7章ー14:愛の御業の正体
「ここだ。ようこそ我が家へ」
「おっ!ほぉ~・・・!!」
ティラエに案内されたニイズ家の屋敷は、火山の反対側にある輝石の結晶エリア。
大小様々なエメラルドの結晶によって、上にも下にも囲まれたその場所は、一本の草木も生えてない火山地帯に森があると勘違いしてしまうほどに、鮮やかなグリーンに輝いていた。
「雅なところでござりますねっ!」
「そうかティアス?どぎつい緑で目が眩しゅうて敵わんわ。それにせわしないぞ?」
せわしない?
きょとんとしてたら、奥にある洞穴から三頭の翼が生えかけてる子ライオンみたいなのが出てきた。
「お母様~!!」
え?
ティルオとティラエって、お子さんいたの?
三頭の子どもにじゃれつかれたティラエは、目を閉じてすごく柔和な表情をしてる。
まるでメスライオンとその子どもみたいで、ほっこりする。
「お母様。後ろにいるおかしな生き物は?」
「亜竜族だ。前に話した外界の住人である。見たがっておったであろう?」
そっか。
この子達、ここから外に出たことないのか・・・。
「野蛮な見てくれで、ございますね・・・」
「そう?わたくしは可愛いと思いまする。特にあの白くてモフモフした四つ足のが♡」
「もしやあれが武竜ですか!?一度手合わせしたいと思うておりましたっ!!」
絵に描いたような三者三葉ぶりだな。
戦ってみたいと言った男の子の頭を、ティラエは優しく撫でる。
「勇ましさは褒めるが油断ならんぞ~?何せお前達の父様を敗ったのだからな」
冗談っぽく言ったティラエの一言に子ども達はビクッとなった。
「お父様を敗った!?外界の者を全て焼き払ってきたお父様を!?」
「わたくし、肝が冷えもうしておりまする・・・」
「お母様~・・・。怖いよぅ~・・・」
尻に敷かれてるけど、オトンってやつは子どもにとって一番頼りになる存在なんだな。
「はっはっはっ!取って食いはせんよ。あれくらいで慄いていたら、勇ましい源龍族になれんぞ~」
我が子達をかわいがるティラエ。
その愛情の、ほんのひとかけらでもいいから旦那に分けてくれればいいのに・・・。
「まろは奥でこの子らの相手をする。好きに休むが良い」
ティラエが子ども達を連れて、緑結晶の屋敷を後にした。
「・・・・・・どうしよっかな~・・・」
好きにしろとは言ってくれたが、人様の家でのんびりするのは結構抵抗あるぞ?
何しろここは、僕たちにとって敵地のド真ん中みたいなモンだし・・・。
「まっ、まぁ~・・・!!せっかくティラエ様がああ言ってくれたんだから、みんな適当にまったりしようやぁ~!!」
明るく振る舞ってみたものの、あんな死線をくぐり抜け、更に次もあるとなれば、気が休まらないというもの。
みんな緊張な顔をしながら立ちっぱなしだ。
「・・・・・・殿!」
静まり返る中、アンドラに話しかけられてドキっとした。
「先の話の続き、なのですが・・・」
・・・・・・そうだった。
話さなくちゃいけないんだった。
あのことについて。
「・・・・・・みんな。やっぱりちょっと、集まってくんない?今後のために、話さなくちゃいけないことがあるんだ・・・」
みんなを傍に呼んで、僕たちは円になって会議を始めた。
「まず初めに、みんな・・・特に、レムアに話さなくちゃいけないことがある」
「わっ、私にですか?」
「うん。結論から言うとね・・・分かったかもしれないんだ。どうしてレムアと、心の中で会話できるようになったか・・・」
「っ!!本当ですか!?」
食い気味で話を聞こうとするレムアをティアスが抑えた。
「レムア、前に行ったよね?「これは愛の御業だ」って。だけど・・・これはそんな抽象的なものじゃないかもしれないんだ」
「どういうことです?」
「・・・・・・町が焼かれた時、レムアがデヴォルの攻撃から僕を庇った。その時レムアは、デヴォルの吐いた闇属性を全身に浴びた。そのせいで、レムアは死にかけた・・・。だけど今、こうして生きてる。あの時、僕は・・・レムアの手を握った。それが全ての原因だったんだ」
「仰ってる意味が、分からないの、ですが・・・」
僕は思い切って、事の本質を打ち明けることにした。
「多分そのせいで・・・レムアが浴びたデヴォルの闇属性が、僕の中に流れ込んだんだと思う。膨大な闇属性を取り込んだことで、再生力と属性力が爆発的に上昇した。だけど、それだけじゃ、なかったんだ。力が流れ込む際に、レムアの中に、ある種の芯のようなモノが残ってしまったんだと思う。だから僕とレムアは、互いに心を読めるようになったんだと思う」
僕が今使ってる闇属性の素はデヴォルの持っていた物。
本質的には、ほぼ同じ闇属性を持つ者どうしだからこそ、思考を読み合うことができるんだ。
「ばっ、バカなっ!!属性にそのような超常的な作用があるはずがなかろうて!!」
「姫様。リオル様は、先の試練でその可能性を立証しております」
「はい。僕はアンドラに自分の闇属性を流し込んで、火属性と再生力を向上させました。その時・・・アンドラとも、心を通わすことができたのです」
「何じゃと!?」
「ただ、何か条件が違うのか、アンドラの力は普通に戻り、心の声も砂嵐のような雑音に遮られ、聞こえなくなってしまいましたが・・・」
以上が、僕がティルオとの戦いで見出した答えだ。
全てを打ち明けた僕は、レムアの方を見た。
「ガッカリしただろ?全ては愛の御業なんかじゃ、なかった・・・。これは僕とツバメバチとの関係に似たようなモノ・・・。端的に言えば・・・ただの、主従関係だ」
・・・・・・・。
・・・・・・・。
「違います」
「え?」
「これは愛の御業です。レムアは今も、胸を張って言えます」
「きっ、気持ち悪くないの?身体の中に得体の知れないモノがあることが・・・。僕と従属関係になっちゃったことが・・・」
「リオル様。レムアは今まで、あなた様のお力になりたいと何度も思いました。それはあなた様の心が見えるようになる前から。だから胸を張って言えます。これは従属関係ではないと。発端についても、私がリオル様を命を懸けてお守りし、リオル様が、私のお手を握ってくれたおかげで、私は助かり、リオル様も助かったのです。そして、私の、この身に宿った欠片が、私とリオル様・・・二頭の地竜の夫婦の魂を繋ぐ糸を紡いでいる。これを愛と呼ばず、なんと呼ぶのでしょう?否。愛としか・・・呼べないのです」
「レムア・・・」
・・・・・・なんか、バカバカしくなってきたな。
僕・・・何を思い詰めてたんだろ・・・。
「・・・・・・あ~あ!キレイに全否定されちゃったよ。でも、おかげでスッキリした!だよねっ!原理と経緯を思い出したら、愛以外の何モンでもないわっ!!」
勝手に悩んで勝手に立ち直る僕にみんな呆れた様子だったが、レムアだけ嬉しそうにニコニコしてくれた。
「全く・・・。時間の無駄じゃったな。そんなことより、今後の試練について話さぬか?」
「そうですねティアス様。あと四体の龍廷貴族と、どうやって戦いましょうか?」
何か良い案がないか考えていた時に、アンドラが手を挙げた。
「俺のように、殿から闇属性を賜るというのはどうでしょう?さすれば源龍族相手にも五分で立ち回れるかと・・・!!」
確かに。
アンドラの例を見ても、あそこまで属性エネルギーと再生力が上がったんだ。
やってみる価値はあると思う。
「よしっ!じゃあ残りの試練は、僕と、僕から闇属性を貰った奴と連携して挑もう!!そうすればこっちにも十分勝ち目が・・・」
「ならん」
「すっ、スラギア君?」
「かような愚策・・・わしは絶対に呑まんぞ!!」
「・・・・・・は?」




