死神の再来
「エリック……どうしてお前がここにいる?」
私が訊ねると、エリックはニンマリと口の端を吊りあげて笑った。
「さぁねぇ……俺がここにいちゃいけないのかい?」
「それは……そうだろう……! お前は革命都市の人間だ……ここは王都クローネ。言うならばお前にとっては敵地だぞ?」
「敵地? ははっ! 面白いこというねぇ、旦那さん! ここが、敵地だって? あのねぇ、俺だってこの国の国民なんだぜ? それなのに、王都に来ちゃいけないっていうのかい?」
「お前は革命を目論んでいるだろう! そんなお前がここにいるってことが問題なんだ!」
そういうとエリックはやれやれという風に肩をすくめた。
「仕方ない……奥さんが悲しむぜ?」
するとエリックは懐からナイフを取り出した。
「なっ……どうする気だ、エリック」
「そりゃあ、旦那さん。今のアンタは俺にとって厄介だ。邪魔なものは取り払う主義でね。悪いが……ここで死んでもらうぜ!」
そういってエリックはそのまま私に突進してきた。
私は咄嗟に逃げようとした。しかし、身体が動かない。
不味い……このままでは……
私は目を閉じた。
ガキンッ!
と、金属と金属がぶつかる音が聞こえた。
「なっ……お、お前……! なんで生きている!?」
……私は、まだ生きている。
不思議に思った。
そして、ゆっくりと目を開ける。
「あ……」
そして、思わず声を漏らしてしまった。
黒い修道服に、真っ白な髪。
私の腰の辺りまでしかない小さな体躯。
「まったく。久しぶりに会っても、相変わらず手のかかるヤツだな。お前は」
振り返った少女の瞳は、まるでゆらめく蒼い炎のように美しかった。
「ちっ……く、くそっ! 覚えてろよ!」
そういってエリックはその場から逃走した。
「お、おい! 待て!」
「やめろ。追うだけ無駄だ。アイツを捕まえたところで何の利益もない」
はっきりそういわれてしまったので、私もエリックを追跡するのは断念した
「おーい! シャルル……あ!」
と、背後からアルドンサの声が聞こえてきた。
「ああ、アルドンサ。すまない。急に飛び出してしまって」
「あ、ああ……え、えっと、シャルル。そこにいるのは……」
アルドンサは目を丸くして私に訊ねる。
「ああ……久しぶりだな。マリアンナ」
思わず優しく微笑んでしまいながら、私は久しぶりに会った小さな黒い死神にそう言った。
「相変わらずだな。私の奴隷」
そして、マリアンナらしい返事に、私は満足したのだった。




