第41話 本当の廃人
ウェブ様が金貨300枚を持って行って1週間が過ぎた。
ウェブ様からの連絡は無く私を迎えにくることもなかった。カマキリ女を見つけるのに時間がかかっているのだろうと思っていた矢先、アリステル家に一通の手紙が着いた。
『拝啓、アリシア・アリステル様。ウェブです。結果から言うと、金貨300枚をドブに捨てました。そして結論に至ったのです。あの穴は人を見ていると。そう必要なものには必要な紙を出さないようになっているのです。私は幾らでも金をつっこむから目当ての紙を出してはダメ、毟り取りだけ毟り取る。そもそも金貨300枚も入れて引けないとかありえません。そして私はあることに気がついたのです。あのカマキリも穴の差し金ではないかと。そう考えると腑に落ちます。私に限界突破を引かせようとする為にカマキリ女を差し向けたのだと……アリシア様、すいません。私は消えます。私はもうあの穴から卒業しました』
ウェブ様は私に迷惑を掛けないように……カマキリ女と差し違えるつもりなんだ……だからこんな手紙を……
その手紙を読んでいる途中の私の瞳から一筋の涙が流れた。
『追伸、金貨300枚はアリシア様からお返し下さい』
◇◆◇
アリシアに書いた手紙は届いているだろうか。俺は今、人里離れた場所にいる。
あの手紙に書いたように俺は紙を引くのを引退、卒業をした。
そう思ったら気分が楽になりハレバレとした気持ちになる。
もう金を集める必要がない。必死にお金の事ばかり考えていた自分が馬鹿らしく思えてくる。
なんでこんなことに気がつかなかったんだろう。俺の悪食さえあれば生きていける。もう俺には何も要らないし必要ない。
食い物があれば人は生きて行けるんだ。俺にもう紙は必要ない、金も必要ない。もう何も要らない。
一人でこのまま生きて行こう。
◇◆◇
あれから1年の月日が流れた。あの手紙を貰ってすぐ、穴のある場所に行ってみたがウェブ様の姿は当然無かった。
私は馬車に揺られふと外を眺める。
「ディアゴ止めて」
馬車はゆっくりと止まる。
街の郊外を走っていた馬車は1年振りにあの穴の場所に通りかかったのだ。
まだ1年しか経っていないのにあの数ヶ月余りの日々が懐かしく思え私は馬車を降りて、穴の側に向かう。
すると穴に向かって血走った目をしながらお金を入れる人物が一人。
その姿を見て私は瞳から大粒の涙が溢れてくる。
「……ウェブ様……」
そう声を掛けるとウェブ様は振り返る。そして彼はこう言った。
「アリシア! 金貨1枚貸してくれ! 金貨1枚あったら引けるんだ! 最強のスキルが!」
これ以上ダラダラ続けても同じことの繰り返しかなって感じになってきたので、ここで廃人版は終わりとさせて頂きます。
真人間版の方は続けていきますので応援よろしくお願いします。




