後宮編 第21章:冬至の夜の始まり②
※本章には軽度の恋愛描写があります。
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恋愛描写が苦手な方はご注意くださいませ。
冬至の祭りの夜、一年で最も長い闇が宮殿を支配するその刻限、アズールは離宮の重厚な扉を押し開いた。
背後には、来るべき政敵との全面対決、そして後宮の複雑な派閥の再編という、自身の命運を左右する重圧がのしかかっている。
これほど多忙で、一寸の隙も許されない時期に、一人の女の存在が理性を蝕み、統治者としての自分を内側から崩していく。そんな事態が許されていいはずがなかった。
――手に入れれば、終わる。
アズールは自らをそう納得させていた。この胸を刺す焦燥も、心臓を狂わせる動悸も、欲望という名の飢餓を満たしてしまえば、霧散するはずだと。
それが政略上のただの処理であると自己欺瞞を重ねなければ、この異常な高揚には耐えられなかった。
離宮の中は、死ぬほど静かだった。
イザベルたちによって整えられた寝台の上で、エメがただ静かに座っている。
最高級の絹が彼女の肌を包み、その夜着はシンプルに整えられていた。
アズールは一瞬、過去の記憶が脳裏をよぎる。これまで慣れ親しんできた他の妃たち。
酒を注ぎ、甘い言葉で自分を誘い、その場の作法通りに体を預けてきた女たち。だが、目の前のエメは違う。不機嫌なのか、それともただ退屈しているのか、彼女はアズールを見ても媚びるような笑み一つ浮かべない。ただ、蝋燭の光と月光を浴びて、気高い女神か神獣のようにそこに存在している。アズールが歩みを進め、彼女の前に立った瞬間――
世界から再び、音が消えた。
月の光が彼女の白い肌を青白く浮かび上がらせ、柔らかな髪が肩から滑り落ちる。
その姿を目にした刹那、アズールを支配していた冷徹な計算も、統治者としての矜持も、すべてが焼き尽くされた。呼吸は浅く乱れ、心臓が肋骨を打ち破るほどの鼓動を刻む。自分の指先が痺れ、感覚が遠ざかっていく。これはもう、政略などではない。
ただの、剥き出しの執着だ。
言葉も出ない。
アズールは沈黙のまま、エメの肩を掴んで背後の寝台へと押し倒した。
「アズール……?」
エメの戸惑った声が漏れる。
いつもの、意味のない〝寵愛ごっこ〟の延長だと思ったのか。彼女は諦めにも似た様子で、アズールの広い背中に細い腕を回した。
だが、その背中に触れた瞬間、彼女は息を呑んだはずだ。そこにあるのは、いつもの冷静なファールスの世継ぎの背中ではない。
獲物を捕らえた獣のように緊張し、熱を帯びた、荒々しい気配だったからだ。
アズールは、もどかしさに指先を震わせながら、エメを強く抱きしめた。熱い吐息が彼女の首筋を掠め、夜着の上からでも伝わるほどの熱量が、二人の間を満たしていく。これまでは触れることすら禁忌のように慎重だったのに、今は違う。
かつてミリアムで彼女を誘惑した時の繊細な愛撫など、今の彼には微塵も残っていない。欲望のままに、エメを求める仕草は切実で、支配的で、彼女の余裕を奪っていく。
「……アズール、待って、これ、いつもの……っ」
否定の言葉を遮るように、アズールは顔を寄せた。形のよい唇がエメの唇を捕らえる。
最初は硬かったエメの反応も、アズールの執拗な口づけに、徐々に溶けていく。
唇から、静かに鎖骨へと。
アズールは彼女の首筋に顔を埋め、熱い吐息を零した。エメはわずかに身を硬くし、短い吐息を漏らした。アズールの手がエメの腰を引き寄せ、理性を失いかけた彼の熱が、彼女を包み込んでいく。
一年で最も長い夜は、まだ始まったばかりだった。
はい…こちらもグー太郎先生に読んでもらったら…「これはアウト!」と叱られました。
3回ほど修正してやっとR15の安全圏オッケーとのこと…
「やっぱりまだやばいな!」とのことで……4回目の編集になりました。
はい……まあ、もともとバージョンは手元データにあるので、サイトの趣旨にカスタマイズするのは特に気になりません。
あ……運営より何かきたわけではなく、自主的に修正しております。




