7章ー15:友情却って絶交に
は・・・?
え・・・?
あ?
「スラギア君、愚策ってどういうこと?」
カチンときて睨みつける僕に、スラギア君は目を合わせようとしなかった。
「リオルよ。お主の策には致命的な穴がある。それを見ようとせぬとは・・・呆れたものよ」
「穴?穴ってなんだよ?」
「先の試練で、お主はアンドラに闇属性を与え、それにより心を読むことができた。じゃが気付いておらんのか?」
そう言った後、スラギア君はさっきとは真逆に、僕の目を真剣に見てきた。
「お主・・・ずっと苦しそうであったぞ?」
「・・・・・・あ」
ハッと思い出した僕を見て、スラギア君は「フンッ!」とお怒りの鼻息を漏らす。
そうだ。
レムアとの読心を交わす中で、背中の痛みは避けられない。
他のメンバーに闇属性を与えて、パスを繋ぐということは、その分、僕自身にかかる苦痛が増すということ・・・。
分かりやすく言えば、タコ足配線と同じ状態になるということだ。
スラギア君は、僕の身体を気遣って、この作戦を反対してくれたんだ。
僕はさっきまでの苛立ちを恥じて、彼の優しさにジーンとした。
ジーンとしたんだけど・・・。
「・・・・・・ありがとうスラギア君。心配してくれて・・・。でも、大丈夫。僕の身体のことは、僕が一番よく分かってるからっ」
あっけらかんとしながらそう言うと、スラギア君は怒った顔で僕を壁際まで追いやった。
「己が一番分かっておるだと!?片腹痛いわっ!!痛みだけではない!!背中の痣が、出立の頃より更に濃くなっておるではないかっ!!これ以上闇属性を使うと、その身に何が起こるか、本気で考えておるのか!?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「じゃっ、じゃあさ・・・なんか代案、あんのかよ?」
言われっぱなしで我慢できなくなった僕は、どもりながらスラギア君に反論した。
「なっ、なんじゃと!?」
「僕の力でみんなを強くしないで、龍京に着ける、他の良い案があんのかって聞いてんだよ。スラギア君、頭良いんだろ?だったらこの場で、言ってみろよ」
「・・・・・・引き返すのじゃ」
「・・・・・・あ!?」
「上洛を諦め、西国を牽制する案を皆で考えるのじゃ。龍廷を味方に付けんでも、天下は獲れるじゃろう」
「じゃあ何か?スラギア君は、僕とアンドラで勝ち取った火の試練の合格をドブに捨てて、みんなのところにトンボ帰りしろってことか!?」
「その方が、お主とここにいる者どものためになるであろう」
僕はスラギア君の顔にピタッと自分の顔を付けて凄んだ。
「い・や・だ・ねっ!!!西を支配するマハリをリードするためには、京に上って龍皇を味方に付けるのが最善なんだっ!!奴らがしようとした上洛をこっちが先にやって、意趣返ししてやれば、慧正寺の戦いで死んだ者達も浮かばれるやろ!?」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「天下竜の器ではないな」
「・・・・・・お前っ!!!今なんつったコラァ!?」
「復讐心に取り憑かれ、己が命を粗末にする者に、天下を獲ることなんぞできまいてっ!!!此度のことで、貴様の底が知れたわっ!」
「言いたい放題・・・言いやがってクソがぁ!!!」
僕はスラギア君に馬乗りになって、首をガブガブ噛んだ。
スラギア君も負けじと、雷を帯びた角を振って殴ってくる。
「リオル様お止め下さいっ!!」
「お前様どうかお鎮まりをっ!!」
ゴロゴロ転がりながら喧嘩する僕とスラギア君を、それぞれの妻であるレムアとウナトゥが止めた。
「今は皆で団結して事に当たらねばならんという時に・・・!!!喧嘩しとる場合かっ!!!」
間に入ったティアスが一喝して、僕とスラギア君は荒い息を吐きながら睨み合う。
「お前のツバメバチがおらねば引き返すこともできんし、ここは付いてゆくとしようっ!!ただし・・・下らぬ策にわしを巻き込むなっ!!!」
「こっちから願い下げだわボケっ!!金魚のフンみたく引っ付いてろっ!!!同じ水中に棲んでる生き物だし奇遇じゃね!?」
僕の煽りにスラギア君は一瞥も返さず、離れたところにドカッと座り込んだ。
もう作戦会議なんかする気分じゃなくなっちまったわ!
なんやねんアイツ・・・。
そりゃこっちの負担が増すのは正直言ってイヤだよ?
だからって我が身可愛さでここで逃げたくないよ。
だって・・・。
「元の世界で散々逃げてきたんやもん・・・」
こうして僕とスラギア君は、上洛終盤まで絶交状態に突入するのだった。




