第39話 金貨300枚
重厚なこげ茶色の扉の前にアリシアと二人で立つ。この扉の向こうにアリシアのお父様がいらっしゃる。
「アリシア、やっぱり土下座したほうがいいと思うんだが……」
「しなくていいです!」
そう言うとコンコンとノックをし声を掛ける。
「お父様。アリシアです。お話しがあります」
「アリシア……か、どうぞ」
アリシアが扉を開くと沢山の書物に囲まれたお父様の姿がある。
「アリシアにウェブ君。話とはどう言うことだ。それにアリシアはもうこの家の人間じゃない。もう会わないと言っただろう。アリシアもその覚悟はできていると」
書斎の扉を開けるなり、アリシアの親父さんは冷たく言い放った。
「お父様! 金……」
と俺が言い始めるとそれに被せるようにアリシアが俺の言葉を掻き消すような声でお父様に話し掛ける。
「……お父様……申し訳ありません」
「300枚貸して……」
俺の声は聞こえなかったのか静かにアリシアの方を見るお父様。
俺はアリシアに小声で話し掛ける。
「アリシア土下座したら許してくれるんじゃない? 俺も一緒に謝ってあげるからさ……」
アリシアは俺のアドバイスを完全に無視して話しを続けている。
っちアリシアの奴、俺の言う事完全に無視かよ。お父様もそんなんじゃ許してくれんぞ!!
「お父様が仰ってる言葉、その意味分かります。お父様は私のことを思って辛い決断をして下さったことを……それを私の方から簡単に破るような真似をして本当に申し訳ありません……」
お父様はコクリと頷く。
「……うむ……我が思いを知ってなお、この場に現れる……アリシア、そなたは人の気持ちを踏みにじるような子ではない。余程の事情なのだろう……申してみろ」
うんうん土下座なんてする必要ないよね。話せば分かってくれるって。俺もそう思ってた。
「実はですね……」
アリシアはそこから事細かに説明をし、それを静かにお父様は聞いている。
「確かにそのようなものがいるとすれば、国の一大事……そう言うことであれば金貨の300枚など惜しくもないが……にわかには信じられん……金をいれると不思議な力が使える穴など……」
そう言って俺をチラッと見るお父様。その視線にぐっと拳を握って凛々しい顔をして答えて見せる。
「お父様。私の力を見せましょう」
分身!
3人の俺が俺の影から現れる。
それをみて驚きの表情をみせるお父様。
「みんな分かってるよな?」
俺が分身に声を掛けると3人は頷く。
4人で床に頭を擦りつけて一斉に「金貨300枚貸して下さい!」とお願いをする。
それをみて苦笑いをするお父様に頭を抱えるアリシア。
「た、確かに君は変わった力を使えるようだね……」
「「「「はい」」」」
「金貨300枚あれば、アリシアの言うカマキリの化け物にも勝てると……」
「「「「余裕です! 鼻ほじりながらでも勝てます」」」」
「分かった……分かったから一人になってくれ……」
パチンと指を鳴らすと3人は姿を消す。
「……金貨300枚を君に託そう……」
そう言うとすらすらと一筆書いて押印をする。
「これをサルベニ商会に持って行きなさい」
アリシアはその紙を受け取るとこう言った。
「ありがとうございます。お父様! 必ずお返しします!」
「これは国を守る為に与えたものだ。返さなくていい。個人的に使うものではないのだから」
「ですが……これほどの大金……少しずつでもお返しします」
「うむ……」
お父様は言い淀む。
返さなくていいって言ってんだからアリシアも余計なことすんなって! 返す分でまた紙が引けるだろうが!
ここはアリシアを諭すしかない!
ということで俺はアリシアに諭すように話し掛ける。
「アリシア、お父様のお気持ちを無碍にしてはいけないよ。差し上げるとおっしゃっておられるのだから……」
アリシアは俺がそう言うとさっと冷ややかな視線浴びせながら小声で返す。
「返すって言えばお父様ともまた会えるでしょ……会えなくて辛いのはお父様なんですから」
「そんなのどうでもいいって返す金で紙引けるだろ?」
俺が小声でアリシアにそう言った瞬間だった。
お父様は優しい表情でこう言った。
「分かったよ。アリシアやはりそなたは優しい子だ。少しずつでいいから返しておくれ」
「ありがとうございます。お父様!」
アリシアも笑顔で返事をした。




