20話
「だったら、向こうの警察に協力を要請しろ! 殺人事件の容疑者が町に潜んでいると分かれば、捜査人員を出すはずだ!」
「打診はすでに済ませています」
「なんだ、そうだったのか………」
「しかしあっけなく断られました」
ダルマの表情が驚愕に歪んだ。
「な……なん、だと……!? しっかりと理由を説明したんだろうな?」
「署長は事前にモース警部と何やら話をしていたようです。そのせいで、我々の言い分を素直に聞き入れていません」
「一体どんな話をしたというのだ!?」
「分かりません。しかし我々にとって有利な内容でないことは確かです」
「ふざけるなッ! 私は領主だぞ! 私からの直々の要請よりも、たかだか一警部の言葉を優先するというのか!?」
「警察という組織には、我々には窺い知れぬ独自の繋がりや暗黙の了解がありますからな。それに比べ、我々には別段なにか関係性があるわけではありませんからな。いきなり協力しろと言われても「はいそうですか」とはならないのが普通でしょう」
ダルマは激高していたが、テントは冷静そのもので、ただ事実をそのまま述べているという態度だった。
「くそっ! ……ま、まさかテノールの警察が、ゴライアスを匿っているなどということはないだろうな!?」
「さすがですな、我々もその可能性は考えました。もしそうなっていれば、我々が奴を見つけ出すことは不可能です」
「なんということだ………くそっ!」
ダルマは重厚な机を殴りつけた。
「匿ってはいないにしても、警視庁に連絡が行っていることは間違いないでしょうな。その場合には、増援が考えられます。そうなれば敵側にとって非常に有利な状況になります。申し訳ありません、有利というのは言葉が適切ではありませんでした。我々の負けがほぼ確定します」
「……貴様、さっきから否定的なことしか言えないのかッ!? 少しはこの状況を打破するための方法を考えたらどうなんだ!!」
顔を真っ赤に沸騰させたダルマが精一杯の眼光で睨みつけたが、私兵長テントはどこ吹く風といった顔で、静かにあごを引いた。
「策ならすでに考えております。今日伺ったのは、その話をするためなのです」
「……何だと?」
「ゴライアスがリスクを冒してでも、自ら飛び込んで来ざるを得ない状況を作ればよいのです。そうすれば増援がやってくる前に、事件を解決できる可能性があります」
「なんだ!その方法とは何なのだ!?」
「“餌”を吊るして待つことです」
「餌、だと………?」
「我々はそれをすでに捉えています」
「はっ!」
提案の意味を察した瞬間、ダルマの顔は醜く歪んだ。
「なるほど………いい餌がいるではないか」
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