071
早朝。陽の登りきらない砂浜を走る子供達。
朝食までビーチフラッグでしっかり合宿。
朝食後はお昼まで自由時間。
敷島楓もすっかり馴染んでいる。
その代役でもないのだろうが宮田桃が僕達と一緒にいる。
「お前もアッチの連中に混ざってこいよ。」
「あんなガキ達とじゃ話しが合わない。」
宮田桃は大人になりたいようだ。背伸びをして並びたい。
遊び疲れている僕は1人荷物番をする事にした。
やがて宮田家の父がそのパラソルに入る。
「子供達の相手は疲れる。」
皆元気ですから。
それきり沈黙。
昨日出会って挨拶をしただけな関係。ただでさえ人見知りな僕にどうしろと?
「杏から聞いたよ。」
はい?
「悪気があったわけじゃない。と思う。許してやってくれ。」
許すって、何の話です?
「君は杏に拉致られたんだろ?」
ああそれですか。気にしてません。悪気が無いのは僕も判ってましたから。
「本当に好奇心旺盛で、好奇心猫を殺すって何度も言っているのに。」
Curiosity Killed the Cat.だったかな。そんな諺がどこかの国であったな。
「高校入るまではもう手が付けられなくて。」
父親が頭を抱えると
「ホント。お蔭で妹のアタシまで怖がられて迷惑してるの。」
宮田桃が父親と僕の間にドカッと座る。
「キズナさんは姉ちゃんのどこが好きなんですか?」
桃ちゃんはお姉さん嫌いなの?
「いや好きですよ。でも姉として好きなだけで、アタシが男だったら恋人にはしたくない。」
どうして?
「騒がしいしガサツだし。あとバカだし。」
それって家にいるからじゃないか。
「え?じゃあ学校じや猫被ってるんですか?」
被っているかどうかは知らないけど、普通に女の子だと思うよ。
それに、僕が桃ちゃんのお姉さんを好きなのは
女らしいからとかそんな事じゃなくて、
そうだな、例えば桃ちゃんがピンチになったら自分が何をしていようとすっ飛んできてくるような。
「なんでそんな事。どの事話したんだあいつ。」
あいつって。どんな話しか知らないけど聞いた事なんてないよ。でもそうなんでしょ?
「ええっ?」
「ナニソレ。今の誘導尋問?怖い。アンタ怖いよ。」
「ねえ父ちゃん。この人ヘンだよね。」
「まあ杏を好きだって言うくらいだからな。」
親子揃って何を。
「姉ちゃん帰ってきてさ、食事の支度とか一緒にするじゃん」
「そしたら今日はキズナがどうしたこうしたとかさ」
「正直「うぜぇ」て思って。乙女になり過ぎだろって突っ込んじゃいましたからね。」
「ぶっちゃけ言いますけど、姉ちゃんが惚れるとかどんな奴だよと思って」
「実際見たら何だこのチマイのって。」
ぶっちゃけ過ぎやしないか
「でも昨日、車の中で梢ちゃんと話しているの聞こえちゃって。」
「姉ちゃんが言っていたの全部本当なのが判って」
「あれ全部マジ話しだったんだよ父ちゃん。信じられる?」
「うん。」
「え?信じたの?あんなホラみたいな話し。」
「お前の姉ちゃんは確かにガサツで喧しいが嘘は言わない。まあ少々盛ってはいるかもな。とは思った。」
どんな話しをしたのか気になる。
「あの梢ちゃんがあんなに乙女なのも初めて見たし」
「て言うかあの美少女軍団が揃ってキズナさんにラブラブな理由がまるで判らんっ。」
「だってアタシだって勝てそうじゃん。つか勝てるって。ちょっと意味ワカンナイ。」
「楓ちゃんだってずっとキズナさんの事見ているからね。」
「何だったら抱かれてもいいと思ってるよあの子。」
何を言い出すか。
ダーッと砂埃を巻き上げ宮田杏が走ってきた
「桃っお前また余計な事言ってないだろうなっ。」
「姉ちゃんがキズナさんに夢中だって言ってやっといた。」
「てめぇっあとで」
宮田さんもしかして僕を迎えに来てくれたの?
「ふえっ?」
じゃあ行きましょう。ほら。
「おっおうっ。桃お前はあとで」
大した話しはしてませんよ。行きましょう。
と手を出すと
「あ、うん。」
と素直にその手を取ってくれたのでそのまま皆のいる場所を探して向かった。
「桃のやつ本当は何言ってたんだよ。」
大好きな姉のトモダチとしてふさわしいか確認されてました。
「なんだよそれ。」
宮田さんの事心配していただけです。姉想いの妹。ただそれだけですよ。
だから叱っちゃダメですよ。
「キズナがそう言うなら。」
手を繋いで戻ったものだから皆してそれを責める。
「今度から誰かと並んで歩く時は必ず手を繋ぐのよっ。」
と妙な約束をさせられた。
皆で揃った最初で最後の海水浴は笑顔のまま終わる。
サーラの時と違うのは、皆とはその後も一緒な事。
夏休みはまだ続く。
翌々日には敷島家に招待され
楓ちゃんの作ったオムライスをご馳走になった。
海での事を最初から最後まで両親に語ったのは初めててばないはずだ。
夏休みはまだ続く。




