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夕暮れの河川敷で――金網の向こうからは、届かないはずでした

タイトルはこちらです。


夕暮れの河川敷で――金網の向こうからは、届かないはずでした


本文は本稿のまま、6枚の画像タグを差し込んでいます。


夜、ベッドの中で露出の動画を見ていました。

何人かのホームレスの男の人の前で、若い女の人が服を脱いでいきます。

最後には、その女の人は裸になっていました。

(え……すごい)

怖いと思いました。

(もし、本当に襲われたらどうするんだろう)

何人ものホームレスのおじさんに、見られている。

それを見ているうちに、少しずつ胸がどきどきしてきました。

動画を閉じたあとも、その感じが残っていました。

(ホームレスか……)

そのとき、思い出しました。

家から少し離れた川沿いに、ホームレスの人たちが集まっている場所があります。

高い金網のフェンスがあって、向こう側からこちらへ来るには、端まで回り込まないといけません。

(あそこなら……)

次の日、自転車で下見に行きました。

フェンスは三メートルくらいあって、上から越えるのは無理そうでした。

もし何かあっても、向こう側からこちらへ来るには、フェンスの端まで回り込まないといけません。

たぶん、こちら側まで来るには五分はかかります。

その間に自転車で逃げればいい。

自転車もすぐ近くに置けます。

ちゃんと確認して、

(大丈夫)

と思いました。

挿絵(By みてみん)

数日後。

私は自転車に乗って家を出ました。

五キロほど走ると、川と、あのフェンスが見えてきました。

向こう側には、ホームレスのおじさんたちが何人かいました。

私はフェンスの近くまで行って、自転車を止めました。

周りには私とホームレスのおじさん以外はだれもいません。

今日は、薄手のパーカーに、短いランニングパンツという恰好です。

その下にはブラもショーツもつけていません。

挿絵(By みてみん)

上を脱いで、下も脱ぎました。

脱いだ服は、そのまま自転車のかごに入れました。

靴だけは履いたままです。

川から吹いてくる風が、直接身体に当たりました。

(ほんとに裸になっちゃった)

私はフェンスに近づきました。

十メートルほどでしょうか。

フェンス越しに、一人のおじさんが私に気づきました。

その人は一瞬、動きを止めました。

それから、目を大きくして、もう一度私を見ました。

「えっ……おい」

少し間を置いて、急に大きな声を出しました。

「おーい! みんな来いよ。いいもん見れるぞ!」

その声で、少し離れたところにいたおじさんたちが、次々にこちらを見ました。

「なんだ?」

「どうした?」

何人かが立ち上がって、フェンスの方へ近づいてきます。

そして私を見ると、みんな一度、足を止めました。

「うわ、本当に裸じゃねえか」

「なんだこの姉ちゃん」

「おー、俺、女の裸なんて十年ぶりくらいだよ」

「俺なんかもっとだよ」

笑い声がしました。

次々に人が寄ってきて、気づけばフェンスのすぐ向こうに、おじさんたちが肩を寄せるように集まっていました。

後ろから覗き込んでいる人もいます。

金網の向こうが、顔でいっぱいになったように見えました。

私は何も言わず、フェンスに片足をかけました。

それだけで、向こうがまた少し騒がしくなりました。

挿絵(By みてみん)

一人のおじさんが、私の身体をじっと見ました。

「お、このお姉ちゃん、下の毛、全然ないぞ。変態か」

その言葉で、みんなの視線が下に集まりました。

「ほんとだ」

「きれいに全部ないな」

別のおじさんが、金網に顔を近づけました。

「毛がないと、あそこってこんな感じに見えるんだな。俺、初めて見たよ」

「お前、そんなところまでじっくり見るなよ」

「見るだろ、こんな近くにいるんだから」

また笑い声がしました。

私は何も言いませんでした。

片足をフェンスにかけたまま、金網のすぐ向こうに並んでいる顔を見ました。

みんな、私を見ています。

身体だけじゃなくて、細かいところまで。

(こんなに見られてる)

胸がまた、どきどきしてきました。

私はフェンスにかけていた足を、少し高い位置に掛け直しました。

身体の向きも、ほんの少し変えました。

さっきより、あそこがさらに開き、内側が見えています。

向こう側が、またざわっとしました。

「おお、もっと見えるぞ」

「自分から足上げたぞ、この姉ちゃん」

金網の向こうで、また笑い声がしました。

私は何も言いませんでした。

しばらく、みんなの視線は下に集まっていました。

そのうち、一人のおじさんが私の胸の方を見ました。

「乳首も小せえな」

別のおじさんも、つられるように目を上げます。

「俺の別れた女より小せえよ。色も薄いな」

(そんなところまで比べられてる)

しかも、知らないおじさんの、昔の女の人と。

そう思うと、また胸がどきどきしました。

挿絵(By みてみん)

「もうちょっと近く来いよ」

誰かが言いました。

一人のおじさんが、金網の隙間から指を伸ばしました。

それを見て、隣のおじさんも手を出しました。

「ほら、ここまでしか届かねえから」

何本もの指が、金網のこちら側へ伸びています。

でも、私までは全然届きません。

私はフェンスにかけていた足を下ろしました。

そして、その指を見ながら、ゆっくり一歩近づきました。

「お、来た来た」

「あとちょっとだぞ」

何本もの指が、いっせいに伸びました。

私は止まりました。

まだ、届きません。

もう半歩だけ近づきました。

「そのまま来いって」

一人のおじさんが、指を目いっぱい伸ばします。

指先が、あと少しのところまで来ました。

私はそこで、少しだけ身体を引きました。

「うわ、逃げた」

笑い声が上がりました。

もう一度、近づきます。

今度は、ほんのわずかです。

乳首と指先の間は、二、三ミリくらいしかありません。

「そうそう、そのまま」

また指が伸びてきました。

触れそうになったところで、私はまた離れました。

「ずるいなあ」

「触らせる気ねえくせに、近づいてくるじゃん」

私は何も言いませんでした。

でも、その言葉を聞くと、胸がまたどきどきしました。

何本もの指先が、金網のこちら側で私を待っています。

私はもう一度、指先の方へ近づきました。

さっきより、ほんの少しだけ。

「来た来た」

「今度こそ届くぞ」

何本もの指が、金網の隙間から伸びました。

私は、一番近くにある指を見ていました。

あと数ミリ。

触れる直前で離れるつもりでした。

でも、そのおじさんが急に指を伸ばしました。

一瞬だけ、乳首に指先が触れました。

「えっ」

思わず身体を引きました。

「おお、触った!」

「マジかよ!」

向こう側が一斉に騒がしくなりました。

触ったおじさんは、自分の指を見ながら笑っています。

「ほんとに触れたぞ」

「ずるいぞ、お前」

「俺も、俺も」

何本もの指が、またこちらへ伸びてきました。

私は二歩ほど後ろへ下がりました。

胸がどきどきしています。

(やだ、ホームレスのおじさんに乳首触られちゃった)

しかも、みんなに見られていました。

触られた瞬間も。

慌てて身体を引いたところも。

向こうでは、まだその話で盛り上がっています。

(私、こんなところで、こんな人たちに見られながら……)

顔が熱くなりました。

恥ずかしいのに、その恥ずかしさが消えてくれません。

むしろ、意識すればするほど、胸の奥が落ち着かなくなりました。

少しして、私はおじさんたちに背中を向けました。

足を肩幅くらいに開き、上半身を前に倒します。

おじさんたちには、私のお尻の穴が丸見えです。

すぐに、向こうから声が飛んできました。

「おいおい、前見たいんだよ、俺らは。ケツの穴なんか興味ねえよ」

「いや、俺は結構好きだぜ」

別のおじさんが言いました。

「見ちゃいけないって感じがあるだろ。背徳感っていうの?」

「お前、頭いいふりすんじゃねえよ」

みんなが笑いました。

「おい、あそこも見えるぞ」

その言葉で、また何人かが身を乗り出しました。

(私、26歳の女の子なのに)

(ホームレスのおじさんたちに、ケツの穴さらしてるって馬鹿にされてる)

そう思うと、また顔が熱くなりました。

私はそのまま、少しだけ後ろへ下がりました。

金網の隙間から、また何本もの指が伸びてきます。

「お、来るぞ」

「今度はそっちか」

私は振り返りませんでした。

指先まで、まだ少し距離があります。

もう少しだけ下がりました。

「あとちょっと」

声がすぐ後ろから聞こえます。

さらに少し。

指先がお尻の穴のすぐ近くまで来ました。

私はそこで止まりました。

私は、そのまま動かずにいました。

「あとちょっとだぞ」

後ろから声がしました。

私はほんの少しだけ、さらに後ろへ下がりました。

「おお、来た来た」

次の瞬間。

一人のおじさんの指先が、お尻の穴に触れました。

つん。

私は動きませんでした。

「お、触れてるぞ」

その声につられるように、別のおじさんたちも指を伸ばしてきました。

今度は、おしりの右側。

つん。

反対側からも、

つん。

何本もの指先が、金網の隙間から届いてきます。

お尻の穴。

おしりの右。

左。

それぞれ別の指が、代わる代わる軽くつついてきました。

「逃げねえぞ、この姉ちゃん」

「ほんとに触らせてるぞ」

向こう側から笑い声がしました。

私は振り返りませんでした。

そのままの姿勢で、じっとしていました。

(やだ)

(ホームレスのおじさんたちに、お尻の穴もおしりも、つんつんされてる)

なんだか、小鳥についばまれているみたいな、くすぐったい不思議な感触です。

顔がどんどん熱くなりました。

しばらくして、私は身体を起こしました。

それから、もう一度おじさんたちの方を向きました。

「お、戻ったぞ」

「今度は前か」

また、何本もの指が金網の隙間から伸びてきました。

私はその指を見ながら、少しずつ近づきました。

さっき乳首に触れられたときと同じです。

今度は、触れられる直前でちゃんと止めようと思いました。

「来い来い」

「もうちょっとだ」

私は両手を使って、乳首を指先の方へ近づけました。

あと数センチ。

おじさんたちが一斉に指を伸ばします。

私は、もう少しだけ近づきました。

(今度は、ぎりぎりで止める)

そう思っていました。

そのときでした。

金網の一部が、錆びて少し大きく歪んでいました。

そこから突然、一人のおじさんの腕が深く伸びてきました。

「えっ」

避ける間もありませんでした。

腕が私の腰に回りました。

ものすごく強い力でした。

そのまま、ぐっと引き寄せられます。

身体が前へ持っていかれて、金網に押しつけられました。

私は慌てて離れようとしました。

でも、腰に回った腕が離れません。

身体を後ろへ引いても、びくともしません。

また金網の方へ引き戻されます。

挿絵(By みてみん)

「おお、捕まえた!」

その声で、向こう側が一気に騒がしくなりました。

「すげえ、本当に捕まえたぞ」

「離すなよ!」

「そのまま押さえとけ!」

さっきまでとは、明らかに雰囲気が違いました。

みんなの目が、急にぎらぎらしています。

もう私を眺めて面白がっているだけではありません。

捕まえた獲物を見るような目でした。

「おい、誰か向こう回れよ」

「行くぞ!」

何人かのおじさんが、フェンスに沿って走り出しました。

「慌てなくていいって。もう捕まえてるんだから」

「逃げられねえよ」

その言葉を聞いた瞬間。

胸はまだどきどきしていました。

でも、さっきまでのどきどきとは全然違いました。

(やばい)

本当にやばい。

走っていった人たちが、こっち側まで来る。

(このままだと捕まる)

(大勢に囲まれる)

頭の中に、嫌な想像が一気に浮かびました。

(犯されちゃう)

(逃げないと)

(今すぐ逃げないと)

このままどこかに連れていかれて、拘束されたら。

そこから先は考えたくありませんでした。

五分。

こっち側まで来るには、五分はかかると思っていました。

でも今は、

(五分しかない)

私は腰に回っている腕を両手でつかみました。

必死に引きはがそうとします。

でも、全然動きません。

(無理)

力ではどうにもならない。

向こうを見ると、何人かのおじさんがもうフェンスの端の方まで走っています。

(早く)

(早くしないと)

私は身体を後ろへ引きました。

それでも、びくともしません。

細い金網が胸やお腹に強く押しつけられて、網目の形に沿って皮膚が痛みました。

身体を動かすたびに、硬い金属が擦れます。

「逃げようとしてるぞ!」

「押さえとけ!」

向こうから声が飛んできます。

私は足元を見ました。

そのとき、思いつきました。

両足を金網にかけました。

「おい、何する気だ」

腕にさらに力が入りました。

私は膝を曲げました。

(これなら)

金網を思い切り蹴りました。

身体を後ろへ引きながら、両足を一気に伸ばします。

でも、一度では外れませんでした。

(もう一回)

今度は、さっきより強く。

私はもう一度、両足で金網を蹴りました。

今度は、身体全体を使って思い切り押しました。

その瞬間。

腰に回っていた腕が、ふっと外れました。

勢いで、私は後ろへ飛びました。

足がもつれて、そのまま倒れそうになります。

でも、止まりませんでした。

すぐに身体を起こして、自転車の方へ走りました。

後ろから、怒鳴るような声が聞こえます。

「逃げたぞ!」

「追え!」

私は振り返りませんでした。

自転車のかごに入れていた服をつかみました。

手が震えて、うまく持てません。

(早く)

(早く)

フェンスを回り込んでいる人たちが、もうこちらへ近づいているかもしれません。

私はとにかく急いで服を着ました。

パーカーをかぶって、ランニングパンツを履きます。

きれいに整える余裕なんてありません。

自転車にまたがって、すぐに漕ぎ出しました。

後ろから、まだ声が聞こえています。

(早く)

もっと速く。

私は何度もペダルを踏み込みました。

しばらく走ってから、やっと一度だけ後ろを振り返りました。

もう誰も見えませんでした。

それでも、しばらく速度を落とせませんでした。

川から離れて、いつもの道に戻ったところで、ようやく少し息を吐きました。

そのまま家まで帰りました。

挿絵(By みてみん)

PS

そのときは、本当に怖かったです。

もう二度と、あんなことはしない。

そう思いました。

でも。

金網に押しつけられて、たくさんの手に触られながら、逃げようとして必死にもがいていた自分。

それを思い出すと、

今も、少しだけ身体が熱くなります。

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