第38話 俺はもっと強くなる。
何も考えずに瞬間移動をしたら穴のそばに立っていた。いつも穴のことを考えているから咄嗟に穴に瞬間移動したのだろう。
まだメンテンスになっていないから穴は空いたまま。
完敗……俺は穴を見つけて初めて負けた……あいつとはレベルの差がありすぎる……俺が勝てる相手じゃない……もう逃げ回るしかない……あいつの顔が見えたら瞬間移動して逃げよう……
アリシアは青い顔をしながら俺に話しかけてくる。
「ウェブ様……助けてくださってありがとうございます」
「……うん。正当な報酬の前借りの前借りするつもりだったし……」
「……」
どよんと重い空気が漂う。
気を取り直したのか、初めて負けて意気消沈している俺に気を使っているのか、アリシアは明るく話し掛けてくる。
「そういえば、ここはどこですか?」
「ここは……穴から紙が出てくる場所……この穴に金を入れると紙がでてくる……」
俺は穴を指差す。
「ほんとだ……地面に穴が空いてる……」
「ここに銅貨3枚を入れると紙がでてくる。その紙に書かれている項目で強くなれるというわけ」
強くなれるか……もう沢山、紙を引いた……もう俺はこれ以上強くなれない……アリシアと一緒に山にでも籠もって一緒に暮らそう……あいつが来たら瞬間移動で逃げればいいし……
「アリシア……俺と……」
俺が話しかけるとアリシアはそれにかぶせるように話しかけてくる。
「もう強くはなれないんですか? お金を入れても」
「うん……俺の能力は(特)ってやつになっててこれの上はもう……」
あった!! 限界突破!! 俺はまだ強くなれるんだった!! 明日のメンテナンス後にくる限界突破。これを引いて(特)を10枚集めれば!! 金? 金はアリシアに借りればいい!! そうだ俺は限界を突破して最強になるんだ!!
「そうなんですね……もうこれ以上強くなれないんですね……」
俺はアリシアの両肩を掴み、アリシアの瞳をまっすぐに見る。アリシアの頬は微かに赤くなっている。
「アリシア!」
「……はい……」
なにか覚悟を決めたような『はい』という返事をするアリシア、俺はそのまま続ける。
「一生のお願いがある……金貨300枚貸してくれ!!!」
俺がそう言うとアリシアは、は? というような表情をする。
「お願いだ!! 金貨300枚貸してくれ!!」
2回目を言うとふっ我に帰ったアリシアは呆れたというような表情へと変わる。
「300枚!! そんな大金もってませんよ!」
「アリステル家……アリステル家にしてみれば300枚なんてはした金だろ? 300枚あれば俺は最強だ! 神をも超える最強の人間になれるんだ!!」
「金貨300枚であいつに勝てるほど強くなるんですか?」
「明日……限界突破って能力が来る。金貨300枚あれば必ず引けて、あいつなんか目じゃないほど、お茶の子さいさいで勝てる。小指一本で勝てる」
アリシアは腕を組んで難しい顔をしている。
「……確かにあいつはウェブ様より強かったですが……私はアリステル家を放逐されたんです……おめおめと帰れません……」
「土下座だ! お父さんに土下座しよう! 俺もアリシアと一緒に土下座するから!! 許してもらおう!」
俺がそう言うとアリシアは難しい表情をしている。
「限界突破を引いて(特)10枚集めたら(極)になるんだ! 限界突破を重ねたらさらにその上になれる!! あいつなんて鼻くそ以下になるんだ! だから一緒に土下座しよう!!」
「……でも確かにこのままじゃあいつには勝てませんし……ウェブ様の命を狙ってました……ついでに私の命も……」
ん? 風向きが変わった?
「してくれるの? 土下座!!」
フーっとため息を突くアリシア。
「しませんよ。土下座なんて、ウェブ様と私の命が危ないと言えば、お父様も分かってくださるとおもいます。早速お父様に話してみましょう」
「な、なるほど……」
ということでアリステル家のアリシアの部屋に瞬間移動をする。
「ほんの少ししか離れてませんがどこか懐かしい感じがしますね……それじゃ私、お父様に話をしてみます」
「お、俺も一緒に行く」
ということでアリシアのお父様の書斎に向かった。




