070
もうすぐ太陽は水平線にぶつかるが、子供達はまだまだにぎやかだ。
波打ち際に立って、太陽が溶ける瞬間を見よう。
あれから1年。
「これか前に言ってた太陽が溶けるっての。」
宮田杏が横に並んだ。
うん。
「何か願い事するの?」
柏木梢。
いやあ昨年願い事したら真逆の事が起きたから。
ずっとこんな日が続くようにと願った翌日にそれは崩れた。
「ハガヤローっ」
叫んだの栄椿。
「キズナの願いを踏みにじりやがって。オラ太陽っかかってこいやーっ。」
「でも太陽にバカヤローはありきたりだなぁ。」
「んじゃ、ドロボーネコーっ。」
「じゃあって何だ。」
皆で笑っていると、子供達も太陽に向かって叫び始めた。
小室両親が面白がって大きな声を出す練習だと言っている。
大会の目標とか、給食残さず食べるぞーとか。
「おおうっさすがに元気だな。」
「青春はどっかいっちゃったけどねー。」
「キズナも何か叫びなよ。」
敷島楓が僕の手を握りながら言った。
叫びたいことなんてないよ。
「それじゃあどうして泣いているの?」
え?いや泣いてないから。
あれ?本当に泣いているのか?
「キズナの兄ちゃんはな、昔の女の事思い出して泣いてるんだよ。」
何を言っている。
陽が溶けて闇が訪れる。
子供達の待ちに待った花火の時間。
宮田杏が、僕の脇にくっついていた敷島楓の手を取り
妹の柚ちゃんを介し、道場通いの子供達の輪に加えた。
(後日道場通いを始めるきっかけになった)
桃ちゃんは道場通わないの?
「通ってますよ。でもアタシ剣道だから。キズナさん空手の方だから顔見ないだけ。」
ああそうか。
「そんな事よりですね。」
うん?
「キズナさん姉の事好きですか?」
うん。
「二股ですか?それとも三股?姉の事はあそび」
「はいはいそーゆーお話はもう少し大きくなってからにしましょうねー」
柏木梢が後ろから抱えて連れ去ってしまった。
「ちょっと梢ちゃん。今大事なっ。」
「ホントよく似た姉妹だよな。」
「似てないっ。」
なんなんだ。
夜が更け、子供達は疲れ切って2階の大部屋で早々に塾胃。
大人達は階下でようやくビールにありつける。
僕達は皆で砂浜を散歩。
あの時にのような静けさはない。
他の宿泊客の声も聞こえて、砂浜にも数組の人影。
何でもない話を続けて、皆が笑っている。
素敵な夜だ。
「あの時もこうやって夜の砂浜歩いたなぁ。」
はい?
「とか考えてたんでしよ。」
柏木梢は僕の考えている事が判るのか。
「まだ忘れられないん?」
忘れる事は多分ないでしょうね。
出会いからお別れまで全てが強烈だった。
吊り橋効果もあったのだろう。
あの子って何か人を魅了する能力みたいのがあって、それにあてられただけ。
「してないよな?」
「うん。あの妹ちゃんキズナには何もしてないよ。」
「してれはもっと簡単に忘れてるわ。」
そうなの?
「あの子の事はサーラつて下の名前で呼んでたわね。」
「桃とか柚とか楓もちゃん付けてるけど名前で呼ぶよね。」
それが何か。
「ワタシ達の事もいい加減名前で呼びなさいよ。」
「そうだそうた。」
達って、皆さん名前で呼ばれたいんですか?
揃って頷く中、宮田杏だけは
「でも無理なら無理に呼ばなくてもいいぞ。」
「何でだっ。ボクは呼ばれたいっ。」
「呼ばれ方なんてどうでもイイってかさ」
「アタシを呼んでくれるお前がいる。それだけで充分かな。」
なっ
「なっなっなんたその名言っ。」
「「アタシを呼んでくれるお前がいる。それだけで充分かな。」じゃねえーっ。」
「ああっキズナがちょっと持って行かれてるっ。」
「そうなの?今の杏発言にキュンときちゃったんか?」
少し
「いやーーーーっ。」
「ボクはイヤだそ。用も無いのに呼んでもらいたいからっ。」
「そうね。アナタ達少しキズナに甘えて「私達怖くないよ」アピールしなさい。」
「何だよそれ。」
「もう充分馴染んでるっつーの。」
「あ、それか。」
それって?
「杏達、ちょっと変わったなーと思ってたけど、そうかキズナがいるからか。」
「でもイチバン乙女化したの絢ちゃんよね。」
「乙女化ってなんだ。」




