第40話 フラグを立てる男
……金貨300枚貸してくれたし、やっぱり言わないと駄目だよな……
お父様の書斎を後にし俺はアリシアに話し掛ける。
「アリシア……君はここにいろ」
「私も一緒に行きますよ」
首を横に振った俺は諭すようにアリシアに伝える。
「ダメだ。アリシア、カマキリ女は俺を狙ってる……俺が強くなる前にアリシアが人質にでもなったら本当に面倒くさいことになる……」
ちょっとムッとした表情をするアリシア
「面倒くさいって……」
しかちょっと考え込んだあと寂しそうな表情でこう言った。
「確かに……そうですね……私はただの足手纏いですよね……」
「ああ。そうだ。足手纏いだ。だから金貨300枚の証文を俺に渡してくれ。これは君を守る為でもあるんだ……」
さあ早く俺に金貨300枚を渡すんだ……
「……ウェブ様……そんなにも私のことをお考えに……分かりました」
さっきお父様が書いた金貨300枚の証文を受け取る。
「今から穴に行かれるのですか?」
「いや……メンテナンスだから今すぐには行かない。何処かに隠れてメンテナンスが終わったら直ぐに紙を引く」
「……はい」
俺は瞬間移動するために念じようとする。
目に涙を貯めたアリシアは俺に向かってこう言った
「死なないで、必ず生きて私を迎えに来て……」
「大丈夫だよ。アリシア、金貨300枚で限界を超えた俺はあんなカマキリなんぞに負けるはずがない。この戦いが終わったら迎えにくるから待ってろ」
「はい……私信じてます」
俺が瞬間移動をした先はサルベニ商会。当然もう夜なのでその門は硬く閉ざされている。
夜警の私兵が槍をもって立ち、俺の姿を見つけて怪訝そうな顔をする。
中に直接、瞬間移動もできるのだがそれだとただの泥棒になってしまうからな。敢えて門の前に瞬間移動。
その私兵に証文を見せて話しかける。
「じ、自分はアリステル家の使いの者なのですけど……ご主人様から言われて今すぐ金貨300枚を用立てろと……」
「た、確かにその証文に押された印はアリステル家の家紋……わかりました今すぐ当直の者にお伝えします!」
「ありがとうございます!」
すぐに金は必要はないが、金に換えておけばメンテンナス終了直後に穴に金を入れることができる。
当直の人が奥の商会の建物から出てくきて証文を確認する。
「従者のお方も大変ですね……貴族のわがままに付き合わされてこんな夜更けにまでお金を取りに来られるなんて……」
ここは変に勘ぐられても嫌だからな。適当に話を合わせておこう。
「ええ。本当に大変ですよね。ほんと貴族ってやつはわがままで……こんな夜更に金貨300枚持ってこいだなんて」
「ですよね……私もこの仕事、始めて長いですけど、本当に貴族ってやつは……」
そんな雑談をしながら商会の建物の中に入る。
昼に商会に来た時は人が沢山いるが夜の商会は人っこ一人おらず、新鮮さがある。
「ここでお待ち下さい」
係の人はそういうとランタンの灯りを頼りに奥に入っていく。
それを目で追っていくと大きな金庫の前に立つ。そして大金庫を開けて重そうな袋を取り出し、俺のもとにやってくる。
係の人がその袋から10枚づつで紙で束にされた金貨を俺の目の前で並べていく。
ゴクリと固唾を飲み込む。
「これで300枚です」
係の人がそう言った。
黄金色に輝く金貨300枚を目の当たりにすると実感が湧いてくる。強化紙3万枚を引けるという実感が……
300枚や3000枚などではないしかも強化された3万枚なのだ。俺は神にでもなれるのかもしれない。
神になった後でも紙を引くのかとアリシアに言われそうだが、多分引く。俺が紙を引いて強くなるように紙もまたなお進化して新しい能力を俺に授けてくれるのだから……
金貨300枚を袋に入れると直ぐに瞬間移動し穴の前で1日待機することにした。




