聖女と死神の差
「ほぉ。ここがアルドンサの家か」
マリアンナは目の前に立つ大きな屋敷に目を丸くしてそう言った。
「はっはっは! すごいだろう! さすがの断罪人も、これほどの大きさの家は見たことがなかったか?」
「まぁな。で、私はこの家に入れるのか?」
「何? 当たり前だろう。入れるに決まっている」
自身満々でそういうアルドンサ。
しかし、私も不安だった。
果たして断罪人であるマリアンナが普通に屋敷に入れるのかどうか……
だが、いつのまにか私達は、カルリオン邸の門の前までやってきてしまっていた。
「ただいま、サンチョ、ニコラス」
問の前に立つ衛兵二人にアルドンサは挨拶をする。
「ああ、お嬢様、お帰りなさい」
「シャルル様も、お帰り……ん? え……ちょ、ちょっと」
ニコラスが不審そうな顔をしてマリアンナを見る。
「ん? どうした、ニコラス」
「お、お嬢様……ソイツは、断罪人じゃあ、ありませんか?」
「え? そうだが……それがどうかしたか?」
すると、ニコラスは血相を変えて、いきなり腰元に刺してあった剣を抜き、マリアンナに突きつけた。
「お、おい! ニコラス! 何をする!」
アルドンサが怒鳴るが、ニコラスは震えながらマリアンナを見ている。
「お、お嬢様! こ、コイツらは危険です! お屋敷に入れるわけにはいきません!」
「落ち着けニコラス! そんなことはない! まだ子どもじゃないか!」
「違います! 断罪人は人間じゃないんです! 化物ですよ!」
ニコラスは錯乱気味にそう言った。
私は何も言うことが出来ずただその光景を見ていた。
「ふぅ。やはりな」
と、マリアンナが呟いた。
そして、そのままマリアンナは屋敷に背を向けて歩き出してしまった。
「あ、お、おい! マリアンナ。待て」
私は慌ててマリアンナを引きとめた。
「シャルル。お前はあの屋敷にいろ。夜になったら迎えに行く」
「何? 迎えに来るって……というか、お前、どこへ行くんだ」
「どこでもいいだろ。この街からは出ないから安心しろ」
「お、おい。マリアンナ……なぁ、その……一つ聞いていいか?」
マリアンナは怪訝そうな顔で私を見る。
「なんだ?」
「その……見た目にはお前はシスターだよな? どうしてその……分かるヤツには断罪人と分かってしまうんだ?」
こんなときに聞くべきことではないと思ったが、私は思わず訊ねてしまった。
先ほどまで本物のシスターと一緒にいた分、大して容姿も変わらないマリアンナが、どうして断罪人と見破られてしまうのか疑問だったのである。
マリアンナは私の質問に、どこか呆れた感じを見せた。
「お前、私と長く旅をしてきたのに、気付かなかったのか?」
「……すまん」
「そうか。じゃあ、教えてやる。首飾りだ」
「へ? 首飾り?」
「そうだ。この国の正式なシスターは首元に十字のシンボルをかたどったアクセサリーをしている。だが、断罪人は、修道服は着ていてもアクセサリーは下げていない。だから、シスターと断罪人を見分けるには首元を見ればいい。もっとも、わかるヤツには雰囲気でわかってしまうものだがな」
マリアンナはそれだけ言うと、そのまま再び歩き出した。
「また、後でな」
そういってマリアンナの姿は遠くなってしまった。
「……アクセサリー、か」
私は何気なくそう呟き、あることを思いついたのだった。




