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婦人科で――存在しない彼氏にされたことを診てもらいました

電車に乗った日から数日たっても、あそこの皮膚にはヒリヒリした感覚が残っていました。


病院へ行くほどの傷ではないと思います。


それでも私は、自宅から離れた場所にある婦人科を調べました。


男性の先生が診察していることも、あらかじめ確認してあります。


(今日、婦人科の診察台で)

(知らない男の先生に、あそこを見られるんだ)


そう考えるだけで、まだ擦れているところとは別の場所が熱くなりました。


受付を済ませ、待合室で名前を呼ばれるのを待ちます。


診察室には五十歳くらいの男性の先生と、女性の看護師さんがいました。


「今日はどうされましたか」


「あそこが擦れたみたいで、少しヒリヒリするんです。少しきつい下着のせいかもしれません」


先生は短く問診をすると、診察台で確認すると言いました。


診察台の横にある更衣スペースへ入り、カーテンを閉めます。


下着を脱ぎ、スカートを腰までたくし上げました。


挿絵(By みてみん)


更衣スペースのカーテンを開けて、診察台へ腰を下ろします。


看護師さんが私の腰のあたりに診察用のカーテンを引きました。


上半身と下半身が、そこで完全に分けられます。


診察台がゆっくりと上がり、背もたれが倒れました。両脚を支える台が左右へ開いていきます。


膝が高く持ち上げられ、そのまま大きく開かれました。


挿絵(By みてみん)


(ひーん……)

(全部、見られてる)


診察用のカーテンがあるので、私から先生の姿は見えません。


椅子の車輪が動く音だけが、カーテンの向こうから聞こえました。


きっと先生の顔は、私の開いた脚のすぐ近くにあります。


私は白いブラウスをきちんと着ていました。


髪も整えて、流行りのメイクもしています。


カーテンの上だけを見れば、どこにでもいる二十六歳の女の子です。


それなのにカーテンの下では、毛のない下半身に何ひとつ身につけないまま、両脚を大きく広げています。


上品に着飾った上半身と、生まれたままの姿をさらしている下半身。


まるで別の生き物みたいでした。


「少し触りますね」


指が触れた瞬間、身体がびくっと動きました。


先生の指が、大きなひだをそっとつまみます。左右へ分けられ、内側まで確認されました。


(男性の先生に)

(あそこを指で広げられてる)


(普通の可愛い女の子が)

(知らない男の人の顔の前で、こんなところまで見られてる)


恥ずかしさを自分で膨らませるほど、下半身が勝手に反応してしまいます。


「少し湿っているので、拭きますね」


看護師さんの声がしました。


柔らかいもので、内側を一度拭われます。


(ひーん……濡れてるのまで、ばれちゃった)


ブラウスの胸元では、私は何事もなかったように両手を重ねていました。


でもカーテンの下では、男性の先生にあそこを広げられ、女性の看護師さんに体液を拭かれています。


あそこだけでなく、触れられた瞬間の震えも、勝手に濡れていく反応も、二人にすべて観察されていました。


診察用のカーテンが開き、診察台が元の位置へ戻りました。


私は隣の更衣スペースへ入り、下着を身につけます。


再び先生の前の椅子へ座りました。


看護師さんは、先生の少し後ろに立っています。


挿絵(By みてみん)


「全体に擦れて、皮膚が赤くなっています。ただ、そこまで深刻な状態ではありません。塗り薬で治ると思います」


「はい」


先生は画面を見ながら、もう一度尋ねました。


「少しきつい下着ということでしたが、それだけにしては広い範囲が擦れています。強く引っ張られたりしましたか」


「……彼氏に、下着を何度も引っ張られました」


もちろん、そんな彼氏はいません。


電車の中で下着を引いた、誰のものかもわからない手のことを話せないので、作っただけです。


「かなり強くですか」


「はい。何度も……」


先生はそれ以上、表情を変えませんでした。


でも、看護師さんにはもうわかってしまった気がします。


(この女の子は)

(ほんとうは、嫌ではなかったんだ)


(だから何度も引っ張られるままにして)

(傷ができるところまで続けたんだって)


きっと、そう思われています。


「彼氏との行為で、ほかにも傷を作ったことはありますか」


「一か月くらい前に、……お尻の穴が少し切れたことがあります」


「今も痛みますか」


「いいえ。今はもう、何ともありません」


「何をされたときですか」


「おもちゃを、急に入れられて……そのときだと思います」


「急に入れると、入口の皮膚が裂けることがあります。十分に潤滑剤を使って、最初は小さいものから、時間をかけて慣らしてください。痛みがあれば、その時点で中止すること」


先生は、どれも普通の注意事項みたいに説明しました。


「同じような傷で受診される方は、珍しくありませんよ」


「はい……」


(珍しくないんだ)


先生はこれまでにも、お尻におもちゃを入れられて傷を作った女の人を、何人も診てきたのです。


そして私も今、その一人に分類されました。


看護師さんは何も言いません。


(この女の子)

(見た目は普通なのに、彼氏にお尻の穴まで弄ばれてるんだ)

(痛くても、ほんとうは喜んでる変態なんだって)


きっと、そう思われています。


私は看護師さんと目を合わせることができませんでした。


「ほかにはありませんか」


少し迷うふりをしてから、胸のことも話しました。


「乳首を、指でこれ以上ないくらい引っ張られて……最後に、強く噛まれました。痛みが一週間くらい続きました」


先生は確認するように、私の胸元へ一度だけ視線を向けました。看護師さんも、同じようにちらりと見ます。


「そこまで強い刺激は避けてください。皮膚が切れるだけでなく、神経を傷めて、感覚が鈍くなったり、痛みだけが残ったりすることもあります」


「はい、すみません」


思わず、謝ってしまいました。


(ひーん……)

(二十六歳にもなって、こんなことで先生に叱られてる)


可愛いブラウスを着た、ごく普通の女の子が、変態みたいな遊びで身体を傷つけて、男性の先生と看護師さんの前で注意されているのです。


その惨めさに、また身体の奥が熱くなりました。


先生は塗り薬を処方すると、看護師さんに塗り方の説明を任せました。


処置用のベッドへ移り、下着を膝まで下ろします。仰向けになって片脚を立て、その膝を少し外側へ倒しました。


「赤くなっているところへ、薄く伸ばしてください。大きなひだの内側と、小さなひだとの境目です」


手袋をした指が、軟膏をゆっくり伸ばしていきます。


挿絵(By みてみん)


「このあたりまで塗ってください」


指先が、小さなひだの縁をなぞりました。続いて、いちばん敏感なところを覆っている皮膚に触れます。


「ん……」


腰が小さく動いてしまいました。


(ひーん……また反応しちゃった)


看護師さんは何も言いません。塗る場所を教えるため、淡々と触れているだけです。


(この女の人に)

(あそこへ薬を塗られただけで、感じてる)


診察のときとは違う惨めさに、身体の奥がまた熱くなりました。


軟膏を塗り終えると、看護師さんに言われるまま横向きになりました。


手がお尻へ移り、左右を軽く開かれます。


「お尻の穴も、すっかりきれいに治っているみたいですね」


親切で確かめてくれただけでした。


(この人にも)

(おもちゃを入れられて傷ついたお尻の穴まで、見られちゃった)


私は顔を横へ向けたまま、小さく「はい」と答えました。


看護師さんが離れてから、下着をゆっくり引き上げました。


軟膏を塗られたところへ布が触れるだけで、まだ少し意識してしまいます。


更衣スペースの鏡には、白いブラウスをきちんと着て、髪も化粧も崩れていない私がいました。


とても、診察台であそこを広げられていた女には見えません。


男性の先生に、毛のない下半身をすべて見られたこと。


彼氏にお尻の穴へおもちゃを入れられ、乳首まで傷つけられたと話したこと。


看護師さんにあそこへ軟膏を塗られ、最後にはお尻の穴まで開いて確かめられたこと。


そのすべてが、この何事もなかったような顔をしている女の子に起きたのです。


会計を済ませて外へ出ました。


処方された軟膏の袋を、バッグの底へしまいます。


(次は、何をされた女になろう)


そんなことを考えながら、私は何もなかったような顔で駅へ向かいました。


PS


いただいた軟膏を使うと、擦れたところは数日できれいに治りました。


先生に注意されたとおり、あの電車で下着を引かれた力は、一歩間違えればもっと大きな傷を残していたと思います。


でも、診察室で生まれた架空の彼氏だけは、そのあとも私の中から消えませんでした。


思い返すたびに恥ずかしくなります。


私は、存在しない男性にひどいことをされた女になって、自分の欲望を被害の話に変え、二人の医療者に聞かせたのです。

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