↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/27

23話

 




 領主ダルマの部屋の扉が無遠慮に開け放たれた。


「な、なんだ! ノックもなしか!」


 思わず声を荒げたダルマの前に駆け寄ったのは、私兵長のテントだった。その顔には焦りも緊張もなく、どこか冷めた色が浮かんでいる。


「ダルマ様。テノールの町に増援の警察官が到着したことが確認されました」


「な……なんだと!?」


 ダルマは弾かれたように椅子から飛び上がった。


「昔王都の警察に勤務していたシャモジと言う男がわが軍におります。その者がテノールの町で、昔一緒に働いていた同期を発見しました。毎日のように顔を合わせていたので間違いないと言っています」


「ちくしょう………やはりテノールの警察は敵側に付いたという事か………」


「こんなことは今さら言っても仕方がありませんが、テノールの警察と普段から関係性を築いておくべきでしたな」


「今さら過ぎるわ!」


 吐き捨てた言葉に動じることなくテントは言葉を続けた。


「警視庁から派遣されてきただけあって、モース警部は中々に切れ者のようです。彼は我々が動く前にはすでに準備を済ませていたのです。向こうが動きを見せなかったのは、ただ準備が整うのを待っていたから。動く必要が無かった、そういうことです」


「ぐ、ぐぬぬぬ……っ! どうすればいい!? どうすればいいのだ!」


 頭を抱えて右往左往するダルマに、テントは淡々と言い放った。


「どうにもしようがありません」


「な……なんだと!?」


「増援を決めたという事は裁判で有罪に持ち込めるだけの自信があるという事です。そうでなくては誰かが失敗の責任を取らなくては行けなくなりますからな。さらに、相手はこちらの戦力をある程度、把握したうえで増援の人数を揃えたはずです。つまり、我々に勝ち目はありません」


「ふざけるな!何が勝ち目はありませんだ!私は勝つための策を考えろと言っているのだ!お前がやっているのは負けた原因を探すことだけだ!」


 絞り出した声で睨みつける。


「仰る通りです。しかし無駄とは思いませんね。負けが確定しているという事が分かれば、無駄な血を流さなくて済みます」


「私はまだ諦めんぞ!何かあるはずだ、この苦境を潜り抜ける道が、道が………」


「相手が力づくでこの屋敷に踏み込み、証拠品の捜索、ならびに留置している生徒たちの解放を行えば、それを止める術はありません。悔しいのは分かりますが諦めましょう。我々の負けです」


「この私が負けるだと!? ふざけるな! 私はこの地の領主であり、治安判事だぞ! 国家の犬どもが好き勝手に動くなど、絶対に認めん!」


「言うまでもありませんが、向こうは『国家権力』そのものです。大貴族ならともかく我々程度の戦力しか持たない者が、争いを仕掛けること自体が愚かな選択です」


「私が戦えと命じれば戦うのがお前達の仕事だろう!」


「兵たちも勝ち目のない戦いに士気を上げるはずもありません」


「お前たちにいくら払っていると思っているんだ! 士気が上がらないだ!? そんなふざけた言い分が通ると思っているのか!」


 ダルマの怒号が部屋中に響き渡る。しかし、テントの瞳に宿る冷ややかな色は変わらなかった。


「こうなってしまった以上は、被害を最小限に抑える方法を考えるべきです」


「何が被害を最小限に抑えるだ!お前達はそれで良いかもしれん、しかし私はどうなる!?盗賊団と繋がり、貴族の子息を投獄した私はどうなる!処刑間違いなしでは無いか!出ていけ! 今すぐ私の部屋から出ていけぇっ!」


 感情を爆発させたダルマは、机の上に置かれていた重厚な灰皿を掴むと、テントに向かって力任せに投げつけた。








最後まで読んでいただきありがとうございました。


「ブックマーク」と「いいね」を頂ければ大層喜びます。


評価を頂ければさらに喜びます。


☆5なら踊ります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。