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7章ー13:五龍門の試練

 祝いに来た?


 五龍門の試練?


 ティルオの妻を名乗る、火龍姫ニイズ・ティラエ。


 彼女には聞きたいことがいっぱいあったが、尋常ならざる気迫のせいで、質問はおろか呼吸すらも忘れそうになる・・・。


「そうだ。忘れておった」


 ドキッとして身構える僕たちを尻目に、ティラエはティルオのところに行った。


「火を止めろ。もう試練は終わったのだぞ?」


「む!?それでは場の盛り上がりが失せるであろう・・・いたっ!?」


「つべこべ言わずさっさとしろっ!!客人を蒸し焼きにする気か!?」


「すっ、すまん・・・」


 シュンとしたティルオが天に向かって咆哮すると、火山の噴火が止まって、マグマの滝が流れなくなった。


「供の周りを飛び交っておる氷のハチを引かせ。もう暑くはない」


 ティラエの言う通り、僕はレムア達の周りに配置したツバメバチの氷状態を解かせた。


「こっ、これは・・・!!」


「洞窟の中から感じていた暑さが、嘘のように・・・!!」


 僕も『超帯闇形態・焔』を解除すると、マグマの池が傍にあるのに全くと言っていいほど暑さを感じず、むしろ日光が遮られているせいで、ちょっとひんやりした。


「暑ければより暑く、寒ければより寒く・・・。源龍族(ドラゴン)は己に見合う気候を()()()()()活性化させる。そしてそれは意のままだ」


 じゃあさっきの噴火とかマグマの滝はティルオがここに居ついたせいで起きてたってこと?


 マジで生きてる災害じゃん・・・。


「ティラエよっ!環境改変は中々に骨が折れるのだぞっ!?お前でもできるのに何故俺が!?」


「骨が折れる所作を妻に投げる気とは、いい度胸しておるな?」


 ティラエの鋭い眼光にティルオはそれ以上の文句は止めた。


 こりゃ~どえらい恐妻家やな・・・。


「・・・・・・龍の奥方様よっ!!僭越ながら、“五龍門の試練”について、お教え願いないでしょうか!?」


 覚悟して口火を切ったアンドラに、ティラエは「待ってました」と言わんばかりの笑みを浮かべた。


「“五龍門の試練”。それ即ち、上洛を目指す武竜が、龍京に至るのに相応しいか試す、神聖な洗礼である」


「せっ、洗礼・・・?」


「龍京に入るためには、火・水・氷・雷・心・・・。この五つを司る龍廷貴族が、各々で決めた試練を突破しなければならない。まろはその試練を見届け、貴族どもが良からぬ暴挙に出ぬようにする役割を、龍皇(りゅうおう)陛下より賜っておる」


 レフェリーみたいな仕事ってことか。


 でもなんで女性であるはずのティラエがそんな大事な役を?


「こう見えても我が妻は、現存する龍廷貴族6体の中で一番強いのだっ!!何より怒らせたらすごく怖・・・いだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだっ!!!」


 ティルオの耳を噛んで上に引っ張るティラエ。


「この千年、まろの愚夫・・・火を司る貴族、火龍公ニイズ・ティルオが破られることはなかった。が・・・お前達はこれに勝利し、次の駒に進める権利を得た。だからつい祝いたくてな」


 耳噛まれて半泣きになってるティルオの前だと、なんか喜びが小さいような・・・。


 って、ちょっと待って!!


「ティラエ殿っ!!とすればわしらは、龍京までの道のりで、あと四体の源龍族(ドラゴン)を相手にせねばならんのか!?」


 僕がしたかった質問をスラギア君が代わりにしてくれて、ティラエはそれに頷いた。


 おいおい・・・。


 嘘やろ・・・。


 たった一体でも難攻不落だったドラゴンの貴族を、あと四体も戦わなくちゃいけないなんて・・・。


 もし次戦うのが、ティルオより強いドラゴンだったら・・・。


 勝利の喜びから、一気に先行きへの不安に突き落とされる僕たち。


「そうしょぼくれるな。試練を進める度に、前の駒に戻ることができる。危うくなれば引き返し、英気を養えば良い」


 え?


 チェックポイント制ってワケ?


「じゃっ、じゃあ・・・試練に挑む龍廷貴族についても・・・?」


「気まぐれで立ち回りを教えてくれるやもしれん」


 少しだが希望が見えてきた。


 ヤバくなったら引き返して、そん時の気分次第で試験官の貴族についても情報が得られる。


 完全初見で挑んだティルオの火の試練に比べたらマシな部類だ。


「次の水の試練に挑む前に、まろ達の住まいで休むと良い。その場を仕切る貴族についても教えてやろう」


「ほっ、本当ですか!?ありがとうございますっ!!」


「でっ、では俺も屋敷に戻って・・・!!」


「お前はならんティルオ。新しく来る者が出るやもしれん。引き続きここに陣取れ」


「そんなご無体なっ!!つい先程手痛い一撃を食ろうたのだぞっ!!帰って休ませてはもらえぬかっ!?」


「たてがみを焦がされただけだろうっ!!男は外で働かぬかぁ!!!」


「ふにゃう~?!」


 うっ!!


 ティルオのニャン玉かじられたっ!!!


 悶絶して声出てへんがなっ!!!


「男衆の顔が優れんな。まだ暑気が残っておったか?」


「いっ、いいえ別にっ!!!」


 男にしか分からんだろな、この痛みは・・・。


 見てるこっちまで股がヒュンってなったわ・・・。


 そういえばライオンも、実はオスよりメスの方が権力が上だって聞いたっけ。


 見た目だけじゃなく、夫婦の力関係も、かかあ天下ってことか・・・。

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