不審な影
「しかし、どうやら私の早とちりだったようだな」
帰りの馬車のアルドンサは満足そうにそう言った。
「シスターモニカは実に聖職者らしい人だった。彼女が裏で都合の良いように国を操っているというのも何かの間違いだろう」
やはりアルドンサはモニカを善人だと信じきっているようだった。
まぁ、アルドンサの性格上、そういう結論になってしまうのは仕方がない。
そこがアルドンサのいいところでもあるのだから。
「シャルル、お前はそう思わなかったのか?」
「え? ああ、いや……そうだな」
私は曖昧に微笑んだ。
最後にモニカが言ったあの言葉。
あれは一体どういう意味なのか……
いや、そもそも私の聞き間違いであった可能性も充分にあるのだけれど。
どうにも嫌な感じだった。その原因が明確でない分、いつもより格段にそれが増して思える。
私はふと、窓の外を見た。
「……ん?」
と、思わず私は目を疑ってしまった。
「ちょ……アルドンサ。ちょっと止めてくれ」
「え? なんだって?」
「馬車を止めるんだ! 早く!」
私の剣幕に圧され、アルドンサは走行中の馬車の扉をあけ、運転手に呼びかける。
程なくして馬車は停止した。私は一目散に扉をあけて外へ飛び出した。
「シャルル!? おい!」
アルドンサの声が背後から聞こえる。
見間違いでなければ、おそらく、ヤツだ。
しかし、なぜヤツがここにいる?
ヤツはここにいるはずがないし、いてはいけない存在のはずなのに……
私はそのままヤツが向かったであろう方向に向かって全力疾走した。
「……あれだ」
ほどなくして私はヤツの後姿を捉えた。
そのまま私は充分に距離をおいて追跡を開始する。
ヤツはまだ私には気付いていないようで、そのまま大通りを歩き、次にそこから少し小さな通りへと入った。
そして、その通りを抜けるとさらに狭い小路へと入る。
私は一瞬躊躇ったが、そのまま追跡を続行した。
狭い小路の先をヤツは歩く。
と、ふいにヤツが足を止めた。
不味い、と思った瞬間には既にヤツはこちらに振り向いていた。
「あれ? どうしてアンタがここにいるんだぁ?」
ニヤニヤと下卑た笑顔を浮かべながらヤツは振り返った。
私は顔を反らさずにヤツの顔を真正面から見据える。
「……エリック……!」
「奇遇だねぇ、旦那さん。また会えて嬉しいよ」
そこに立っていたのは、革命都市で出会ったときと変わらず、ガラの悪そうな顔つきに、陰険そうな目つきの小男、エリック・シュナイダーだった。




