告どうもティラエ!


 二人に目が行ってんのに正確に狙ってきやがったのを見るに、ダインの感覚は凄まじく研ぎ澄まされてることが分かったよ!!


 改めて上を見ると、ミツタネさんとカダチの姿がない。


 身を守るために陰に隠れたか。


 これで一安心・・・とはならなかった。


 ダインは(ぬめ)り気のある翼を広げ、ゆっくりと羽ばたいていった。


 彼の周囲に、また水でできた渦が現れた。


 それらはドリルのように回転しだして、二人が居なくなった付近を削る。


「なっ・・・!?」


「ウソぉ・・・!?」


「水は、万物に成りえる」


 ダインはそう宣言し、あぶり出されて驚いている二人の前に巨大な水玉を置いて、照準を定めたそれはウォーターカッターに変化した。


「あわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ・・・!!!」


「ふぅぬぅ・・・!!!」


 逃げ惑うミツタネさんとカダチを、しつこく追撃するウォーターカッター。


 それから逃げている内に、カダチとミツタネさんは同じ崖に飛び移って、再び陰に隠れた。


「無駄だ。すぐにいぶり出す」


 ダインは滞空しながらヒゲを小刻みに震わせて、今度は水ドリルを十本ほど二人が潜んでいるであろう所にけしかけた。


 しかし今度は、かなり奥の方に逃げ込んだらしく中々出てこなかった。


「リオル様どうしましょう!?このままじゃカダチが・・・!!!」


 慌てふためくレムア。


 どうにかしなきゃいけないのは僕だって分かってるっ!!!


 だけど相手は上空にいるし、届いたとしても迎撃される。


 とても打つ手なんか・・・!!


「スラギア様っ!何か良い手はないのですか!?ミツタネ殿がやられて・・・!!」


 すぐ近くでウナトゥがスラギア君にアイディアを乞うていた。


 だけどスラギア君は、僕と違って、冷静にこう言った。


「・・・・・・あ奴を信じよう」


「スラギア様・・・!?」


「窮地なのは疑いようのない事実・・・。じゃがミツタネとて、水面番衆筆頭にして、幾度の修羅場をくぐり抜けてきた忍竜。死地において活路を見出す力は、わしより強い。ならば今は、それに託すしかない」


「スラギア様・・・」


 ・・・・・・何だよそれ!?


 要は「あいつなら大丈夫だから丸投げしよう」ってか!!


 冷たい奴やな!!


 ホント・・・。


 ・・・・・・・。


「苛立っておいでですね。()()()()()()()()()()()()と、心の奥でお認めになりつつあることに」


 レムアに本音を覗かれた僕は、何も言い返せなかった・・・。





 ◇◇◇





「あ~くそっ!!どうすりゃいいんだよ!?これ!!」


 ダインの超常的な水属性を目の当たりにし、奥に隠れるカダチは完全に手詰まりだった。


「状況は芳しくない。だが私達には、まだ()()が残っている」


「ツキだぁ~?こんなドツボの状況で!?」


()()()()()()()()だ」


 ミツタネのそのセリフを聞いて、カダチはハッとした。


 忍びが戦う上で重視すべきもの、それは敵の技量を測り、一手一手を見逃さないこと。


 言ってしまえば彼らは、肉弾戦の中で情報戦を行なっているのだ。


 敵の手の内を知れば知るほど、対処法と打開策が考えやすくなる。


 必死なあまり忍竜としての戦い方を失念してしまったことを、カダチは恥ずかしく思った。


「あの龍の水を操る力の源は、おそらくあのヒゲだ。水による攻撃を行なう最中、しきりに震わせていたからな」


「じゃあヒゲを切ればどうにかなるってこと?」


「いや。切り落としたとしても闇属性ですぐに癒えてしまう。向こうがヒゲ以外で水を操ることも視野に入れなければ」


「そんじゃどうすんのさ?」


 ミツタネは暫し考え、「フッ・・・」と静かに笑った。


「・・・・・・大博打を打つことになるが、それでもいいか?」


「なんか思いついたのか!?」


「ーーーーーーー。」


 ミツタネは自分の策をカダチに伝えると、彼女は「なっ・・・!?」と思わず声を出した。


「ちょっ、ちょっと・・・!!それじゃあアンタが・・・!!!」


「こちらは両者ともども手の内を晒していない。そして私とお前の竜忍法・・・。これが今考え得る、逆転の一手だ」


「でっ、でも・・・!!」


 躊躇するカダチに、ミツタネは覚悟の決まった厳しい目を向ける。


「隣で同胞が死しても構わず戦う。忍竜としての本懐を思い出せ」


 ・・・・・・・。


 ・・・・・・・。


「いいよ、乗った。おいらのためにその命、上手く使ってね?」


「決まりだな」


 冷徹ながらも意志の強い眼差しをするカダチに、ミツタネは拳を突き出し、カダチはそれに、コツンと己の拳をぶつけた。

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