第5話 ゾルティア
翌日早速森に入り、二人は少しビビりながら進む。
山に着くと、魔物が沢山いる。
だが、それはゴブリンたちだ。その肉はあまりおいしくない。
硬くてまずいのだ。
餓死しそうなとき以外は基本たべない様な物だ。
「どうしましょうか」
「無視しよう。こいつらとまともに戦う必要はない」
無駄な殺傷をして体力を減らすわけには行かない。
シドたちは、コブリンたちに気づかれないように、こっそりと山に登る。
だが、その際アナが派手に転んでしまった。
「っきゃ」
その声により、ゴブリンたちの目線がこちらに向く。
(まずい!)
コブリンたちは目の色を変えて、こちらに向かってくる。
しかも増援を呼んだみたいで、さらに、別の魔物達も向ってくる。
(やはりこいつらも、アナが目当てなのか)
シドは本格的にまずいと思った。
これだけの数、今度こそやられるかもしれない。
山に登るのは、危険だったか。そんな事を考えながら敵をとにかく斬っていく。
「どうします?」
「撃退しながら、撤退する。アナ、行けるか?」
「うん!」
そして、シドは剣を変形させ、アナは魔法で魔物を倒していく。
するとその時、上から魔法が振ってくる。その魔法は、上のガーゴイルが放っていた。その魔力により、山が業火に包まれた。
(くそ、ゴブリンたちがいるから、山が燃やされることも無いと思っていた。だが、こいつらにとって必要なのは自分らの命よりもアナの命か。ぐずぐずしていられない)
シドはアナを連れて山を下りようとする。だが、それに待ったをかけたのはアナだ。
「私がやります!」
「どうやって?」
「こうやってですっ!」
そしてアナの手から圧倒的な量の水が放出され、山の火が消される。
本来こんな燃え盛る火を消すには、生半端な水ではいけない。
並の人間ではほぼ不可能だろう。相当の魔力量が必要なのだ。
なのに、アナはその不可能を可能にしてしまった。
やはり自分と一緒に行動している子は、恐ろしい人だと思った。
「ありがとう」
「感謝は後です。今はこの魔物達をを全滅させないと」
そしてガーゴイルにアナが岩を複数個飛ばし倒してから、何とか山の反対側を降り切った。
だが、その瞬間、その山のふもとにいたのは魔族だった。
しかもその姿は異形そのものだ。
少なくとも人には到底見えない。
魔族、それは知能を持った魔物。
人間の敵であり、その力は一体で軍隊1個師団ほどの力を有している。
要するに。化け物だ。
「アマスター様を渡しなさい」
そう淡々と言う魔族。
その身にあふれる魔力はおぞましいものだ。
「まさか、お前は……」
「ご明察です。私は魔王の腹心ゾルティア、以降お見知り置きりください」
その声はおぞましいものだ。さらに恐怖心を押し上げていく。
アナにいたっては「なに……この人」と、シドの背中に隠れている。
そんなアナに対して、勇気づけるようにシドは言う。
「大丈夫。君は僕が守る」
アナを守ること自体が、シドの使命だ。
そしてシドはゾルティアに斬りかかる。シドの剣は障害物をよけるように、ぐにゃりぐにゃと曲がり、ゾルティアの首に向かって伸びる。
しかも凄まじい速度で。
だが、ゾルティアはニヤリと笑い、その剣先をつかみ、そのままシドを地面に叩きつけた。
「ぐはあ」シドは思わず叫ぶ。
「シドさんを傷つけないで!!」
そう言い放つアナの手から巨大な炎の魔法がゾルティアに向かって飛んでいく。
「そんなもの。効きません!」
そう言い放ったゾルティアは、即、魔法を放ち相殺させる。
「この程度の攻撃しかできないとは、災厄と言われたのも過去の話ですか……非常に残念ですね」
そして、すぐさまアナの手をつかみ、ゾルティアはアナを連れ去ろうとした。
「……待て!!」
シドは凄い剣幕でゾルティアに言う。
「待てと言われて待つ馬鹿がいますか?」
ゾルティアはそのまま歩いていく。
だが、シドはすぐさま立ち上がり、剣でゾルティアを斬りに行く。
「単調ですね。私的に言えばあなたは私たちと戦えるレベルには立っていません。大人しく倒れとけば、死ぬこともなかったのに」
「そんなことはもう関係が無い。僕の今の願いはアナを守ることだけだ」
「そうですか。なら、自身の無力さを感じながら死ね!」
そしてゾルティアは、手から炎の球を生み出し、シドの方に投げ込む。
「僕だって、ただの雑魚じゃない!」
シドにより、その炎が真っ二つに斬られる。
「なるほど、なるほど!!!」
ゾルティアは地面を蹴り、手に炎を纏いながら、シドに殴り掛かる。
シドはすぐさま剣でそれを受け止める。
だが、その瞬間、ゾルティアは足でシドの足を蹴り、シドは地を転がる。
「っくそ」
シドは悪態をつく。
すぐさま、ゾルティアは距離を詰め、シドの首をつかむ。
「ですが、つまらない人ですね。くだらない、本当にくだらない」
そう言い、シドの腹をゾルティアの手が貫こうとする。
「馬鹿だな」
シドが悪戯な笑みを浮かべる。
「僕はまだ終わっていない」
そしてシドの剣は血に染まりだし、赤く染まった。
その剣は真っ赤な色をしている。
その剣から感じ取られる威圧感。それは、爆増した。
「あまりこの手は使いたくなかったんだけどな!」
その赤いシドの剣により、シドの首をつかんでいたゾルティアの手が斬り落とされる。
それも一瞬の動きで。
「まだ終わりじゃない。終わりじゃないぞ!!」
そう叫ぶシドの目もまた赤く染まりつつある。
「これは……まさか憑依!?」
「お前は俺が殺してやる!」
シドはゾルティアの方に走り出し、ゾルティアに向かって剣で首を狙う。
その速度は、まるで光のようだ。
ゾルティアはとっさに拳で剣を抑える。
だが、腕の強度が足りなかったのだろうか、腕が切り落とされる。
「っくそ!」
ゾルティアは地面を蹴り、後ろに下がり、腕を魔法で瞬時に回復させる。
だが、その瞬間にもシドはゾルティアの方に向かい、そのすきを逃さない。
「何ですか? その力の変化は」
ゾルティアは叫ぶ。そして、腕から即座に魔法を作り、シドに向けて放つ。
だが、シドはそれをもあっさりと斬り去り、そのままゾルティアの首を斬る。
「ふふふふふ。やりますね。ですがまだ終わりません。また会いましょう、シド クラウニィ」
そう言ってゾルティアの首は消滅した。
「終わりだな」
そう呟き、シドはアナの方に近づく。
だが、その瞬間シドは地面に血反吐を吐いた。
体中がひしひしと痛む。無理をした反動だ。
「くそ、もう反動が来たか」
シドはその場に倒れた。




